オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

1-2月の「人手不足」関連倒産 2年連続で前年同期を上回り24件に

2024.03.25

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年1-2月の全国企業倒産(負債1000万円以上)から「人手不足」関連倒産を抽出し、分析。2023年度は過去最多の可能性が強まるとの見方を示した。
※後継者難は対象から除く

2024年(1-2月)「人手不足」関連倒産は前年同期比14.2%増に

2024年(1-2月)「人手不足」関連倒産は前年同期比14.2%増に

TSRによると、2024年1-2月の「人手不足」関連倒産は、前年同期比14.2%増の24件で、2年連続で前年同期を上回っている。2023年2月から13カ月連続で10件台を維持しており、2023年度は2月までに150件に達した。TSRは、このペースで推移すると、2023年度は2019年度の160件を抜いて、過去最多となる可能性が高いと推察している。

2024年1-2月の内訳は「求人難(13件/前年同期比30.0%増)」「従業員退職(8件/同33.3%増)」「人件費高騰(3件/同40.0%減)」。

TSRは 「輸出産業や大手企業の好業績が目立つが、コロナ禍から一転して人手不足が顕著になっている。業績回復が遅れ、賃上げの流れに乗れない企業、背伸びした賃上げで資金繰りが悪化した企業を中心に、『人手不足』関連倒産はしばらく増勢をたどるとみられる」とコメントした。

出典元:1-2月の「人手不足」関連倒産 24件 2023年度は過去最多の可能性が強まる(株式会社東京商工リサーチ)

【要因別】求人難が5割以上

【要因別】求人難が5割以上

<求人難> 13件(前年同期比30.0%増)
<従業員退職> 8件(前年同期比33.3%増)
<人件費高騰> 3件(同40.0%減)

TSRは、賃上げ機運が高まるなかで、大手企業と中小企業、輸出産業と内需産業での格差が拡大しているとみている。従業員の待遇改善が進まない企業は従業員の退職に歯止めがきかないことも危惧されるとして、人材確保のために賃上げは避けられず、業績回復が遅れた企業では人手不足がより深刻さを増す可能性が高いと指摘した。

【産業別】4産業で前年同期を上回る

【産業別】4産業で前年同期を上回る

産業別の分析では、10産業のうち「サービス業他」「建設業」「製造業」「農・林・漁・鉱業」で前年同期を上回った。

最多となったサービス業他は9件(前年同期比12.5%増、前年同期8件)で、3年連続で前年同期を上回り、構成比は37.5%(前年同期38.0%)だった。コロナ禍からの経済活動の本格的な再開、インバウンド需要の回復などにより、対面サービス業では人手不足が顕著となっているようだ。

次いで建設業は5件(前年同期比66.6%増)で3年連続、製造業は3件(同200.0%増)で2年連続の増加。農・林・漁・鉱業は1件で、4年ぶりに発生した。

一方、運輸業2件(前年同期比60.0%減)で、3年ぶりに前年同期を下回っている。また、情報通信業2件と、卸売業、小売業が各1件で、それぞれ前年同期と同件数。不動産が4年連続、金融・保険業が調査を開始して以降、1-2月では発生していない。

【形態別】破産が9割超

【形態別】破産が9割超

形態別での分析をみると、消滅型の「破産」が23件(前年同期比15.0%増)で、2年連続で前年同期を上回り、構成比は95.8%(前年同期95.2%)と9割超を占めている。再建型(会社更生法・民事再生法)は、4年連続で発生しなかった。

TSRは「業績低迷が続く企業では、日々の資金繰りにも苦慮しているケースが多く、賃上げや福利厚生面への人的投資もなかなか難しい。従業員の退職が進み、経営再建に取り組むことができず、債務を整理するために破産を選択する企業も多い」とコメントしている。

まとめ

TSRによると、全国企業倒産件数は、2022年4月から2024年2月まで23カ月連続で前年同月を上回っており、物価高で悪循環に嵌った中小・零細企業を中心に、当面、企業倒産は増勢をたどる可能性が高いと予測されている。人手不足関連の倒産についても、2023年は過去最高となる可能性が指摘されており、その背景には「賃上げ」の影響があるようだ。無理な賃上げは資金繰りを悪化させ、賃上げの波に乗れなければ人手不足が深刻化する。人手不足による倒産を防ぐためには、適正な賃上げを行えるかどうかがひとつの大きなポイントとなりそうだ。

出典元:2024年2月の全国企業倒産712件(株式会社東京商工リサーチ)