「東日本大震災」関連倒産が4年ぶりの前年比減で初の10件台 TSR調査

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年の「東日本大震災」関連倒産について、集計・分析を実施。2024年は4年ぶりの前年比減となり、2011年の震災発生以来初めて10件台に落ち着いたことを報告した。
出典元:東日本大震災から14年 「震災」関連倒産2,064件 2024年は初めて20件を下回る、4年ぶりに前年比減(株式会社東京商工リサーチ)
「東日本大震災」関連倒産、2024年は16件発生

広い範囲で深刻な被害をもたらし、多くの人命を奪った東日本大震災の発生から14年。経済活動への影響も全国に及んだ。震災のあった2011年、関連倒産が544件発生。その後も2012年490件、2013年333件と高水準で推移し、2014年に175件と減少。2022年まで緩やかに減少傾向を示し、2023年は前年を6件上回り底打ち気配をみせていた。2024年は16件と初めて20件を下回り、初めての10件台に。しかしながら2025年は2月に4件発生しており、累計発生件数は2064件に。まだ収束には至っていないようだ。
TSRによると、被災企業においては、直接的な被害に加え、売上減少や風評被害などの間接的な影響が長引いたという。さらに震災からの立て直しで債務が膨らんだところに、2020年以降はコロナ禍、物価高や人件費高騰と、苦境に直面して行き詰まるケースが多いようだ。
2025年度は、政府が復興の総仕上げを目指す「第2期復興・創生期間」の最終年度。インフラなどハード面の計画は概ね完了したというが、原発災害の被災地域では、事故の収束や帰還・移住の促進など、中長期的な対応が残されているのが現状だ。また、被災地の岩手県大船渡市では2月末に山林火災が発生しており、TSRはさまざまな影響が復興の足かせにもなりかねないとみている。
累計2064件 都道府県別・産業別・形態別分析
TSRは都道府県別の分析結果を併せて報告。被災地域にあたる東北6県の合計は526件(25.4%)で、4分の1にとどまるという。関連倒産の発生は「東京(594件)」「宮城(224件)」「福島(99件)」「岩手(97件)」「北海道(85件)」「茨城(84件)」「神奈川(83件)」「千葉(77件)」「福岡(71件)」「栃木(64件)」と、島根を除いた46都道府県に広がっている。
また、産業別では「サービス業他(541件/26.2%)」が最多と報告された。このうち「宿泊業(126件)」と「飲食店(97件)」が4割(41.2%)を占めている。次いで上位となったのは「製造業(484件/同23.4%)」「卸売業(381件/18.4%)」「建設業(235件/同11.3%)」「小売業(196件/同9.4%)」などであった。
なお、形態別では「破産(1531件/74.0%)」が最も多く、再建型の民事再生法と会社更生法は計155件(7.5%)にとどまり、約8割が再建を断念したことが報告された。
まとめ
未曾有の被害をもたらした東日本大震災の経済活動への影響は、まだ完全な収束に至っていないことが明らかになった。被災地域や都心部のみならず、広く全国に影響をもたらしており、直接的な被害に加えて間接的な被害も多かったとみられている。
災害はいつどこで発生するかわからず、想像をはるかに上回る被害をもたらすことも少なくない。企業は災害に備える防災の取り組みはもちろんのこと、事業の継続・早期復旧を図るべく、平常時から備えておく必要がある。東日本大震災から14年を迎えるこの機に、改めて企業防災について考えてみてはいかがだろうか。
参考:事業継続 : 防災情報のページ(内閣府)