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「働きづらさ」の正体と向き合い方~自分を知ること、仕組みで支えること~(後編)【1600社の組織開発支援から見えてきた「強い組織」の裏側 Vol.6】

2026.08.24
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組織で働いていれば、「思っていた仕事と違う」「頑張っているのに評価されない」「苦手な人がいる」「なんとなく居場所がない」。こうした苦しみに直面することは珍しくありません。

前編では、組織で働くときに感じやすい4つの苦しみに対して、個人ができる「視点の切り替え」を紹介しました。しかし、個人の努力だけに頼るのには限界があります。メンバーが苦しんでいるときにマネージャーや組織はどうすればその苦しみに気づき、取り除くことができるのでしょうか。後編では、対話・評価制度・文化づくりの観点から、具体的なアプローチを考えていきます。

【過去のコラムはこちら!第1回/第2回/第3回/第4回/第5回

【業務のミスマッチ】気づきを促す対話

前編では、業務を"点"ではなく"線"で捉え直すことの重要性を述べました。しかし、特にキャリアが浅い若手メンバーにとって、この視点の転換を自力で行うのは容易ではありません。「自分が何を実現したいのか」という問いに向き合った経験が少なく、そもそもどう考えればよいのかがわからないというケースも多いでしょう。

ここでマネージャーに求められるのは、「問い」を通じた対話です。答えを教えるのではなく、本人が自分のなかにある"線"に気づけるよう、丁寧に問いかけていきます。

たとえば、このような問いが有効です。
「今の仕事を選んだ理由は何だった?」
「将来、何につながると思ってこの仕事を選んだ?」
「将来つながる先には、他にどんな要素があると思う?」
「その要素は、今やっている仕事と関係がないだろうか?」


こうした問いを重ねることで、本人のなかに「今の仕事も、実現したい未来につながっている」という気づきが生まれます。マネージャーが答えを押しつけるのではなく、本人が自分で"線"を見つけるプロセスを支援することが大切です。

本人がやりたい仕事を任せられない場合は

たとえば「クリエイティブな仕事がしたい」と希望するメンバーに対して、すぐにその仕事を割り当てられないケースは珍しくありません。クリエイティブな仕事をするためには顧客の課題を深く理解する必要があり、そのためにまず1年間はセールスを経験してほしい、という判断は合理的です。しかし、この意図をメンバーに説明しなければ、本人にとっては「やりたい仕事をさせてもらえない」という苦しみでしかありません。

マネージャーには、なぜ今この仕事を任せているのかを丁寧に説明する責任があります。「あなたのやりたいことを理解したうえで、そこに到達するためのステップとして今の業務がある」と伝えることで、メンバーの納得感は大きく変わります。

さらに効果的なのは、社内のモデルケースを示すことです。入社当初は別の業務を担当していたが、その経験を経て最終的にやりたい仕事にたどり着いた先輩がいれば、自分も同様にこのステップを踏めばよいと前向きに捉えられるようになります。

【評価】成果ではなく成長を評価する仕組み

前編では、個人が自分の成長を言語化することの重要性を述べました。しかし、いくら本人が成長を言語化しても、それを受け止める仕組みが組織側になければ、苦しみは解消されません。

評価制度にはMBOやOKR、コンピテンシー評価などさまざまな手法がありますが、どのような制度であっても共通して起こりやすい課題があります。それは、制度上は成長を評価できる設計になっていても、成長が見過ごされてしまう可能性があるという問題です。特に日常の頑張りが周囲から見えにくい職種では、本人が黙っていると評価者の目には成長が届きません。

一つの解決策として、私が所属するシンクスマイルでは、部下が自身の成長を上司へ直接プレゼンする場を制度として設けています。「何ができるようになったか」「なぜ前期まではできなかったのにできるようになったのか」を自分の言葉で語ることで、見えにくい頑張りが可視化されます。

すべての企業がこの仕組みをそのまま導入できるわけではありませんが、ポイントとして伝えたいことは、「メンバーが自分の成長を伝える機会を意図的に設けること」です。 前編で述べた個人による成長の言語化と、組織が用意する成長を受け止める場の両輪がそろうことで、「頑張っているのに評価されない」という苦しみは解消に向かうでしょう。

【苦手な人との人間関係】マネージャーは橋渡しの役割

前編では、人間関係の苦しみに対して「相手を知る」「己を知る」という個人の視点を紹介しました。しかし、当事者同士の関係では限界があります。自分なりに相手を理解しようとしても、そもそも接点が少なければ情報が足りない。自己理解を深めても、相手との関係性の中で感情が動く以上、渦中にいる本人だけで客観視し続けるのは難しい。だからこそ、当事者の外にいるマネージャーの視点が必要になります。マネージャーには、メンバー同士の関係性に目を配り、対話の機会をつくる役割が求められます。

メンバーが苦手な相手について相談してきたとき、マネージャーにまず必要なのは聞くスキルと受け止めるマインドセットです。「それは考えすぎだよ」「もっと大人になりなさい」と片づけてしまっては、メンバーは二度と相談しなくなります。まずは本人の感情を否定せずに受け止めたうえで、相手を理解するための視点を一緒に探っていく姿勢が大切です。

加えて、マネージャーは双方の橋渡し役になることもできます。当事者同士では気づけない互いの特性や価値観を、マネージャーが第三者の視点で翻訳して伝えることで、そういう意図だったのかという相互理解が生まれます。1on1ミーティングのような場を定期的に設け、メンバーの人間関係の状況を把握しておくことが、問題の早期発見にもつながります。

【孤独感】心理的安全性と認め合う文化が居場所をつくる

前編では、孤独感に対して個人が「上手に付き合う」というスタンスを紹介しました。孤独を感じている事実と、寂しい・悲しいという感情を切り離して捉えることで、感情に振り回されにくくなるという話です。

しかし、これはあくまで個人の内面での対処法です。組織側にも、孤独感が生まれにくい環境をつくる責任があります。個人が感情と向き合う努力をしていても、チームの中で「何を言っても受け入れてもらえない」「自分の存在が認められていない」と感じる環境であれば、孤独感は和らぎません。

ここで重要になるのが、心理的安全性という考え方です。心理的安全性とは「このチームでは率直に発言しても否定されない、罰せられない」とメンバーが感じられる状態を指します。心理的安全性が確保されているチームでは、新しく加わったメンバーも「ここでは自分のスタイルで発言していいんだ」と感じやすくなり、孤独感が和らぎます。

逆に、心理的安全性が低いチームでは、既存メンバーに悪意がなくても、新しいメンバーが「ここでは自分のやり方は通用しないのではないか」と萎縮してしまいます。マネージャーが率先して異なる意見や考え方を歓迎する姿勢を見せることが、心理的安全性の土台をつくります。

心理的安全性のつくり方

心理的安全性は、自動的に生まれるものではありません。日々のコミュニケーションの積み重ねによって、少しずつ醸成されていくものです。

まず、マネージャー自身が弱さをオープンにすること。「自分にもわからない」「この判断は迷っている」と率直に伝えることで、メンバーは「完璧でなくてもいいんだ」と感じられるようになります。

次に、メンバーの発言へのリアクションを意識すること。意見が採用されなくても「その視点は気づかなかった」と一言添えるだけで、「発言してよかった」という体験が生まれます。この小さな体験の蓄積が心理的安全性の土台になります。

そして、失敗を責めるのではなく学びとして扱うこと。「なぜ失敗したか」ではなく「この経験から何を学べるか」に焦点を当てることで、挑戦への恐れが和らぎます。

認め合うコミュニケーションを文化にする

心理的安全性を支えるもうひとつの柱が、感謝や称賛といった「認め合う」コミュニケーションを日常に根づかせることです。

「ありがとう」「助かったよ」「あなたのおかげでうまくいった」といった言葉が自然に飛び交う職場では、メンバーは「自分はここにいていいんだ」と感じることができます。反対に、成果を出した一部の人だけが称賛され、それ以外のメンバーの貢献が見過ごされる環境では、孤立感は生まれやすくなります。

前回のコラムで紹介した「陰のヒーロー」「未来のヒーロー」に光を当てることも、まさにこの文化づくりの一環です。目に見える成果だけでなく、日常の小さな貢献や成長に対しても認め合える組織であることが、すべてのメンバーにとっての居場所をつくります。

まとめ

まとめ

前編・後編を通じて、組織で働く4つの苦しみへの向き合い方を考えてきました。

「個人としては、「自己理解」を深め、視点を一段上げること。マネージャーとしては、「問い」を通じた対話で気づきを促し、成長を受け止める仕組みをつくり、メンバー同士の橋渡し役になること。そして組織としては、感謝・称賛・相互理解が日常的に行われる文化を育てていくこと。

個人の捉え方を変える努力と、組織がそれを支える仕組みの両方がそろったとき、組織で働く苦しみは和らぎ、メンバーのエンゲージメントは自然と高まっていきます。苦しみを「仕方のないもの」として放置するのではなく、個人と組織の双方から向き合っていくことが、強い組織をつくる第一歩になるはずです。