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今月の人事・労務トレンドVol.5 2019年4月解禁!労働条件通知書の電子化を詳しく解説

2020.06.09

 企業が従業員と雇用契約を結ぶ際、雇用契約書とともに交付する「労働条件通知書」。2019年4月に施行された省令により労働条件通知書の電子化が認められ、電子メール等で交付を行おうと考える企業もあるのではないだろうか。人事・労務担当者としては、規制緩和によって得られるメリットや電子化を導入する際の注意点を正しく理解することも必要になるだろう。

 今回は、労働条件通知書の概要や規制緩和のポイント、電子交付の方法や注意点について見ていく。省令の内容を正しく理解し、適切に運用しよう。

目次

●労働条件通知書とは
●労働条件通知書の電子化
●電子交付の方法
●まとめ

労働条件通知書とは

 労働条件通知書とは、雇用契約の際、企業が従業員となる人に対して明示することが義務付けられている書類だ。まずは労働条件通知書に記載が必要な内容と、類似書類である雇用契約書との違いを確認しておこう。

労働条件通知書の内容
 労働基準法第15条と労働基準法施行規則第5条によると、「企業は従業員との労働契約の際に、労働条件を明示しなけらばならない」とされている。また、労働者保護の観点から、企業にはこれらの内容を必ず書面にて交付する義務が課せられている。

 省令によると、雇用契約の際、企業が労働条件通知書によって労働者に通知する義務がある内容は以下の通りだ。

・契約期間、更新の基準
・就業場所
・業務内容
・始業時刻・終業時刻
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間・休日、休暇
・シフトやローテーションの基準
・賃金の計算方法、支払い方法・時期
・解雇・退職の基準

 また、通知の義務はないが、社内規定等で設けられている場合は以下の項目についても、同様に通知すると良いだろう。

・昇給の基準
・賞与
・労働者が負担する費用(食費・作業用品等)
・安全・衛生
・職業訓練
・災害補償・業務外の傷病扶助
・表彰・制裁
・休職

 このように、省令で定められた労働条件を記した書面が「労働条件通知書」となるが、企業によっては雇用契約書と労働条件通知書を同じ書面上にまとめて記載し、交付する場合もある。

雇用契約書との違い
 労働条件通知書と雇用契約書の大きな違いは、交付義務の有無だ。労働条件通知書は企業による交付が義務付けられているのに対し、雇用契約書には交付義務がない。雇用契約は企業と労働者双方の意思が確認できれば成立するとされている。そのため書面にする必要がなく、電子メールやファックス、電子署名による締結も可能だ。

 また、雇用契約書は互いの合意のもと書類に捺印をするのが一般的だが、労働通知書は企業が一方的に提示する書類となる。

労働条件通知書の電子化

 2019年に施行された省令により、労働条件通知書の電子化が認められた。ただし、電子化の導入にあたっては、注意が必要な点もある。ここでは、労働条件通知書の電子化に至った背景と規制緩和の内容、電子化が認められる要件について紹介する。

労働条件通知書の電子化に至った背景とは
 2019年以前の省令では、雇用契約書の交付については電子化が可能であったのに対し、労働条件通知書は電子化が認められていなかった。そのため、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた書式を採用している場合、雇用契約書と労働条件通知書を電子上と紙面上で別々に作成するか、雇用契約書と労働条件通知書が一体化した書類を作成し、紙面で渡すのが一般的だった。

 このような中、政府が推進する働き方改革関連法が施行。書類作成の手間など、労務関連業務の煩雑さを解消し、利便性を向上させることを目的として、通知方法の規制緩和に至った。

規制緩和の内容
 前述の問題を解消すべく行われた労働条件通知書に対する規制緩和は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働相関係省令の整備等に関する省令」に基づくものだ。

 2019年4月1日に施行されたこの省令では、これまでの労働基準法施行規則第5条に追記する形で、「配布方法を書面だけでなくファックスや電子メール等の電気通信から選択することができる」という文言が加えられた。これにより、従来の書面による交付ではなく、雇用契約に関する書類の完全電子化が可能となった。

労働条件通知書の電子化を認める3つの要件
 ただし、労働条件通知書の交付を電子ツールを用いて行う場合には、以下の3つの要件を満たしていなければならないため、導入には注意が必要だ。

①労働者が希望する場合
 今回の規制緩和によると、労働者が希望した場合に限り従来の書面での交付方法に加え、ファックスまたは電子メール等の交付方法を選択できることになった。あくまでも労働者本人の意向によるものなので、企業が一方的に電子メール等で労働条件通知書を交付してしまうと問題になる可能性がある。
  
②受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信によること
 電子化された労働条件通知書は、その労働条件が適用される本人のためだけにネットワークを通じて送信されることが条件となる。つまり、不特定多数の人が閲覧できるようなネットワーク上にアップロードする方法は認められないので、注意しよう。

③労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成できること
 電子メール等の通信方法を用いた労働条件通知書は、労働者本人が紙面に印刷できるものでなければならない。印刷を前提としないツールを用いたり、期限がすぎると閲覧・印刷できない方法をとったりすると、この要件を満たさない可能性がある。

電子交付の方法

 労働条件通知書を電子交付をするためには、どのような手順を踏めば良いのだろうか。ここでは電子交付を行うための書式作成の手順や、注意点等を紹介する。また、電子交付が可能になるクラウドサービスについても見ていこう。

フォーマット作成の手順と注意点
 労働条件通知書には決まったフォーマットがないため、独自の様式で作成する他、雇用契約書を兼ねた書類にしても問題はない。いくつかの様式が厚生労働省のホームページでダウンロードできるので、参考にしてみるのも良いだろう。

 形式が整ったら、記載義務のある内容が明示されているか、電子化を認める3要件を満たしているかをきちんと確認しておこう。

電子雇用契約サービスで簡単に電子化
 独自に作成・運用することも可能な電子交付だが、コストや運用の手間も多い。労働条件通知書や雇用契約書を電子化してくれるクラウドサービスを活用すれば、簡単に電子通知を行うことも可能だ。以下にいくつかのサービスを紹介するので、参考にしてもらいたい。

WelcomeHR

WelcomeHR

 WelcomeHRは、雇用契約や個人情報収集等の入社手続きに特化したクラウド労務サービスだ。個人情報取得フォームをカスタマイズしたり、個人情報と契約書のデータをいつでも確認できたりする他にも、自社の契約書をアップロードすることができる。契約者がステータスを更新したときに通知を受け取れる機能や、スマホでデジタル署名が行える機能もある。

「WelcomeHR」サービス資料はこちら

paperlogic

paperlogic

 paperlogicは、e-文書法や電子帳簿保存法(スキャナ保存制度を含む)、電子署名法や会社法等を考慮し、法令に準拠した電子化・ペーパーレス化を行えるサービスだ。紙面データから電子データへの置き換え、電子署名にも対応している。

「paperlogic」サービス資料はこちら

CLOUDSIGN

CLOUDSIGN

 CLOUDSIGNは、日本の法律に特化した弁護士監修の電子契約サービスだ。労働条件通知書兼雇用契約書のひな型を公開している。

NINJA SIGN

NINJA SIGN

 NINJA SIGNは、契約のフローを一元化する、ワンストップ電子契約・契約管理サービスだ。定型契約書の編集、新規作成、通知、締結、管理をクラウド上で完結することができる。

まとめ

 ワークスタイルの多様性や生産性向上にむけ、ペーパーレスや電子化が普及しつつある中、新型コロナウィルスの影響も相まって、雇用契約・契約更新はこれまで以上に効率化が求められている。企業の労務管理においても、労働条件通知書の電子化が可能になったことで、業務効率の向上を実現することができそうだ。コストや労力の削減、時代の流れや労働者のニーズ等を考慮しながら、労働条件通知書の電子化を導入してみてはいかがだろうか。

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