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人手不足倒産、2024年度は350件発生で過去最多 TDB調査

2025.04.07

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、従業員の離職や採用難等による人手不足を要因とする「人手不足倒産」の発生状況について調査・分析を行った。ここでは調査結果の概要をお伝えする。

調査概要

集計期間:2013年1月1日~2025年3月31日
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
出典元:人手不足倒産の動向調査(2024年度)(株式会社帝国データバンク)

2024年度「人手不足倒産」が350件発生

2024年度「人手不足倒産」が350件発生

TDBは従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする人手不足倒産(法的整理、負債1000万円以上)について集計。2024年度に350件発生したことを報告した。2013年度の集計開始以降で最多となっていた前年度の313件を、さらに上回っていることが明らかになった。

業種別の分析を見ると、最も多いのは全体の約3割を占めた「建設業/111件(前年度比+17件)」で、初めての100件超えとなっている。次いで「物流業/42件(同-4件)」が続くという。TDBは両業種について、ともに以前から深刻な人手不足の影響による倒産が多発していたことに加え、2024年4月に時間外労働の新たな上限規制が適用された影響で、引き続き高水準で人手不足倒産が発生し続けていると解説した。

人手不足解消のカギは賃上げか

人手不足解消のカギは賃上げか

人手不足の深刻化が進む中、賃上げに向けた動きが活発化している影響も大きいようだ。最低賃金の引き上げ、大企業の採用強化による初任給の上昇、待遇改善を求めた転職者の増加などを背景に、人材獲得競争がますます激化している。

賃上げの原資を捻出する上では価格転嫁が重要なポイントとなるが、TDBの調査では全業種平均の価格転嫁率は40.6%(100円のコストアップに対して40.6円を売値に転嫁できた計算)だったのに対して、建設業は39.6%にとどまり、物流業も32.6%と厳しい状況にあることが判明している。賃上げや待遇の改善に取り組む余力の少ない小規模企業を中心に「賃上げ難型」の人手不足倒産が、今後さらに高水準で推移するとTDBは予測した。

まとめ

人手不足倒産が2年連続で過去最多を更新しており、その深刻さはより増しているとみられる。労働人口の減少に加え、賃上げ機運の高まりもあり、特に中小企業には苦しい状況となっているようだ。

中でも2024年問題の影響を受けた「建設」「物流」の両業種が多くの割合を占めていることが判明。価格転嫁が思うように進んでいない両業種では、賃上げ難による人手不足に陥っている企業も少なくないと推察される。政府は最低賃金について、2020年代に全国加重平均1500円へ引き上げると表明しており、賃上げの動きは今後も続いていくだろう。

人材の獲得・定着に欠かせない要素となりつつある賃上げ。そして原資確保のために重要なカギとなる価格転嫁。双方をいかにバランス良く進めていけるかが、人手不足倒産を防ぐ大きなポイントとなりそうだ。