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円安で6割超の企業が「利益にマイナス影響」適正な為替レート水準は「1ドル=110〜120円台」が半数

2024.05.20

日米金利差などを背景に外国為替レートは、2021年以降円安傾向で推移。5月15日17時時点では1ドル=156円9銭~11銭であった。4月29日には34年ぶりに一時1ドル=160円台をつける場面も。企業からは円安による原材料・燃料価格などの輸入物価の上昇を危惧する声が聞かれる一方で、上場する製造業を中心に過去最高の当期純利益を更新したほか、インバウンド消費が活発になるなど、企業活動にさまざまな影響が及んでいる。そこで株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、円安が企業へ及ぼす影響に関するアンケートを実施。利益にマイナス影響があるとする企業が6割を超えたことを報告した。

調査概要

調査期間:2024年5月10日〜15日
有効回答数:1046社
調査主体:株式会社帝国データバンク
出典元:円安に関する企業の影響アンケート(2024年5月)(株式会社帝国データバンク)
※小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100とはならない

63.9%が「利益にマイナス」3割超が「売上高・利益ともにマイナス」

TDBによると、昨今の円安が自社の業績(売上高と経常利益)への影響について【売上高】は「プラス影響(16.0%)」「マイナス影響(35.0%)」「影響なし(49.0%)」と、3割超がマイナスであることを明かした。 また【利益】については「プラス影響(7.7%)」「マイナス影響(63.9%)」「影響なし(28.5%)」と、およそ3社に2社がこのところの円安によって、利益面でマイナスの影響を受けていることが分かった。

TDBはさらに【売上高】と【利益】それぞれの影響の組み合わせでみたところ【売上高】マイナス影響×【利益】マイナス影響が31.7%で最も高く、3 割超の企業が「売上高・利益ともにマイナスの影響」を受けている実態を明らかにした。【売上高】影響なし×【利益】マイナス影響は23.7%、為替は業績には影響しない【売上高】影響なし×【利益】影響なしは23.5%となっている。 企業からは、円安による原材料価格などの上昇が避けられない一方で、自社の商品・サービスへ上昇分を価格転嫁することは厳しい実情が多く聞かれたという。 円安による物価高が個人消費、企業の仕入れや設備投資に悪影響を与えているという声も。

適正な為替レート「120円台」が3割「110円台」が2割で続く

適正な為替レート「120円台」が3割「110円台」が2割で続く

続いてTDBは、自社にとって適正な為替レートの水準はどのくらいか尋ねたところ「120円以上~130円未満(28.9%)」が最も割合が高く、次いで「110円以上~120円未満(21.2%)」が続いたことを明らかにした。半数の企業(50.1%)が「1ドル=110円~120円台」を適正な水準と考えており、足元の1ドル=156円(5月15日17時時点)とは大幅なかい離がある。企業からは、現状の円安水準での企業活動は厳しいとの声が多数あげられ、安定した為替相場を望む声も寄せられたという。一方で一部の企業からは、円安による輸出面での好調に加えてインバウンド消費の活発化を歓迎する声もあるようだ。

まとめ

TDBは本アンケート結果について「円安による原材料などの価格上昇分を十分に転嫁できる機運を高め、継続的な賃上げによる消費拡大、設備投資の増加という好循環へつなげていく必要があるだろう」とコメントした。

輸出企業にとっては利益を押し上げるプラス要因になる円安だが、原材料やエネルギー価格の上昇による物価高は、商品・サービス価格への十分な転嫁が難しく、個人消費の減退、企業の設備投資意欲低迷を招く。

円安による倒産が2022年7月から22カ月連続で発生しているとのレポート(※)を発表している東京商工リサーチは、為替介入を想定しない歴史的な円安是正には時間を要する可能性が高いと予測しており、今後も長引く円安による原材料価格の上昇が危惧されている。商品・サービス価格への適正な転嫁が行えるかどうかが、今後の企業の命運を左右しそうだ。

※出典元:2024年4月の「円安」関連倒産 1件発生 発生は22カ月連続、円安の影響はさらに長引く可能性も(株式会社東京商工リサーチ)