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コングロマリットの意味は?特徴やメリット・デメリットと今後の展望を解説

2019.10.04

コングロマリットとは「巨大な複合企業」のことですが、組織の特徴や経営方針はどのようなものなのでしょうか。コングロマリット企業は規模が大きいため、経営資源では有利になります。しかし、大きな組織ならではの問題点もあるでしょう。そこで、コングロマリットの意味やコングロマリット型経営でのメリット・デメリット、今後の展望をご説明します。

コングロマリットの意味・特徴

企業で経理や総務・人事などの管理部門をしている場合、コングロマリットの意味や特徴を理解することが大切です。これから、意味や特徴をご説明します。

コングロマリット型企業の特徴

さまざまな事業を展開する場合、国内外へ多角的に事業進出する「水平的多角化」、1つの事業領域を掘り下げて展開する「垂直的多角化」があります。コングロマリット型企業では、どちらのケースも行っている場合が多いです。例えば、「キリンホールディングス」の場合、相乗効果が期待できる食品と飲料品など、近い事業を中心に行っています。一方、「JT」は医薬品とタバコなど、関連がなさそうな事業を一緒に行っているのです。コングロマリット企業は、複数のグループを統括するために、「ホールディングス」として統括会社にしています。

コングロマリット型経営は、事業をゼロの状態で立ち上げるよりもスピーディーで、効率良く事業を進められます。合併・買収をするM&Aや資本提携などを行い、拡大戦略を練っていることが特徴です。拡大戦略を実行するために、ヒトやモノ・カネ・情報などの豊富な資源があります。

コングロマリット型企業経営のメリット

コングロマリット企業やコングロマリット型経営は、多くの事業を抱えることで、「規模の経済性」を発揮できることがメリットです。規模の経済性とは「利益率を上げられる見込み効果」のことで、生産量を増やして、生産単位あたりの労働コストや原材料コストを減少させます。これは、コングロマリット企業がシェア拡大をする際、期待できる効果の一つです。規模の経済性を狙い、コングロマリット企業にするケースが多くあります。

複数の事業を抱えるコングロマリット企業の場合、事業の組み合わせによっては、シナジー効果を発揮できます。シナジー効果とは相乗効果ともいわれ、お互いの利益を高められることがメリットです。コングロマリット企業では、サービスや取扱い商品が異なる業種になるので、それぞれのノウハウや新技術の知識などを、グループ企業内で共有できます。顧客の回遊もあるため、事業間でシナジー効果が生まれて企業価値も向上するのです。また、M&Aでは設備や優秀な人材も獲得できるため、経営資源を強化できます。さらに、テクノロジーが発展したことで事業間のシナジー効果が発揮しやすくなりました。よって、ロボットやIT・IoTに関する事業を獲得するコングロマリット企業も増えています。

経営のリスクを分散できるのも、コングロマリット企業やコングロマリット型経営のメリットです。特定の事業に頼るよりも、複数の事業を展開していった方がリスクは分散できます。例えば、消費者の価値観が多様化し、プロダクトライフサイクルが短期化された場合、多くの消費を見込んだ大量生産はできません。よって、大量消費社会を想定したビジネスモデルが通用しない場合もあるのです。万が一、大量生産で失敗してしまうと、単体事業だけでは倒産のリスクがあります。コングロマリット企業やコングロマリット型経営の場合、ある事業で失敗しても、他の事業が収益を出していれば、リカバリーできるでしょう。経営悪化による倒産を防ぐためにも、複数の事業を展開しているのです。

継続的に経営している場合、途中で外部環境の変化があります。例えば、顧客ニーズの移り変わりやIT化などです。このように外部環境が変化していっても、社内での経営リソースが多いコングロマリット企業は素早く対応できます。また、対応可能な幅が広いのもメリットです。経営環境が変わった時には、迅速にM&Aや事業再編を実施して、財政の悪化を防いでいます。

コングロマリット型企業経営のデメリット

企業の規模が大きすぎるコングロマリット企業では、事業の収益やリスクなどを精査しにくいことがデメリットです。本来よりも企業価値が低くなってしまう「コングロマリット・ディスカウント」になる場合もあります。コングロマリット・ディスカウントとは、想定したシナジー効果が十分に発揮できず、お互いが顧客や収益を取りあうことです。例えば、新しく取得した事業の独立性が高いと、事業間でのシナジー効果が生まれなくなります。事業同士で収益を取りあうので、投資家からも評価されなくなるのです。

コングロマリット企業は多くの事業を抱えていますが、同じ事業でも複数の地域や国をまたいでいる場合があります。その際、経営のトップが全体を管理できず、経営戦略も立てられない場合は注意が必要です。経営の管理部門に所属する人が全体像を把握しなくてはなりませんが、コングロマリット企業は事業数や支店数が多くて、全体を管理しにくくなります。そして、最適な戦略も導きにくくなると、デメリットになってしまうのです。大規模組織になった場合は、従業員数や進出エリアも多いため、不正防止の管理や企業統治もしにくくなります。複雑な組織体制になっている時には、企業トップのメッセージや方針を浸透させるのも困難です。

社内で優秀な技術やアイデア・知見が合った場合、社内コミュニケーションをしっかりと行わないと、埋もれてしまう可能性があります。特にコングロマリット企業は従業員数や部署数などが多く、企業内や企業間コミュニケーションの機能不全を起こしやすいのがデメリットです。専門外事業を行う会社ともコミュニケーションを取らないと、シナジー効果も生まれにくくなります。

コングロマリット型経営の展望

コングロマリット型経営は、規模の大小はあるにしても、今後の日本で有効な企業戦略になる可能性があります。90年代のバブルが崩壊した後、低成長な時代が続き、長期に渡って大幅な人口縮小も見込まれています。また、IT技術が発展することで、AIやIoTなどの破壊的イノベーションも起こるでしょう。よって、既存の経営戦略だけでは通用しなくなるのです。その場合、コングロマリット企業は、積極的に新しい市場を開拓できます。多角化な考えがあれば、リスクヘッジだけでなく、チャンスの拡大にもなるのです。コングロマリット型経営は事業内容を多角化しているため、時代に沿った手法や技術を取り込み、経営が持続できる確率が高まります。

コングロマリット型企業の特徴を理解して自社経営にも役立てよう

コングロマリットは「巨大な複合企業」を意味し、異なる業種の事業を抱えています。規模の経済性やシナジー効果を発揮でき、リスク分散もできることがメリットです。ただし、全てを管理しにくい部分があります。コングロマリット型経営のメリットやリスクは、大企業だけでなく、どの企業でも共通するものです。自社の事業を進める時には、コングロマリット型経営を理解していると役に立つので、これを参考にしてみてください。