中堅・エンタープライズ向け請求書受領サービス「マネーフォワード クラウドインボイス」提供開始

株式会社マネーフォワードは、請求書の受領に特化した新サービス「マネーフォワード クラウドインボイス」の提供を開始する。電帳法に対応、インボイス制度にも対応予定で、中堅・エンタープライズ企業の業務効率化を目指す。
株式会社マネーフォワード:「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを掲げ、すべてのお金の課題解決を目指すFintech企業。お金の見える化サービス『マネーフォワード ME』やバックオフィスSaaS『マネーフォワード クラウド』などを提供。2012年設立、2017年東京証券取引所マザーズ市場に上場、2021年に第一部へ市場変更、2022年に市場区分の見直しに伴いプライム市場へ移行。
AI-OCRとオペレーター入力で、請求書受領業務から解放
株式会社マネーフォワードは、新サービス「マネーフォワード クラウドインボイス」を発表した。請求書の受領に特化したサービスであり、異なる形式の請求書であっても一括で受領できる。AI-OCRとオペレーター入力で請求書をデータ化できるほか、改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)に対応、インボイス制度へも対応予定だ。

一般に、請求書は取引先ごとに多様な方法で送られてくる。紙で送られてきた場合には開封・管理など様々な手間が発生するほか、PDFで送られてきた場合にもそのデータを自社システムに入力しなければならない。同サービスであれば、様々な形式で送付される請求書を一括で受領でき、AI-OCRとオペレーター入力によって従来のデータ入力作業が不要となる。これまで請求書をシステムに手入力していた企業にとっては大幅な作業負担軽減につながるだろう。
同サービスは電帳法に対応している。タイムスタンプが自動的に付与されるほか、解像度や階調の自動チェック機能も具備されている。「安心して、電子データとして請求書を一元管理していただける」と話す。
インボイス制度にも対応予定だ。国税庁とAPIで接続することで、取引先が適格請求事業者であることを自動で確認できるようにしたいと述べた。税率ごとに区分した消費税額等を自動登録できるなど、インボイス制度へのスムーズな対応を支援する様々な仕組みを備える。
中堅企業のインボイス受取を効率化したい
同社によれば日本では、請求書のデジタル化が遅れている。デジタルでなく紙の請求書を受領すると承認フローに時間がかかりやすく、作業ミスの可能性や管理コストも大きい。諸外国では請求データを電子データでやりとりするケースが多く、日本でも請求書のデジタル化を推し進めたい。
そこで重要となるのが、取引先との連携による請求書の送受信だ。同社では中小企業に対しては、債権請求管理業務・債務支払管理業務に加え、インボイス発行・インボイス受取も含めて4領域を網羅するサービスを提供してきた。
しかし中堅企業に対しては、インボイスの発行・受取をカバーするサービスを提供してこなかった。「マネーフォワード クラウドインボイス」は当該領域を埋めるものである。また大規模な基幹システムを導入・運用しているエンタープライズ企業においてもアドオンで導入できるとしている。周辺システムとの接続にさらなる強みを持たせられるよう、APIの公開も予定している。

「マネーフォワード クラウドインボイス」については、まずは受取機能をリリースする。発行機能については、今後開発予定だ。同社は記者からの質問に対して、インボイス制度導入までには実装を始める意向を表明した。
電帳法・インボイス制度へのスムーズな移行を支援
「マネーフォワード クラウドインボイス」開発の契機には電帳法・インボイス制度があると同社は話す。
従来は電子で受け取った領収書などを紙で保存することも認められていたところ、電帳法施行により、電子的に受け取った請求書は電子データのまま保存しなければならなくなった。各事業者は宥恕期間である2023年12月末までに対応を進める必要がある。
一方インボイス制度の導入は2023年10月からだ。導入後、仕入税額控除を受けるためには適格請求書(インボイス)を取得しなければならない。適格請求書には登録番号が正しく記載されている必要があり、受領者側には登録番号を確認する手間が発生することになる。
このように各事業者は、必ずしも長くない期間で法対応を進めなければならない。同サービスを利用することで、スムーズな法対応を進めてほしいと同社は考えている。
Peppolネットワークへの貢献で日本全体の生産性向上に寄与したい

同社は、Peppolネットワークを活用した請求データのやりとり実現を目指している。これによって、現在はバラバラの請求書の規格を統一させ、他社サービスとのスムーズな連携を企図している。
Peppolネットワークの鍵となるのがアクセスポイントプロバイダーであり、デジタルインボイスの送受信に重要な役割を果たす。アクセスポイントプロバイダーとなるにはデジタル庁の認定を受ける必要があるところ、同社は年内あるいは年明けを目処に認定を受けられるよう準備を進めている。これによって競合他社との連携も含めて、日本全体の生産性向上に貢献したいと同社は述べている。
最後に、SaaSサービサーとしての矜持で締めくくった。一般にオンプレミス型のサービスの場合、ベンダーがアクセスできるデータは限定的で、顧客に付加価値を十分に届けられないと同社は言う。しかしSaaSなら豊富なデータにアクセスできることから、顧客のためにデータ利活用を進められる。顧客により高い付加価値を提供するSaaS×Fintechの強みを活かしてビジネスを展開してきたいと述べた。