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おさえておきたい!人事・労務の基礎知識Vol.2 個人住民税の特別徴収の手続きの流れとケース別の対応

2020.05.21

 源泉徴収税や住民税など、納税者である従業員に代わって企業が納入を行う税金は、管理や手続き方法などが複雑で分かりにくいこともあるのではないだろうか。今回の特集では、個人住民税の特別徴収の手続きの流れと、退職や休職など、従業員の状況に応じたケース別の対応方法について解説する。労務担当者は正しい納入方法を確認し、漏れのないように納入を行おう。

目次

●個人住民税とは
●個人住民税「特別徴収」の手続きの流れ
●従業員のケース別の対応方法
●まとめ

個人住民税について

 一定の所得を得ていれば誰もが納税義務を負う「個人住民税」。まずは個人住民税の概要と、納付方法について確認しよう。

個人住民税とは
 「個人住民税」は個人が負担する地方税で、都道府県に収める「都道府県住民税」と住民票のある自治体に収める「市町村住民税」の2つをあわせたものだ。納付する割当額は、「国」や納税義務者(従業員)が1月1日時点で居住する「市区町村」が決定し、納税の通知を行っている。個人の前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、定額で課税される「均等割」から成り立つ税金だ。

個人住民税の納付方法
 個人住民税の納税方法には「特別徴収」と「普通徴収」の2通りがある。特別徴収とは、給与支払者である事業主が、従業員の毎月の給与から個人住民税を天引きし、従業員に代わって市町村へ納入する方法だ。一方、普通徴収は個人事業主や無職の場合に用いられ、区市町村から送付される納税通知書を使用して、年4回個人で納付する。

 給与所得者に関しては、地方税法により原則「特別徴収」での納付が義務付けられているため、企業は、前年1月~12月までの所得額に応じて決定された納付額を、当年の6月~翌年5月の給与に反映させ、徴収・納入する必要がある。源泉徴収税のように企業が納付税額を計算したり、年末調整を行ったりする必要はない。

個人住民税「特別徴収」の手続きの流れ

 納税者である従業員に代わって企業側が納税を行う特別徴収。実際に企業ではどのような手続きを経て納入を行えばよいのか、方法や期限等を確認しておこう。

給与支払い報告書の提出
 まず、従業員ごとに前年の1月1日から12月までの給与支払い額を「給与支払い報告書」にまとめ、自治体の窓口に提出する。毎年「1月末日」を提出期限日としているため、忘れずに対応しよう。ここで報告した金額が従業員に課税される住民税の算定基準になるため、間違いのないよう慎重に進めよう。

退職者等の報告
 給与支払い報告書提出後、4月1日現在で企業に在籍していない従業員等がいた場合は、企業での特別徴収ができない。そのため、4月15日までにその旨を市区町村長へ届け出よう。

特別徴収税額の決定
 その後、事業主に対し従業員が1月1日時点で居住する自治体から「特別徴収税額決定通知書」が通知される。毎年5月末までに通知が届くため、従業員からの徴収手続きに備え慎重に管理しておこう。

税金の徴収と納付
 「特別徴収税額決定通知書」に記載された6月から翌年5月までに徴収するべき個人住民税の年額及び月割税額の記載に基づき、記載された月額税額を毎月の給与から天引きする。そのうえで、徴収した個人住民税を毎月翌月10日までに、当該の自治体に納入しよう。

納期の特例について
 従業員が常時10人未満の事業主は、従業員が居住する自治体に申請し承認を得ることで、年12回の納期を2回にする「納期の特例」を利用することが可能だ。納付期限は、6月から11月の給与天引き分が12月10日まで、12月から翌5月までの給与天引き分が6月10日までとなっている。従業員規模が少ない事業所は、この特例を利用して事務負担の軽減に努めるのも良いだろう。しかし、自治体への納付特例となるため、従業員からの徴収は毎月行う必要がある。

従業員のケース別の対応方法

 個人住民税の特別徴収は、原則としてパートやアルバイト、短期雇用者、非常勤職員、役員など全ての従業員が対象だ。従業員のケース別に、対応方法を確認しておこう。

パート・アルバイト
 特別徴収は、前年に給与の支払いを受けている従業員で、かつ当年度の4月1日において給与の支払いがあれば対象になる。よって、パートやアルバイト従業員もこの要件に当てはまれば特別徴収の対象だ。ただし、ダブルワークをしている従業員が他の事業所で特別徴収を受けている場合や、給与の支払いが不定期など、例外となる場合もあるようだ。例外となるケースは、各自治体ごとに定められているので、必要に応じて確認しよう。

新入社員
 新入社員が普通徴収で個人住民税を納めていた場合、「特別徴収切り替依頼書」を市町村に提出する必要がある。しかし、すでに納付期限を過ぎた税額は切り替えられないため、従業員個人で納付しなければならない。従業員には、その旨を伝えて滞納がおきないように配慮しよう。

 また中途入社で特別徴収を引き継ぐ場合で、前職の企業から異動届出書が送られていない場合も同様の扱いとなる。前職からの異動届出がある場合は、転勤の該当部分に追加で記載し、市区町村への届け出が必要だ。

転勤・休職
 従業員の転勤により、納税する自治体が変更になる場合や、休職により給与が発生しなくなった場合も手続きが必要だ。いずれの場合も「給与所得者異動届出書」の該当欄に記入し、市町村の窓口に提出しよう。休職の場合はまとまった期間、給与が発生しないことになるため、特別徴収の扱いとしては退職と同様になる。残りを給与から一括徴収するか、納税者個人が普通徴収で納めるかを選択してもらい、選択に応じ従業員側か企業側が適切に手続きを行おう。

退職
 従業員が退職した場合、その後の再就職の有無で対応も変わる。退職後に再就職する場合は、翌月10日までに転職先に給与所得者異動届書を送付することで滞りなく特別徴収を引き継ぐことが可能だ。
 一方、再就職しない、もしくは再就職が決まっていない場合、退職月によって取扱いが異なるので注意が必要だ。1~4月の退職は、原則残りの徴収分を「一括徴収」、5月なら通常通り「特別徴収」、6~12月の退職は「翌月から普通徴収に切り替え」といった対応になる。6~12月に退職した場合、本人の希望があれば、退職金を超えない範囲で一括徴収することも可能だ。
なお、退職所得がある場合、退職所得控除を超える分には住民税が課税される。従業員の退職時には、特別徴収方法の確認だけでなく、退職所得の課税についても留意したい。

納付を滞納した場合はどうなる?

 手続きを忘れたり、イレギュラーな対応などで納付が上手くいかなかったりすると、住民税の滞納に繋がってしまう。住民税を滞納した場合、ペナルティが課せられるのは従業員ではなく、企業側となるので注意が必要だ。仮に滞納した場合は、通常は滞納後20日前後で企業に督促状が届くようだ。すぐに納入するのが望ましいが、退職等で切り替えがうまく進んでいないという理由がある場合は、自治体に問い合わせるなどして早めに対処しよう。この場合では、翌月に2ヶ月分をまとめて支払うことも可能だ。

 また、滞納金があると、延滞税が発生することもある。入社や退社など従業員の異動があった場合は早めの手続きを心がけ、適切な対応を速やかに行おう。

まとめ

 都道府県や市町村に対して納税者が支払う個人住民税は、「特別徴収」により企業が個人に代わって納入することが原則として義務付けられている。特別徴収は一定の方法に基づき、期限までに行うことが重要だが、入社や退社など従業員の異動がある場合は、イレギュラーな労務管理が発生する場合もあるだろう。住民税の滞納が発生しないよう、ケースごとの手続き方法を把握し、適切な管理のもと対応を進めてみてはどうだろうか。

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