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元企業人社労士から見た企業を取り巻く今 ~企業を取り巻く世の中編~

2019.11.11

自己紹介

 初めまして。社会保険労務士の新川です。私は昨年、長年勤めてきたIT関連企業を退職し、社労士業界に足を踏み入れました。会社勤務時代(30数年)の前半は主として営業部門、事業企画部門に携わり、後半は経営企画や調達業務にも従事していましたが、社労士に多く関係する人事・総務関係の経験はありませんでした。
 そんな私が社労士を志したのは、「人生100年時代を迎え、自身のセカンドキャリアを見据えて……」と言えれば社労士らしいのかもしれませんが、それほどちゃんと計画したものではありませんでした。詳しい経緯は、次回(以降)で触れたいと思います。

会社を外から眺めると……

 さて、このコラム執筆にあたって、私なりに考えたことがあります。もちろん社労士であるという立場は当然なのですが、それよりも、嘗て一般企業に勤務していた「サラリーマン」経験のある社労士として、人事・総務という「窓」を通して社(一般企業)外から眺める企業の景色を綴っていければと考えています。
 具体的には、企業の中にいたときには気付かなかったこと、当たり前と思って見過ごしていたことでも、外から眺めたときに「?」とか「!」と感じる点が必ずあるもの。これらについて、お伝えできればと考えています。

「次から次へと」……

 営業職として、一時「人事給与システム」の販売に携わったことがありましたので、総務部門や人事部門の方々とお話しする機会もありましたが、やはり多くは情報システム部門の方々との会話でした。社労士としてお会いするのは、当然ではありますがやはり圧倒的に人事・総務部門の方が多くなっています。私も面談に際しては、それなりに業界・業務のことについて学んでおかねばなりませんから、書籍はもとより各種の展示会やセミナーに足を運び、知識の「仕入れ」を行うよう心掛けるようにしています。何と言ってもこの業界では「駆け出し」ですから、最低限の知識(常識?)として身につけるようには努めています。
 そこで気付かされるのは、世の中の移ろいの速さでしょうか。特に「流行り言葉(?)」が次から次へと現れ(あるものはあっという間に消えていきますが)ることです。冒頭ご紹介したとおり、会社勤務時代のスタートはIT業界(当時は、「コンピュータ業界」とか「情報通信業界」と呼ばれていたと思います。)に身を置いていたこともあって、次から次へと「流行り言葉」が編み出され(?)ていました。(他の業界の方々から見れば、自作自演じゃないか!とお叱りを受けそうですが)。
「MIS(経営情報システム)」、
「DSS(意思決定支援システム)」、
「SIS(戦略情報システム)」、
「BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)」
こうした言葉が、情報システム市場の需要を喚起してきたことは疑いないでしょう。
 私は(職を変えたにもかかわらず)、また同様とも言うべき状況をこの人事・総務関連の業界で目にしています。まるで既視感にとらわれているように、「MBO」、「1on1」、「OKR」、「タレントマネジメント」、「ピープルアナリティクス」、「エンゲージメント」、「リファーラル」……といった横文字(?)が並びます。ご承知のとおり、少子高齢化がもたらす当然の帰結としての労働人口の減少が顕著になり、企業における人手不足が、人材採用に限らず人事・総務分野の市場を拡大させていることは間違いないでしょう。

 しかし、自身の反省も込めて申し上げるなら、「踊らされてはいけない!」ということでしょうか。時代の流れに逆らってはいけませんが、軽佻浮薄にホイホイと乗ることもお勧めしません。
 やはり物事の本質を捉え、本当に必要なものを見極めることが大切だと思います。それぞれのツールは、言葉が異なる訳ですから、その意図する目的や導入以降の運用が違ってくることは当然です。しかしそのツールや手法の本質は、人事・総務部門にとって当たり前である「(事業運営を円滑に行うため、または伸長させるために)働く人の気持ちを理解すること」、「そのためのコミュニケーションをちゃんと取ること」に集約されるような気がしています。
 (だからと言って、どんなツールを採用しても同じと言う訳ではありません。しっかりとそれぞれのツールの内容とともにそのコンセプトを吟味し、自社に運用ができるものを選択することが必要でしょう。)

今年も多忙な年末が迫っています……

 人事・総務の部門の方々は、年末調整作業の準備にとりかからなければならない季節です。ご承知のとおり、個人事業主の決算の締めは(事業開始月に関係なく)12月。そろそろ今期事業の決算処理の準備を行うと同時に、来期(以降)の事業計画を立案する準備に入る時期でもあります。
 期初に立てた目標が達成できているか?できていないとすれば、その要因はどこにあったのか?等を「目標管理(MBO)」として整理する必要に迫られています。しかし私の場合は、MBOの結果を踏まえてフィードバックしてくれる上司はいません。当然、「1on1」もありません。「目標の未達成事項と、その要因・対策を追及する上司がいない」のだから、羨ましいと考える方もいるかもしれませんが、とんでもありません!
 私は名目上も実質的にも出資者たる配偶者(妻)に対し、実績報告とその要因分析、改善策とともに次期以降の計画を報告する義務があるのです!その時、配偶者は「伴侶」どころか「上司」ですらなく、全く以て冷徹な「投資家」の目線。フィードバックどころか、猛省とともに来期以降の具体的な改善案を示せ!と迫られ……。
 ああ、憂鬱な季節の到来でもあります。