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企業の6割で賃上げ見込み、賃上げ率は平均4.16%と試算【企業の2024年度賃金動向意識調査】

2024.02.22

政府は、賃上げの計画を立てた企業を対象に、設備投資を支援する補助金を新設する方針を示すなど積極的に企業の賃上げを後押ししている。さらに岸田首相は、経済3団体の新年会で物価上昇を上回る所得増を目指して、企業に対し「力強い賃上げ」を実現するよう呼びかけるなど、賃金改善(※)の動向が大きく注目されている。そこで、帝国データバンク(以下:TDB)は、2024年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施。ここでは調査結果の概要を紹介する。なお本調査は、TDB景気動向調査2024年1月調査とともに行ったもの。
※賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)することを指し、定期昇給は賃金改善に含めない

調査結果詳細はこちら

調査概要

調査期間:2024年1月18日~1月31日
調査対象:全国2万7308社
有効回答企業数:1万1431社(回答率41.9%)
出典:景気動向オンライン
※賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し、今回で19回目

2024年度、過去最高となる59.7%の企業で賃金改善を見込む

2024年度、過去最高となる59.7%の企業で賃金改善を見込む

TDBによると、2024年度の賃金動向について、正社員の賃金改善が「ある」と見込む企業は2006年の調査開始以降最高となる59.7%に。一方「ない」と見込む企業は前回調査の17.3%から3.4ポイント低下した13.9%で、調査開始以降で最も低い水準となっている。

企業規模別にみると「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模すべてで、前回調査の2023年度見込みから賃金改善見込みの割合が上昇。

業界別では「製造(64.7%)」が最も高く「運輸・倉庫(63.7%)」や「建設(62.5%)」が上位に。TDBは、2024年4月から時間外労働の上限規制が始まることの影響があると考察した。

賃金改善の具体的な内容としては「ベースアップ」が前年比4.5ポイント増の53.6%で「賞与(一時金)」は同0.6ポイント増の27.7%となっている。「ベースアップ」は過去最高となった前年の49.1%を上回り、3年連続で調査開始以降の最高を更新するなど、初めて半数を上回った。

賃金改善の理由と改善しない理由

賃金改善の理由と改善しない理由

TDBは2024年度に賃金改善が「ある」とした企業に、その理由を尋ねている。その結果、最も多い回答となったのは「労働力の定着・確保」で75.3%となった。

また、TDBは今回初めて尋ねた「採用力の強化」(35.8%)が4番目にあげられている点に注目。賃金改善を通じて採用活動へのプラス効果を期待している様子がうかがえるとした。

一方、賃金改善が「ない」とした企業が賃金を改善しない理由としては「自社の業績低迷」が56.3%でトップに。次いで「物価動向」が17.8%となっているが、賃金改善を行う理由でも「物価動向」は半数超の回答となっている。

総人件費は平均4.32%増加見込み

総人件費は平均4.32%増加見込み

続いてTDBは、2024年度の自社の総人件費が2023年度と比較してどの程度変動すると見込むかを尋ねた。その結果「増加」を見込んでいる企業は、72.1%と前年比で2.5ポイント増加している。一方「減少」すると見込む企業は5.3%(前年比0.5ポイント減)に。これらの結果から、総人件費の増加率は前年度から平均4.32%増加すると見込まれる。そのうち従業員の給与は平均4.16%、賞与は平均4.04%それぞれ増加、さらに各種手当などを含む福利厚生費も平均4.06%増加すると試算されている。

また、大企業において「総人件費の増加率が3%以上」とした企業は前年比5.0ポイント増の52.6%に。中小企業でも同4.1ポイント増の54.9%となったことがわかった。

※「増加」(「減少」)は「20%以上増加(減少)」「10%以上20%未満増加(減少)」「5%以上10%未満増加(減少)」「3%以上5%未満増加(減少)」「1%以上3%未満増加(減少)」の合計

まとめ

本調査結果によれば、賃金改善見込みは過去最高の59.7%となり、特にベースアップにより賃上げを進めようとする企業が半数を超えていることから、賃金の基礎的な上昇傾向がみられる。TDBは「2023年度の実績では企業の74.4%が賃上げを実施しており、2024年度は最終的に同年度をさらに上回ることが期待される」とコメント。また、国内外において山積みとなっているさまざまなリスク要因への懸念を示しつつ、生産性をより高めて賃金の上昇を進めることが、日本経済の沈滞感を払拭する上で重要であると提言した。

2024年度の賃上げについては、東京商工リサーチによる調査結果も紹介している。こちらでは、賃上げ実施予定率は過去最高を示したものの、賃上げ率の最多は3%で「前年を上回る賃上げ」には届かないという調査結果が出ている。併せて参考にしていただきたい。

関連記事:2024年度 「賃上げ実施予定率」85.6%で過去最高も賃上げ率の最多は3%で「前年を上回る賃上げ」に届かず - オフィスのミカタ