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総務人事担当者必見 2020年に押さえておくべき6つの法改正

2019.09.05

 近年の深刻な人手不足を解消するため、政府では企業や従業員に関連する法改正を積極的に進めている。

 法改正の中には、新制度の設立や雇用形態の改善など、企業に対して義務化しているものもある。それを果たさなかった場合に、企業は罰則や不利益を被る可能性があるため、総務人事担当者は法改正の動向をいち早く把握し、事前に準備を進めることが重要だ。

 そこで今回は、総務人事担当者が2020年に向けて押さえておくべき、6つの法改正を紹介する。

①働き方改革関連法

働き方改革の推進を目的とした、労働関係法の改正
 「働き方改革」実現のため、2019年4月から関連法が改正された。
 働き方改革は、「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」「長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を柱に構成されている。

その中で、企業が対策すべき8つの項目を紹介する。

1. 時間外労働の上限規制(残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間)
2. 5日間の有給休暇の取得義務化(10日以上の有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日間の有給休暇取得を義務化)
3. 労働時間の状況の把握義務化(出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類を3年間保存)
4. 同一労働・同一賃金(正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止)
5. 高度プロフェッショナル制度(高度な専門知識を有し一定水準以上の年収を得る労働者について、労働基準法に定める労働時間規制の対象から除外)
6. 産業医の機能強化(健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、産業医による面接指導や健康相談等を確実に実施)
7. 勤務間インターバル制度の導入(勤務終了後、一定時間以上の「休息期間」を設け、労働者の生活時間や睡眠時間を確保)
8. フレックスタイム制の変更(フレックスタイム制の清算期間の上限を1か月から3か月に延長)


 働き方改革関連法は、2019年4月1日から一斉に開始している項目もあれば、企業規模によって開始時期が異なる項目もある。自社がどのタイミングで、何を変更しなくてはならないのかを事前に把握することが重要だ。

②パワハラ防止義務化

パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置
 2019年より、「労働施策総合推進法」に職場でのパワハラの防止を義務づける条文が追加された。企業に対してパワハラを防止するための研修導入などを促すとともに、従業員個人に対しても理解と注意を呼びかける内容となっており、大企業では2020年4月、中小企業では2022年4月から導入される見通しだ。
 罰則規定はないものの、義務を履行しない企業は厚生労働省が指導し、それにも従わない場合は企業名を公表できる仕組みだ。

参考:何気ない言動がハラスメントに。職場で起こりうるハラスメント5つ

③女性活躍推進法改正

女性活躍に関する情報公表の強化・拡大
 「女性活躍推進法」は、女性が活躍しやすい社会の実現を目指して作成された法律だ。就業を希望しながらも、出産や育児などさまざまな事情が重なり就業できない女性が多いことを背景に、2016年に施行された。

 2019年6月に一部改正が行われ、従来は従業員が301人以上の事業者を対象としていた「行動計画策定」や「女性の職業生活における活躍に関する情報公表」の義務が、101人以上の事業主へ拡大した。行動計画の策定には、自社の状況の把握や課題分析を行う必要があり、新たに対象となる企業は早めに準備をしていかなければならない。
 また、従業員301人以上の事業主に対しても情報公開内容が強化されているので、こちらも注意が必要だ。

④外国人労働者の受け入れ拡大

「高度な専門人材」に限定されていた就労目的の在留資格を、単純労働者にも認める
 「外国人労働者の受け入れ拡大」は、2019年4月に施行した。これまでは「単純労働」とされる分野での外国人就労は原則禁止だったが、技術水準を引き下げた新たな在留資格(特定技能1号)が創設されることで、農業や介護、建設などの14分野で「外国人労働者」を正社員として雇い入れることができるようになった。

 この制度を利用して外国人労働者を雇い入れる企業は、在留資格の確認および、労働条件を明示した雇用契約、氏名、在留資格などの届出をし、外国人労働者の適切な労務管理を実施することが求められる。

⑤電子申請の義務化

社会保障・税手続きのワンストップ化を目指す
 「電子申請の義務化」は、2020年4月に施行され、厚生年金保険、健康保険、労働保険、雇用保険などの一部手続きに関して電子申請が義務化される。

 対象となるのは現時点では大企業のみだが、今後間違いなく電子化が進むことを考えると、中小企業も今から対策をしておいて損はない。いち早く電子化に対応し活用するためにも、社会保険労務士や各専門家のサポートを受けるのも良いだろう。

⑥継続雇用年齢の引き上げ

高齢者の雇用機会の確保
 安倍首相は未来投資会議において、企業の継続雇用年数を現状の65歳から70歳へ引き上げるとの方針を発表した。現在日本には定年制度があり、多くの人は65歳を目処に会社を退職することが一般的となっている。しかし、近年、少子高齢化や労働力不足などから、高齢者の労働継続を推奨している。
 高齢者の貧困問題が解消できる、生きがいが生まれる、優秀な人材を長く会社に置いておけるなどのメリットがある反面、社員全体の高齢化が進む、健康面での不安、新しい仕事を覚えることが困難などの問題もある。
このような問題を解決する方法を模索しながら、企業は、高齢者雇用を推進していく必要がありそうだ。

まとめ

 今後ますます変化していく社会の中で、企業にも変化を求められている。総務人事担当者が率先して、法改正や政府の動きにアンテナを張り、事前の準備を進めることが重要だ。

法改正とあわせて自社の制度や雇用条件を見直すことで、採用力強化や離職防止、生産性向上につなげよう。