ハラスメント意識の高まりが職場にもたらす影響は? 日本ハラスメントカウンセラー協会調査
一般財団法人 日本ハラスメントカウンセラー協会(所在地:東京都千代田区)は、20代〜60代の会社員(正規雇用)を対象に「ハラスメント意識」に関する調査を実施。同協会では、法律改正により2022年4月以降は全ての企業に「ハラスメント相談窓口」の設置を義務付けられたこともあり「職場でのハラスメントに対する社員の意識も高まっている」としたうえで、職場環境やハラスメントに対する社員の意識がどのように変化したのかを探った。
調査概要
調査期間:2024年5月2日〜5月7日
調査方法:リンクアンドパートナーズが提供するPRIZMAによるインターネット調査
調査人数:1049人
年代内訳:20代 202人/30代 214人/40代 214人/50代 219人/60代 200人
役職別内訳:役員 12人/部長、次長級 128人/課長、課長補佐級 169人/係長級 119人/主査、主事級 106人/特になし 493人/その他 22人
企業規模内訳:従業員1000人以下 648人/1000人以上 401人
調査対象:調査回答時に20代〜60代の会社員(正規雇用)であると回答したモニター
調査元:一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会
モニター提供元:PRIZMAリサーチ
調査元:一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会
ハラスメント意識の高まりがもたらした働き方の変化
本調査ではまずはじめに、ハラスメント意識の高まりによって感じ、ている働き方の変化について質問。上の一覧表の通り、全体的にポジティブな変化を感じている傾向が読みとれるが、「働きにくくなった」「職場が暗くなった」といった回答も見られ、ネガティブな変化を感じている人も一定数いることが報告された。
ハラスメントを「受けた後」の対応と研修実施の実態
ハラスメントを受けた経験に関する質問では、半数以上がハラスメントを経験したと回答。具体的には「パワハラ(パワーハラスメント)(38.3%)」「セクハラ(セクシャルハラスメント)(10.9%)」「カスハラ(カスタマーハラスメント)(8.5%)」「マタハラ(マタニティハラスメント)(4.8%)」が挙げられている。
「パワハラやセクハラ、マタハラを受けた後(カスハラは除く)、どのような行動を取りましたか?(複数回答可)」との質問では、「特に何もしなかった(33.6%)」「上司に相談した(20.4%)」「同僚に相談した(18.6%)」との回答が寄せられている。なお「社内の相談窓口を利用した」は、専門機関として設置されているにもかかわらず12.3%にとどまった。
続いて、ハラスメント防止研修がどの程度実施されているのかを質問。その結果「実施されたことがない(33.5%)」との回答が最も多く、年に1回以上ハラスメント防止研修が実施されているとの回答は全体の約32.4%であったことが報告されている。
ハラスメント発生の頻度と相談窓口への評価
さらに本調査では、直近3年以内で身の周りに起きたハラスメント(パワハラやセクハラ、マタハラなど)の発生頻度について従業員規模別の集計結果を報告しており、31人~50人、51人~100人では「毎月・日常的に起きている」の割合が高いことが明らかに。5000人~10万人規模の大企業においても10%以上が「毎月・日常的に起きている」と回答したという。
10万人以上の企業では「毎月・日常的に起きている」は4.9%に減少するものの、同協会からは「企業規模が大きくなればなるほど、全体でのハラスメント発生に気づかれにくい可能性がある」との見解が示されている。
中小企業においても設置が義務付けられた「ハラスメント相談窓口」については、30.7%が「有効に機能している」と回答。「機能していない(9.3%)」「相談窓口が設置されていない(17.5%)」との回答も一定数あることから、相談窓口の役割が十分発揮されていない企業が少なくないことがわかる。
まとめ
本調査では、ハラスメント意識の高まりが職場に概ねポジティブな変化をもたらしていることとともに、ネガティブさを感じている層の存在や、役職や事業規模ごとの傾向も明らかとなった。そうした中で、研修の実施頻度や相談窓口への評価からは、ハラスメント対策が十分ではない可能性が示唆されている。
ハラスメント対策は事業主の義務であり、従業員を守るためにもしっかりとした措置を講じなければならない。この調査結果も参考に、改めて自社での対策に不足がないか見直す機会としていただきたい。
参考:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)(厚生労働省)