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コミュニティマネージャーによる 「テレワーク時代の『コミュニティ』概論」 ~リモートでもできる!ボトムアップ&自走コミュニティの秘訣~

2020.11.26

 「Afterコロナ」の世界で今後注目されていくであろう「オンラインコミュニティ」。自然発生し、そのままいい感じで動き続けてくれる…とはなかなかいかないもの。
 
 今回は具体的な事例を交えながら、ボトムアップでコミュニティが生まれる環境づくりと自走させていくための秘訣について、HELP YOUでの実例を踏まえながらお話しします。

ボトムアップでコミュニティが生まれる環境づくりの前に・・・

ボトムアップでコミュニティが生まれる環境づくりの前に・・・

 とはいえ、この「ボトムアップでコミュニティが生まれる環境」の前に、絶対に整備が必要な事があります。それが「組織が活性化している状態」であること。火のないところにいくら薪を足しても燃え上がる事はありません。組織が活性化し、そこにコミュニティの考え方を入れることで、はじめて実現します。

 では「組織が活性化している状態」とは、どういった状態か?
私は上記で提示している3つが実現していることを定義しています。

 そしてキーポイントは「心理的安全性の確保」。オフィスやテレワークに関係なく、やってみたいことを発言・実現しやすい、心理的安全性の保たれた環境をつくることです。その上で、どれだけ小さくてもいいのでメンバーが成功体験を経験し、自発的に組織内でのコミュニケーション・新しいことにチャレンジする流れをつくることで組織が活性化します。

 HELP YOUの場合、日本全国・世界33か国に点在する400名のフリーランスの個人事業主同士が協働しながらオンラインで仕事を進めている、という環境です。Chatwork(チャットツール)を利用して、コミュニケーションをとりますが、業務上でのやり取りがメイン。スキルさえ把握していれば仕事は回りますが、私が担当する当初は、いくつかの小規模の交流はあったものの、あくまで仕事で形成された関係性。仕事以外の話ができる風土感はまだまだ。会った事もない人同士が大半なので、たとえ興味のある人が出てきても、ご察しの通り、自ら積極的にチャットでコミュニケーションをとることは非常に躊躇うものでした。そのため課題は2つ。

 ① 人柄が伝わる・知れる機会が少ないこと
 ② コミュニケーションをとって良いんだという許容する空気感が
  伝わっていないこと

でした。
 この課題を解消しなければ、スタート地点に立てない状況でした。

コミュニケーションがとれる場の設計

コミュニケーションがとれる場の設計

 まずはじめに着手したのは、「コミュニケーションをとって良いんだ」と思っていただける場を生み出すことでした。具体的には、雑談することを前提としたチャットルームの作成、「同期会」を設けました。雑談するためのチャットメンバーを「同期」という共通項にした理由は、同期は同じ時期に共通の体験や課題意識をもつことが多いため、自然なつながりが生まれやすいと考えたからです。

 とはいえ、単にグループを設けただけでコミュニケーションが活発になりません。オフラインでの交流がなく、普段業務上での関わりもないメンバーが多いグループになると、会話のハードルは高いからです。そのため同期会のグループチャットでは、最初に自己紹介を書くというルールを設けました。ルール=話す理由を作ることで、最初の発信のハードルを下げます。そして、住んでいる所や最近ハマっていること、趣味・特技などを書いてもらうことで、人となりが見え、会話のきっかけが生まれるようにしました。

 実際にスタートしてみると、「韓ドラを観てる」など個々人のヒトとなりを知る事ができ、思ってもない共通点がわかったり、共通項から悩みを打ち明けたりなど、プライベートの会話が生まれました。そして面白いこと仕事以外の話をするためにつくったこのチャットルームで仕事の依頼をするケースも生まれました。仕事とプライベートのコミュニケーションが生まれ、ここでスタート地点に立てました。

どんなに小さくても良いので成功体験をつくる

どんなに小さくても良いので成功体験をつくる

 次に着手したことは、小さくてもいいので「組織内での成功体験」を生みだすこと。組織が活性化したのでその先のコミュニティの考え方、エッセンスを入れていく段階です。とはいえ「コミュニティ」なんて馴染みのないもの。その時、複数人のメンバーがなにか面白いことをしたいと話していると聞いたので、私も入って一緒に創っていく形にしました。それが「遊ぶように働く」をコンセプトにした「PLAY WORKER(プレイワーカー)」というグループ。のちにニットやHELP YOUのPRになるYouTube動画を製作するようになりました。
 PLAY WORKERは全国各地のメンバーで構成されていますが、動画制作で私がやったことは、動画の撮影など、リモートワークのメンバーが物理的にできないところだけ。要となる動画の企画や構成、編集・告知までの作業は、すべてPLAY WORKERのメンバーが主体となって進めてくれました。実際に動画ができ、他のメンバーに動画を共有したところ、様々なコメントやリアクションが寄せられ、メンバー間で会話が生まれるきっかけになりました。

 また業務に関するコミュニティもサポート。具体的には資料作成のスキルが高いメンバーで構成されたコミュニティ。「技術を高めたい」「情報交換がしたい」という希望をふまえ、資料作成に特化した新サービスを生み出す流れになりました。もちろん競合他社の価格調査からサービス設計、実際に発注が来た場合の体制作りまで行い、サービスリリースまでメンバーが主体で漕ぎつけました。そしてこの「業務に関係ないコミュニティ」「業務の延長線上にあるコミュニティ」の2種を積極的に全体に見せることで、コミュニティの可能性についてメンバーに周知できました。結果、昭和生まれの会等、年代別のコミュニティや、ママの会、海外在住者の会というような属性別のコミュニティ、キャンプ好きの会といった趣味の会など、どんどんメンバーがコミュニティをボトムアップで生まれました。

コミュニティ活動が社外へ大きなインパクト創出へ

コミュニティ活動が社外へ大きなインパクト創出へ

 コミュニティでの活動が、社外イベントにつながった例もあります。前述の海外在住者コミュニティでは、この新型コロナ禍の影響でなかなか旅行ができない、というフラストレーションと、せっかくいろいろな土地のメンバーがいるのだから自分の在住地以外の景色も見たいという2つの声が合わさったことで「バーチャル世界一周旅行」という企画が生まれました。最終的に2回の実施で社内外から約1700人が参加した大イベントで、世界各地に在住のメンバーが自身の住む国を現地から5-10分ほどで紹介する、というもの。リアルタイムだからこそ見られる景色がとても好評を得ました。
 
 またオンライン忘年会もその1つ。自主的に幹事が集まり、企画設計して当日実施します。昨年はコロナの前にも関わらず、100人がオンライン参加するオンライン忘年会にまで成長。これを外部向けに発信すると、「今年、オンライン忘年会の設計をしてくれないか?」と問い合わせが来て案件化しました。仕事にならないかもと思うことでも、外部に発信すれば仕事になるかもしれない。メンバーさんが評価されるだけではなく、社会に貢献できるんだという発見にもなりました。

自走するコミュニティのコツ

自走するコミュニティのコツ

①裏方に徹し、メンバー主体の成功体験を創る

 「自走する」とは、メンバーが主体で動かすことを指します。もちろんコミュニティマネージャーが動かすことでスムーズになることはありますが、コミュニティマネージャーが手をとめるとそのコミュニティは動かなくなります。重要なことは、コミュニティマネージャーは前に出ず、提案程度にとどめること。また主体的に動かすメンバーも1人ではなく、複数人で進めてもらう流れにすること。1人でやることには限界がありますし、複数人であれやこれやとワイワイしながら進めれて一体感もあり、楽しんでモノゴトが進んでいきます。そして「自分達もやればできるんだ!」の成功体験が次の動力源になり、他のメンバーも動き出す動機付けになります。

② スモールスタートで進めていく

 また成功体験をつくるからといって、決して大きな成功体験である必要はありません。重要なのは、「やればできるんだ!」と思ってもらうきっかけをつくること。自信につながればOKです。できる事から1mmでも進めれたら許容くらいの気持ちでスモールスタートで進めると、メンバー自身も次から次へとチャレンジしていく流れが生まれていきます。

③ メンバーの個性を活かしていく

 そしてこの時に意識することは「メンバーの個性を活かすこと」。コミュニティマネージャーはある意味で料理人。メンバーは食材のようなもので、活かすも殺すも料理人次第です。
 癖のある人もいれば、同じ系統であっても微妙に違います。良いところを組み合わせて相乗効果を図ったり、メンバーが活きる場所を作っていきましょう。そうすれば、メンバーからも「◯◯さんって■■得意だからお願いしたいね。」と互いにヒトとなりを理解して、相互尊重する流れも生まれます。


④ 良い動きは積極的に拡散していく

 最後に重要なことが「拡散」。特にメンバーが主体的に進めてアウトプットが出来たことは、組織内・組織外問わず積極的に発信することをおすすめします。そうすると、存在欲求を満たし、次も取り組みたいという流れが生まれたり、他のメンバーも「◯◯して良いんだ」「一緒に何かしたい」といった流れが生まれてより自走化します。また悪い情報に関しても「どうしたら良くなるだろう?」とポジティブに考える流れを形成して拡散すれば、組織全体の適応能力が上がります。

オンラインコミュニティが活発化したその先の展望

 今現在、「HELP YOU」では23個のコミュニティが活発に活動中。そのほかに、イベント幹事会等単発のコミュニティが生まれていく状態です。また設立したコミュニティの大半は、私が積極的にコミュニティをビルドし、デザインやマネジメントをした、というわけではありません。メンバーが自発的に言い出し、立ち上げ、運用しているものがほとんどです。私はあくまで、上記の進め方に沿って、メンバーの成功体験が積めるように寄り添っただけ。そして自走したコミュニティが設立された今、私が目指しているのは、

 「垣根をなくすこと」

コミュニティ同士・クライアントとHELP YOUメンバーはもちろんのこと、HELP YOUメンバーとそうでない方、あるいはHELP YOUを知らない外部の方までもが関われる、そんな垣根をなくした世界を目指しています。副業も解禁し、1人複数社の時代が到来していることや「コミュニティ」「拠り所」が話題に上がる昨今だからこそ、この「垣根をなくす」はおそらく次のキーワードになると考えています。
 次回は、この垣根をなくした先にどのような世界があるかについてお話します。