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医療機関の「休廃業・解散」が急増 この10年で2.3倍に

2024.04.22

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、医療機関(病院・診療所・歯科医院)経営事業者の休廃業・解散が急増していることを明らかにした。TDBによると、2023年度(2023年4月~2024年3月)は、過去最多を更新。倒産件数の12.9倍となる709件の休廃業・解散が確認されており、10年前と比較すると2.3倍に増えたという。

倒産件数の12.9倍が「休廃業・解散」 業態別「診療所」が突出

倒産件数の12.9倍が「休廃業・解散」 業態別「診療所」が突出

TDBによると、2023年度の医療機関の休廃業・解散件数は、前年度比37.1%増となる709件。これまで最多だった2019年度(561件)を148件上回り、過去最多を更新している。また、2023年度の休廃業・解散件数は、同年度に発生した倒産件数(55件)の12.9倍となった。なお、倒産件数も過去最多を記録している。

業態別の件数と構成比は下記の通り。

病院 19件(構成比2.7%)
診療所 580件(同81.8%)
歯科医院 110件(同15.5%)

「診療所」と「歯科医院」が過去最多を更新しており、10年前と比較すると「診療所」は2.4倍「歯科医院」は2.8倍に増加している。また、業態別での倒産件数との比較は下記の通りとなった。

病院 6.3倍
診療所 20.7倍
歯科医院 4.6倍

出典元:医療機関の 「休廃業・解散」 動向調査 (2023年度) (株式会社帝国データバンク)

「診療所」後継者難・経営者の高齢化が深刻

厚生労働省のデータ(※1)によると、2024年1月末時点の医療機関施設数は、「病院」が8115施設「診療所」が10万5304施設「歯科医院」が6万6886施設となっている。なかでも診療所は全国に、コンビニ数(2024年2月度:5万5657店 ※2)の2倍近くもあり、TDBは人口減少のなかで競争が熾烈だと指摘。

さらにTDBは、日本医師会の「医業承継実態調査(2020年1月)※3」の調査結果に注目。同調査によれば、診療所における後継者は「後継者候補がおり、承継について意思確認済みである(21.6%)」「現段階で後継者候補は存在しない(50.8%)」「後継者候補はいるが、意思確認していない(27.7%)」と、過半数の施設において後継者候補が存在しない状況だ。また、TDBは企業概要ファイル「COSMOS2( 147万社収録)」から2024年に40歳~80歳になる「診療所」経営者の数をカウントしたところ、ボリュームゾーンは65歳~77歳頃となっており、高齢化が顕著だと指摘した。

TDBはこうした実態を踏まえ、代表の高齢化と後継者不在を理由に事業継続を断念する診療所施設は、現在よりもさらに増える可能性が高いとの見解を示している。

※1 出典元:医療施設動態調査(令和6年1月末概数)(厚生労働省)
※2 出典元:コンビニエンスストア統計データ(一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会)
※3 出典元:日本医師会 医業承継実態調査:医療機関経営者向け調査(日本医師会総合政策研究機構)

まとめ

TDBは2023年の「後継者難倒産」が年間で初めて500件を超える564件となり、前年比18.5%であったことを報告している(※4)。医療業界においてもその傾向にあると言えるだろう。また、医療業界の人手不足割合は2024年1月時点で71%にも及んでいるという(※5)。

後継者難・人手不足が喫緊の課題となっている医療業界。人事部門担当者はこれまで以上に、優秀な人材の確保と離職防止に努める必要があるだろう。今後の医療業界における賃上げや働き方改革の動きに注目したい。

※4 出典元:全国企業倒産集計2023年報(株式会社帝国データバンク)
※5 出典元:人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)(株式会社帝国データバンク)