2024年の「従業員退職型」倒産が過去最多を更新し87件に TDB調査

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、人手不足による倒産のうち「従業員の退職を要因とした人手不足(従業員退職型)」の倒産発生状況について調査・分析を実施。報告されたレポートの概要をお伝えする。
調査概要
集計期間:2024年12月31日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
出典元:「従業員退職型」の倒産動向(2024年)(株式会社帝国データバンク)
従業員の「転退職」起因の倒産が2024年過去最多に

TDBによると、人手不足の深刻化が進むなか、従業員を自社につなぎとめることができずに経営破たんするケースが急増しているという。TDBの集計では2024年の人手不足倒産は342件発生したことが判明。そのうち、従業員や経営幹部などの退職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の人手不足倒産は87件と報告された。前年(67件)から20件と約3割の増加になり、多くの産業で人手不足感がピークに達した2019年(71件)を大幅に上回り、集計可能な2013年以降で最多となっている。
業種別の分析では、最も多いのが「サービス業(31件)」で全体の35.6%を占めたことが判明している。サービス業が全産業で最多となるのは、2019年以来5年ぶりだという。特に多いのはソフトウェア開発などIT産業のほか、人材派遣会社、美容室、老人福祉施設など。いずれも人材の定着率が他産業に比べて低い傾向にあり、人手不足感を抱える産業が中心となっている。
次いで「建設業(18件)」「製造業(12件)」「運輸・通信業(12件)」が続き、資格保持者や工場作業員、ドライバーの退職で事業がままならなくなったケースが相次いだという。
まとめ
TDBは2025年、満足な賃上げが実施できないことで従業員が離職し経営難に陥るケースが増える可能性が高いと指摘する。物価上昇が長期化し、賃上げを望む声は強まるものの、対応しきれない中小企業も少なくない。そうした中小企業を中心に、待遇を改善しないことによるリスクが高まるなか、いかに従業員の離職を止めるかが事業継続の大きなポイントとなっているようだ。
賃上げの重要性を理解していても、原資がなければどうすることもできない。価格転嫁の促進などで収益力の増強を図るほか、福利厚生制度の活用や働き方改革の実現など、賃上げ以外に従業員満足度を上げる取り組みとして何ができるか、改めて検討・実施していく必要があるだろう。