時代はデジタルへ!電子契約の仕組みからメリットまで徹底解説
IT化が進んでいる日本では様々なものが電子化されているが、ビジネスシーンにおいてもその影響は計り知れない。商談のゴールとなる契約書類についても、デジタル化が進みネット上での電子契約が可能となっている事はご存知だろうか。
ビジネスの世界は日進月歩、新しいシステムやツールには常にアンテナを張っておく事が重要だ。そこで今回は急速に広まりつつある電子契約の仕組みから、そのメリットまでを網羅して解説していく。
電子契約とは
電子契約とは、紙の書類の代わりに電子ファイルを、取引する当事者同士でインターネットを介してやり取りし、電子署名を行う事で契約を締結する方法だ。契約書の電子データは一般的に企業のサーバーやネット上のクラウドストレージに保管される。従来、日本の商取引においては「紙と印鑑」を用いた契約方式が根付いていたが、技術の目覚しい進歩に追従する形でビジネスもIT化が進み電子契約はそのシェアを拡大しているのだ。
JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が2018年に実施した調査によれば、調査対象となった企業のうち4割超が電子契約サービスを「導入している」と答えている。「導入を検討している」と答えた2割超を合わせると、全体の約6割もの企業が電子契約について導入・検討などの形で関心を示しているのだ。
さらに矢野経済研究所が2018年8月末に行った調査では、電子契約の市場規模は売上高をベースにすると約40億円前後であると推計されている。そしてその市場規模は、今なお成長し続けているのだ。
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電子契約導入のメリット
これほどの規模で電子契約の導入が進んでいる背景には、当然ながらそれ相応のメリットが存在している。電子契約のメリットは大きく3つに分ける事が可能だ。ここではそれぞれのメリットについて詳しく見てみよう。
コスト削減
電子契約の導入には契約時にかかるコストを削減出来るというメリットがある。例えば電子契約では紙を用いないので印刷代がかからない。契約一件ずつのコストはそれほどでもないが、契約件数の多い企業にとっては印刷コストの削減もありがたいメリットと言えるだろう。
さらに従来の書面契約では契約書に印紙税が課税される事になるが、電子契約であればその心配もない。さらに書面を取引先へ送るための郵便代や、契約書を保管しておく場所・人を確保するための保管費や人件費も電子契約によって削減可能だ。
業務効率化
従来の書面契約では原本の印刷・自社での押印・相手への郵送・取引相手が押印後原本を返送するなど多くの時間と労力が必要だ。加えて、契約締結後にも契約書類の保管・保管場所の整理整頓・書類を閲覧する際に探す作業など多くの手間隙がかかってしまう。電子契約ではネット上ですべての取引が完結するため、こうした従来のプロセスを大幅にカッ出来るのだ。さらに、電子契約で用いたデータは容易に検索が可能であるため、契約内容の確認が必要になった際の業務の効率も大幅に向上するだろう。
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コンプライアンス強化
電子契約は企業のコンプライアンス強化にも一役買ってくれる。紙面契約の場合、誰かが物理的に書類を改ざん・偽造する事が比較的容易であるという問題点がある。しかも改ざん・偽造が行われた場合にそれを証明する手段が乏しいのが現実だ。
一方電子契約の場合は保管されているデータに何者かがアクセスすればそのログが残るようになっている。改ざんや偽造の特定が容易であるだけでなく、セキュリティシステムを強化する事によってこれらの不正行為を未然に防ぐ事も可能なのだ。
また、電子契約ではモノとして契約書が存在していないため、物理的に書類を紛失するといった心配がない。書類の管理体制は企業コンプライアンスにおいて重要なポイントのひとつであるため、電子契約の導入によって強化出来るのは大きなメリットだと言える。
電子契約のための法律
電子契約を導入するにあたっては「電子署名法」「電子帳簿保存法」という2つの法律について理解を深めておく必要がある。この2つは電子契約を実現するために必要となる法律なのだ。
ここからはこの2つの法律について解説していく。
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電子署名法
電子署名法は2001年4月1日に施行された法律だ。時代の流れに即して電子署名の法的効力を高める事を目的とした法律であり、電子署名法第3条では「電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」としている。これによって電子データ上における書名が紙面の押印・サインと同等に扱われるように基盤が整えられたのだ。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は1998年7月に施行されており、この法律では主に国税関連の帳簿を磁気テープ・光ディスクなどに記録する方法を定めている。従来、企業・個人事業者が紙で管理する会計記録は物理的に紙のまま7年間保存する事が義務付けられていた。しかし電子帳簿保存法が施行された事によって、真実性の確保・検索性の確保といった一定保存要件を満たせば帳簿書類を電子データとして保存する事が認められるようになったのだ。
効力を持たせるための対策
電子契約で交わす契約書では、法律的な効力を持たせるために「電子署名」と「タイムスタンプ」を押さえておく必要がある。
ここではそれぞれの効力や必要性を見ていこう。
電子署名
電子署名とは「電磁的記録に付与する電子的な徴証」と定義されており、先に述べた電子書名法第3条によって紙面上における押印・署名と同等の法律的効力を持つものとされている。電子署名が電子契約において果たす役割は「その電子文書が署名者本人により作成された事を示す(本人証明)」と、「署名された時点から電子文書が改ざんされていない事を示す(非改ざん証明)」の2点である。
ただし、電子署名は紙面への押印・直筆サインよりも簡単に偽装出来てしまうという問題点が存在する。この欠点を補うために、指定認証局では「電子証明書」と呼ばれるものを発行している。電子証明書は「その電子署名は実在する人物が署名した正式なものである」事を示すためのものであり、電子署名にはこれを添付するのが通例なのだ。
タイムスタンプ
電子署名と併せて用いられるのがタイムスタンプである。電子署名では署名が行われた時刻が記録される事になるが、これはパソコン端末の設定に依存しているため容易に改ざんが可能だ。そのため、電子署名を施すだけでは、いつその契約書が作成されたのか、いつ契約が成立したのかという正確な日時が証明出来ないという問題が発生する。そこで署名された時刻の正確性を証明するために用いられるのがタイムスタンプなのだ。
タイムスタンプは「タイムスタンプが入力された時刻にその文書が存在している事を示す(存在証明)」と「タイムスタンプが押された時刻以降、その文書が改ざんされていない事を示す(非改ざん証明)」という2つの役割を果たしている。タイムスタンプも電子署名同様に、認定事業者が付与するものである点も覚えておこう。
電子契約の注意点
電子契約はメリットが期待出来る一方で、運用には注意が必要になる点も存在している。最後に、電子契約の注意点を把握して正しく運用出来るように準備を整えてもらいたい。
書面でなければいけない契約がある
有用性の認知度が高まり導入が進んでいる電子契約であるが、実はすべての取引において利用出来るという訳ではないのだ。例えば「定期借地契約(借地借家法22条)」「定期建物賃貸借契約(借地借家法38条1項)」「投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律5条)」などでは、消費者保護などの目的から紙面での契約書交付が義務付けられているので覚えておきたい。
この他にも「訪問販売」「電話勧誘販売」「連鎖販売」「特定継続的役務提供」、さらに「業務提供誘引販売取引においての書面交付義務(特定商品取引法4条等)」といった場面でも、紙面としての契約書が必要となる。
契約相手の理解が必要な場合がある
契約という行為は双方の合意があって初めて成立するものであり、それは契約内容のみならず契約方法についても同様である。
つまり、取引相手が電子契約での取引を拒否した場合には相手に合わせて紙面での契約書を発行する必要があるのだ。
また、電子契約を実現するためには自社だけが電子契約サービスを利用すれば良いという訳ではない。利用する認定事業者や電子契約サービス会社のルールに則って、取引相手が電子契約未導入の場合は電子契約サービスへの加入を依頼する必要がある。自社で利用している電子契約サービスによっては、取引相手も同じサービスに加入する必要がある点にも注意しておきたい。
電子契約を活用しよう
電子契約の仕組みとメリットは理解出来ただろうか。電子契約は従来の紙面による契約方法に比べて効率的な取引が可能となるため、多くの企業で導入が進められている。今後も社会全体でのデジタル化は進んでいくと予想され、ビジネスシーンでも効率的かつ安全に取引が行える電子契約の利用が増えていくだろう。他社やビジネスシーンの流れに遅れをとらないよう、電子契約の導入を検討してもらいたい。
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