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今月の人事・労務トレンドVol.2 2020年6月に施行される「パワハラ防止法」 人事労務が行うべき対策とは<前編>

2020.04.16

 パワハラ相談件数の増加や従業員の過労死などが大きな問題となっている中、政府は2020年6月から大企業を対象に「パワハラ防止法」の施行を決定した。企業においても法施行に向けた対応が必要になるが、具体的にどのような準備をしたら良いのか悩む人事・労務担当者もいるのではないだろうか。

 今回は前編・後編に分け、「パワハラ防止法」について解説する。まず前編では、職場におけるパワハラの定義やパワハラが起きたことによる影響、パワハラ防止法施行の背景について見ていく。

目次

●職場におけるパワハラとは
●パワハラ防止法施行の背景
●まとめ

●職場におけるパワハラとは

 職場で発生するパワーハラスメント(以下、パワハラ)とは、具体的にどのような行為が該当するのだろうか。ここではパワハラの定義とパワハラが被害者や加害者自身、企業に与える影響、また類似するハラスメントとの違いについて解説する。

パワハラの定義

 パワハラとは、同じ職場で働く者に対して職務上の地位や人間関係などの「①職場内での優位性を背景に」、「②業務の適正な範囲を超えて」、「③精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指す。これら3つの要素を全て満たす行為がパワハラとして成立する。まずは、厚生労働省の資料を元にパワハラの定義を確認していく。

①職場内の優位性を背景にした行為
 一つ目は、「当該行為を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われること」と定義されている。
  
 例えば、一般的に上司や先輩から部下や後輩に対する言動など、「職務上の地位」が上位であることを利用した行為が該当する。この他、同僚間や部下から上司に対して行われるケースもある。これは、集団による行為で拒否することが困難である場合や、職務上の地位に限らず、業務における専門知識や経験値が高い社員がその優位性利用した行為である場合が多い。

②業務上の適正範囲を超えて行なわれる行為
 二つ目には、「社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性がない、又はその態様が相当でないものであること」と定義されている。
 
 具体的には、「業務上明らかに必要のない行為」「業務の目的から大きくそれた行為」「業務遂行の手段として不適当な行為」などがこれにあたる。

③精神的・身体的な苦痛を与え、就業環境を害する行為
 三つ目は、「当該行為を受けた者が、身体的若しくは精神的な圧力による負担を感じること、またはその行為により職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」とされている。

 暴力により傷害を負わせる行為を始め、「大声で怒鳴る」「激しい叱責を執拗に繰り返す」等の暴言により人格を否定し、恐怖を感じさせる行為が該当する。これにより、被害者の就業意欲を低下させるものも含まれるだろう。

パワハラが与える影響

 パワハラは、被害者だけでなく加害者自身や企業全体にも悪影響を及ぼすとされている。以下に、それぞれへの影響として考えられる項目を挙げる。

【被害者への影響】
・心身の健康が悪化する
・業務への意欲や自信が低下する
・退職や休職に追い込まれる

【加害者への影響】
・部下や上司、同僚など職場関係者からの信用が低下する
・被害者側からの訴訟や、それに基づく懲戒処分へのリスクがある
・職場内での立場の悪化や居場所がなくなる

【企業全体や事業主に与える影響】
・被害者の退職などにより退職者が増える
・パワハラの実態が内外に明らかになることで企業のイメージダウンにつながる
・民事責任や刑事責任の追求や訴訟問題へ発展する可能性がある

 それぞれに考えられる影響は、互いに関連性が高い場合が多い。そのため、企業はいかに早期の段階でパワハラを察知し、対応できるかが肝要となるだろう。

その他のハラスメントとの違い

 パワハラと似た意味を持ち、職場で同様に問題とされるものとして「セクハラ」「マタハラ」「モラハラ」等が挙げられる。それぞれの概要についても確認しておこう。

 セクハラは「セクシュアルハラスメント」の略語だ。セクハラに該当する行為とは、職場において行なわれる労働者の意に反する「性的な言動」により、従業員が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されるものを指す。

 次に、マタハラは「マタニティハラスメント」の略語であり、従業員が妊娠(マタニティ)期だけでなく、妊娠・出産・育児休業中に起きるハラスメントを意味する。マタハラの内容には、職場の上司や同僚からの妊娠や出産、育児休業に関する言動により、妊娠・出産した従業員や、育児・介護休業の申請や取得をした従業員の就業環境が害されるものが該当する。

 また、モラハラとは倫理や道徳という意味を持つ「モラル」と「ハラスメント」からつくられた言葉で、その名前通り、「職場内での倫理や道徳に反した態度や発言」が該当する。パワハラが職場内での優越性を前提にしているのに対し、モラハラは優越性の有無に関係ない点や、主に行為でなく態度や言葉により相手を追い詰める行為と言えるだろう。

<関連記事>
何気ない言動がハラスメントに。職場で起こりうるハラスメント5つ。

●パワハラ防止法施行の背景

 企業や従業員へさまざまな悪影響をもたらすパワハラに関して、実際にはどのような問題が起こっているのだろうか。ここでは、パワハラ防止法施行に至る背景について整理していく。

過労死・過労自殺の増加
 近年、過労死や過労自殺の増加が社会的問題となっている。2015年には、大手広告代理店で働く女性従業員が、長時間労働を理由に過労自殺するという事件が発生した。長時間労働が常態化した企業体制等が要因となり、尊い命が奪われたことは大々的に報じられ、裁判にも発展している。政府に対して、労働環境の改善や職場のパワハラ対策の必要性を感じさせた出来事と言えるだろう。

パワハラ相談件数「8万件超」
 厚生労働省によると、2018年度に寄せられた民事上の個別労働紛争相談件数のうち、パワハラなどの「いじめや嫌がらせ」関連のものが、過去最多の8万件以上にのぼることが明らかになった。職場でのいじめや嫌がらせを背景とした従業員の精神障害の発症も年々増加しており、社会的にも大きな問題となっている。少子高齢化等で人材不足が深刻化する中、貴重な労働力の損失につながる要因にもなると捉えられるようになったことも、今回の法施行の背景と言えそうだ。

セクハラ防止の義務
 今回の法改正を前に、1999年には男女雇用機会均等法でセクハラの防止が配慮義務に、また2007年には防止措置が義務付けられていた。これらの指針決定から10年以上が経過した現在も各項目の履行率は低く、違反企業に対する行政指導が行き届かない状態が続いていることも、政府が法施行に踏み切った要因と言える。今回のパワハラ防止法は、セクハラやパワハラ問題の社会的な認知度を上げることや、企業と従業員に対する意識づけとしての意味も含まれるだろう。

●まとめ

 企業にとって身近な問題とも言える「パワハラ」。パワハラが起きたことによる被害や影響の範囲は大きく、被害者だけでなく加害者や企業全体にも甚大なダメージをもたらす可能性がある。そのため、パワハラ対策は企業にとっても過労死や過労自殺といった大きな問題につながらないよう、早急に取り組むべき課題と言えるだろう。

 次回の後編では、パワハラ防止法の具体的な内容と、人事や労務担当者が取り組むべき具体的な対策内容について解説する。

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