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これからの「採用」は どう変わるのか?⑱~ 社員の「自発性」を邪魔しない! テレワーク下の職場エンゲージメント

急激な少子高齢化、労働人口の減少、サービス経済化、デジタル社会への転換、AIの進化など、社会構造は大きく変化しています。働く個人の生き方や働き方に対する意識も大きな変化を遂げつつあり、そこに向き合う企業も採用戦略の新たな在り方が問われ始めています。
そんな中、多くの企業が課題に感じているコロナ禍の「社内コミュニケーション」について、実際の成功事例をもとに詳しく解説したいと思います。

■個人がイキイキ働ける職場の取り組みを表彰する「GOOD ACTIONアワード」

リクルートでは、一人ひとりがイキイキ働くための職場の取り組みに光を当てる「GOOD ACTIONプロジェクト」を推進しています。そしてこのほど、特に優れた取り組みを表彰する「GOOD ACTIONアワード2020」を発表しました。

今年で7回目を迎える「GOOD ACTIONアワード」ですが、今回はコロナ禍で急速にテレワークが進み、会社と個人の新たな関係性をどう構築するか?に焦点を当てた取り組みが多数集まりました。同じ悩みを抱える企業にとって参考になる取り組みばかりですが、今の働き方のトレンドを象徴する取り組みに贈られる「トレンド賞」を受賞した、株式会社マクアケの事例をご紹介したいと思います。

■社員が率先して、社内コミュニケーションの活性化に取り組む

マクアケは、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を運営する会社。2019年12月に上場を果たして以降、社員数が急増し「100人の壁」を越えました。さらに、事業拡大に伴い拠点が増えたことで、社内コミュニケーションが徐々に希薄になるという課題を感じはじめていました。

そして昨春以降、コロナの影響で在宅勤務を余儀なくされ、対面でのコミュニケーション機会が激減。同社では「ビジョンドリブン」な空気感を大事にしていますが、続々と入社してくる新入社員にそれを理解してもらう難しさも感じていました。

そんな状況下、社内の有志メンバーによりスタートしたのが、オンライン社内番組「幕ウラでダル絡み」(通称「ウラダル」)。有志メンバーが企画から演出、出演、撮影、配信すべてを手がけ、毎週木曜21時より配信されています。

番組のメインコンテンツは、スポットを当てたい社員をゲストに迎え、仕事内容やプライベートを深堀していくというもの。出演者同士はZoomでつなぎ、視聴者はウェビナーを使って自由に視聴するという形式で展開、多くの社員がこの番組を毎週楽しみにしています。

創業記念日の5月1日には、なんと「24時間放送」を実施。さまざまな部署の社員が大喜利をしたり、取締役が自慢の料理の腕を披露したり、女性マネージャーが恋バナをしたり、24時間中に皆で1つの曲を作り上げたり…などのバラエティ豊かなコンテンツ配信で、夜中や早朝も含め随時30%以上の視聴率を記録。コロナ禍で外出できず、帰省もできないでいるメンバーの、共通の楽しい思い出となりました。

そして現在までに45回以上の配信が行われ、のべ70人以上のメンバーが出演、約80%の最高視聴率を記録するほどに社内に定着。上場前に比べ組織の規模は1.5倍になり、新たな拠点も増えたものの、番組を通して一人ひとりのメンバーを深く知り、その後のコミュニケーションを円滑化させることができました。これまで難しかった地方配属の新人メンバーの紹介も、距離の垣根なく行えるようになったほか、番組内容が普段のコミュニケーションの話題になることも多く、リモートにもかかわらず社内で「内輪ネタ」を作れる仕組みが作れています。

「ウラダル」の総合プロデューサーとして統括している北原成憲さんは、この取り組みの肝として「社員が率先して始めることと、社員が“好きで続ける”ことの重要性」を挙げています。
今回の取り組みは経営課題から降りてきたものではなく、発案者である有志メンバーそれぞれに伸ばしたいスキルや叶えたい目標があり、それを実現できる場として「ウラダル」を発案したというのが特徴。ある人は、YouTubeなど動画で発信するスキルを伸ばしたいと考え、ある人はセルフブランディングに興味があり、またある人は、社内メンバーともっと仲良くなりたいと考えていました。それぞれの想いが「番組配信」という形になり、結果として経営課題にはまったという格好。イキイキ働ける職場は、経営や人事主導ではなく現場主導でも作れるという、学びの多い事例となりました。

■「社員の自発的な動きを邪魔しない」が社内活性化のカギに

この事例に関連するリクルートキャリアの調査データを一つ、ご紹介します。

全国の20~60代のテレワーク経験者にアンケートを実施したところ、「テレワーク前にはなかったストレス」を実感している人が59.6%に上り、そのうちの67.7%が、未だにそのストレスが解消できていない状態にあるとわかりました。

さらに、テレワークでストレスを感じた人を、仕事中に「雑談」がある回答群と「雑談」がない回答群に分けたところ、ストレスの解消具合に差異があることが判明。
前述通り、未だにストレスが解消できていない割合は67.7%でしたが、「雑談」がある人の場合はこの値が63.2%であるのに対し、「雑談」がない人は77.3%と高く、両者には14.1ptの差が生じています。

このアンケート結果、および先ほどのマクアケの事例から導き出されるのは、社内での雑談のようなカジュアルでオープン、フラットなコミュニケーションが、社員のストレス軽減やエンゲージメントの向上に効いている、ということ。
テレワーク下で、社内コミュニケーションに課題感を持っている企業が増えていますが、経営や人事ばかりが旗を振り、コミュニケーション活性化を謳うのではなく、現場のボトムアップでコミュニケーションを盛り上げることが重要と言えるでしょう。

なお、マクアケの北原さんは、「社員が率先して始めるためには、仕組みや制度も含めて邪魔をしないことが大事。社員が“好きで続ける”ためには社員自身が自己実現を追いかけられるよう認めてあげることが重要」と話しています。
「社員の自発的な動きを邪魔しない」のは、企業にとって冒険ですが、それによりマクアケのような成功事例が生まれています。社員の自発性をどう見守り、どう支援するか?これが、テレワーク下で取り組むべき、人事の新たな課題になりそうです。