コミュニティマネージャーによる 「テレワーク時代の『コミュニティ』概論」 ~企業のコミュニティの在り方と種類 それぞれの設立目的や効果は? ~
新型コロナウイルス禍の影響は、未だに私たちの生活に重い影を落としています。さまざまな工夫をしながら、以前の生活に近づけようと努力しながらも「以前と違う距離感」にもどかしさを感じることが多いのではないでしょうか。そんな「Afterコロナ」の世界では人と人がつながり、巻き込み、目標に向かっていく「コミュニティ」の重要性が見直されています。
今回は心の拠り所ともなる「コミュニティ」にはどんな種類があるのか、分析していこうと思います。
コミュニティの種類はいろいろ
前回は、コミュニティの定義とそれを創り育てる立場についてお話ししました。人の心の拠り所であったり、ただ単に集う集合体であったりという場合もありますが、引き続き本記事では1人では出来ない何かを実現するための集団であり、さまざまな副次的効果を生むコミュニティについてお話しします。
さて、働く人々に関するコミュニティにはどのような種類や特性があるのでしょうか。
企業においてよく話題に上がる3つのコミュニティに触れていきたいと思います。
社内コミュニティとはどのようなものか
読者の皆様が一番想像しやすいのは「社内コミュニティ」だと思います。例えば社内の フットサル部であったり、釣り部であったり、業務とは全く関係ないコミュニティも多いと思います。また、同期会や部署内で立ち上げた自主的な勉強会などもこの社内コミュニティに分類されます。これらの社内コミュニティの主な設立目的は2つ、
「社員同士が業務上有益な連携がとれるようになること」
「社員の定着率を上げること」
です。そのため、
「部署の垣根を超える仕事の連携がとれるようにしたい」
「横のつながりがないことでコミュニケーションが希薄化し、
離職兆候が掴めない課題を解消したい」
のような課題を抱えている企業様では有効な手段です。また当たり前ですが同じ職場で働いている人で構成されていることで、元々共通体験があります。同じ視点となり同じ方向を向き、共通の目標を掲げやすいという点から専門家がいなくても、比較的設立しやすいことが特徴です。
ユーザー会やクライアント同士のコミュニティ
仕事に関するコミュニティの中で、一定の難しさがあるのがユーザー会やクライアント同士などのコミュニティです。「同じ商品を使っている」という共通体験を基に、商品についての意見を言うためだったり、より効果的な使い方を話したりという用途で立ち上がることが多いかと思います。昨今、よく話題に上がる「ファンコミュニティ」「コミュニティマーケティング」はまさにこの取り組みです。
これらのクライアントコミュニティの主な設立目的は4つ、
「ユーザーの声を取得した商品サービスの改善」
「顧客のファン化実現による顧客満足度向上やリファラルの増加」
「新規顧客への訴求チャネル」
「ユーザー間でのナレッジ共有によるカスタマーサポートの効率化」
企業に与えるインパクトは非常に大きい一方で、ハンドリングが非常に難しいです。クライアント様でも温度感や抱えている課題もさまざま。それぞれが違う立場やバックグラウンドで参加しているため、「目的やゴールの設定と共有」や「関係者の思惑がそれぞれ異なることでの調整」が特に難しいところ。また内部においても、上記目的の遂行を考えると、「営業」「マーケティング」「商品開発」「カスタマーサクセス」など多くの部署に関係するため、社内での調整能力も重要となってきます。
新形態?業務委託同士のコミュニティ
昨今生まれてきているコミュニティが、社内・社外などの垣根を超えた関係コミュニティです。これは関係人口のように、所属まではしていないものの企業やその商品と多様に関わる人々で構成されたコミュニティ。設立目的は、社内コミュニティ・クライアントユーザーコミュニティの目的と大方同じですが、このコミュニティの最大の特徴は、ポジションや役割といった垣根を超えたメンバーで構成されていることで、コミュニティの力を最大限引き出せること。ここが持つ経験や多角的な視点によって、商品・サービスをとらえて改善・リリース、メンバーのバックグラウンドが異なるほど、多くのメンバーの流動性を高めるほど、互いに刺激を受け合い、そのコミュニティの付加価値も高まっていきます。
一方でハンドリングは、クライアントコミュニティ以上に難しいもの。「ハンドリング」をするという発想では厳しく、コミュニティの目的・コンセプトを定めて、その後の進め方は自主性を尊重する方が上手くいきます。
私がコミュニティの専門家としてジョインしている株式会社ニットでリリースしているサービス「HELP YOU」では、全国・全世界に住む個人が自身のスキルを活かし、チームを編成して企業のバックオフィス業務を担っています。そのため、この「HELP YOU」に所属しているメンバー400人はすべて株式会社ニットからの業務委託であり個人事業主・フリーランスです。フリーランス同士の交流、というと、同業者組合や異業種交流会のような形を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、現在運営されている23個のコミュニティは多種多様です。
例えば「マンガ・アニメ好きの会」「キャンプ好きの会」「写真部」等のように趣味嗜好を共有する人たちで作っているコミュニティや、「母の会」「海外在住者の集い」というように今自身が置かれている立場で交流している社内コミュニティのようなコミュニティもあります。これらのコミュニティは「共有し合う」ことを目的の中心に置いて運用されていますが、コミュニティを通して人柄やテキストコミュニケーション能力を知ることができ、業務が円滑に進んでいる様子が見受けられます。またコミュニティで知り合ったことをきっかけに、業務の依頼につながることもあるようです。
もちろん、「○○業務プロフェッショナルの会」というような業務に関するものもあります。このようなコミュニティの場合は、ノウハウ共有やスキル向上はもちろんですが、スキルレベルや熱量が同等程度の人が集まることで、新しい商品・サービスを一から設計・リリースする流れや、コミュニティ外で同じ課題・悩みを持つ方と座談会を企画するようなアクションも生まれてきています。
また、最近ではコミュニティ同士の垣根を超える動きも生まれています。例えば「そろそろまたオンライン雑談会や飲み会をしたい」コミュニティメンバーと「コロナ禍で家にいる時間が増えたので身体を動かしたい」というコミュニティメンバーに「オンラインで運動会をやってみたい」というメンバーが加わり「オンライン運動会」の実現に動いています。
これから必要とされる「働く場でのコミュニティ」
ここまで大別して3種のコミュニティの形をご紹介しました。コミュニティはその中にいる人たちの属性や考えで千差万別です。そしてコミュニティマネージャーは裏方。コミュニティ活動が発展・円滑に進んでいくよう、目的やコンセプトの設定や解像度があがるようちょっとした指向性を持たせ、コミュニティが活発化するように水を向けたり、企画が立ち上がった時にサポートしたりという動き方をします。ただし、一番理想的なコミュニティの形式はコミュニティマネージャーが存在しなくてもどんどん先に進んでいくようなコミュニティです。
ですので、次回はコミュニティマネージャーが常に気を配らなくとも活動が進んでいく「自走コミュニティ」をどのようにして構築していくか実例をあげながらご紹介したいと思います。