オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

押印と捺印の違いとは? 使い分けや電子印鑑を使うメリット・デメリットを紹介

2020.12.23

 さまざまな場面や書類で必要となる「押印」と「捺印」。両者にはどのような違いがあり、どのような使い分けをするとよいのか悩むこともあるかもしれない。

 今回は、押印と捺印の違いや、それぞれの効力と使い分け方、電子印鑑のメリット・デメリットを紹介する。重要な書類の手続きなどで慌てないためにも、それぞれのポイントを押さえ、ビジネスシーンによって使い分けられるようにしておこう。

目次

●押印と捺印の違い
●使い分けと効力
●電子印鑑を使うメリット・デメリット
●まとめ

押印と捺印の違い

 「印を押す」という行為を指す言葉としては共通しているものの、「押印」と「捺印」には明確な違いがある。まずは、両者の言葉の意味を押さえよう。

押印とは
 押印は「記名押印」の略語で、記名(パソコンやゴム印などで印字された、自署以外の氏名表示)のある箇所に印を押すことを指す。「記名」は自筆でサインを書かない場合に使われる言葉であるため、「押印」は印字された氏名や、何も記載されていない場所に印を押す場合に用いられる。

捺印とは
 一方、捺印は「署名捺印」の略語で、「署名」(自筆のサイン)のある箇所に印を押すことを指す。本人が自筆で氏名を記入し、そこに印を押す場合のみが「署名捺印」と言えるだろう。

 

使い分けと効力

 書類に「本人の意思であることを示す証」を残すためには、「記名のみ」「押印(記名押印)」「署名のみ(サイン)」「捺印(署名捺印)」の4つの方法がある。ここでは、それぞれの効力の強さや、印を押す位置について解説する。

効力の強さ
 「記名のみ」「押印(記名押印)」「署名のみ(サイン)」「捺印(署名捺印)」を効力が弱い順に並べると、以下のようになる。

(1)記名のみ
(2)押印(記名押印)
(3)署名のみ(サイン)
(4)捺印(署名捺印)

それぞれの特徴と使い分けを以下で見ていこう。

(1)記名のみ
 記名のみの意思表示は名前・社名が印字されているのみで安易に複製が可能であるため、正式な効力・証拠能力はないとされている。昨今の世情によって内閣府などによる「脱ハンコ」が促されてはいるものの、トラブル防止のためにも押印や署名、捺印が行われているのが実情だ。

参考:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」

(2)押印(記名押印)
 前述の通り、「押印」は印字された氏名や社名(記名)に印を押すことで、領収書や請求書などで使われるのが一般的だ。商法第32条では「商取引においては、記名押印をもって署名に代えることができる」とされてはいるものの、印鑑の種類などによっては複製の可能性が捨てきれないこともあり、法的効力としては押印よりも署名のみの方が効力が上となる。

(3)署名のみ(サイン)
 自筆で氏名を書く「署名」は筆跡鑑定で本人のサインであるかを確認できるため、法律上の証拠能力があるとされている。「ハンコ文化」の根強い日本では印鑑に対する信頼性・効力が強いため氏名または署名に印を押すことで効力を高めているが、欧米では署名(サイン)こそが効力を持つものとして扱われているため、海外の企業とのやり取りは署名のみで契約が締結されることも多い。

(4)捺印(署名捺印)
 「捺印」は署名に印を押すことを指し、日本では印鑑証明書を必要とするような契約など、特に重要となる書類で行うことが多い。書類の完全性・本人性が求められるため、使用する印には認印ではなく実印を使用する。

印を押す位置
 押印や捺印が法的効力を十分に発揮するためには、印を押す位置にも気を付ける必要がある。印鑑証明を必要とする場合はきちんと印鑑証明が行えるよう、他の文字と被らないようにすることが重要だ。反対に、印鑑証明が不要な書類では、印影の偽造などを防ぐためにも、他の文字の上から少し被せるように押すとよいだろう。

 なお、書類に「印」と記載されているなど、印を押す場所が定められている場合は、所定の枠内に印を押せば問題ないとされている。稟議書など、企業内で複数の担当者が押印する必要のある書類では、役職の高い人が左側になるように注意しよう。

電子印鑑を使うメリット・デメリット

 「電子印鑑(デジタルハンコ)」とは、印影を電子化し、電子文書に押印・捺印できるようにしたデータのことだ。ここでは、電子印鑑の概要と、メリット・デメリットを紹介する。

電子印鑑の概要
 電子印鑑には「単純に印影を画像に変換したもの」と「データに識別情報が含まれているもの」の2種類がある。前者は背景を透過させた印影の画像を貼り付けるもので、見積書や請求書などの押印に利用できる。後者は本人認証機能やログイン記録などの情報が含まれた印鑑データで、正式な書類や公文書にも捺印できる。

 日本では、2001年制定の電子署名法によって「一定の要件を満たした電子署名に従来のハンコと同様の推定を持たせる」とされた。また、1998年制定の電子帳簿保存法及び2005年制定のe-文書法では、一定保存要件を満たした契約書や伝票類の電子媒体での保存を認めている。それらの動きを受けて、今後は書類の電子化や電子印鑑の導入が本格的に進む可能性もあるだろう。

参照:今、話題の働き方「テレワーク」特集Vol.6 脱ハンコの実現へ ハンコ文化の課題とは?

電子印鑑を使うメリット
 電子印鑑の一番のメリットは、押印・捺印の作業を効率化できることだ。印刷や朱肉の準備などにかける時間を省略できるだけでなく、外出先でも承認を行えるため、決裁フローをスムーズに行うことができる。在宅勤務やフレックスタイムワークなど多様な働き方が促進される昨今の世情にも対応できる手段だと言える。

 また、書類の印刷が不要になるため、ペーパーレス化や印刷コストの削減に繋がるという利点もある。書類データをパソコン・クラウド上に保存できるため、書類の検索や管理も容易になるだろう。

電子印鑑を使うデメリット
 電子印鑑のデメリットは、なりすましや改ざん、不正使用などの可能性があり、紙書類に比べて完全性・本人性が懸念されることだ。識別情報がない電子印鑑ではそれらの危険性が高まるため、電子印鑑を導入する際は、「文書保護が行えるか」「操作者の本人認証が行えるか」「操作履歴の記録が保持されるか」などのセキュリティ条件を満たしたサービスやシステムを利用するとよいだろう。

 また、セキュリティが高いサービスを利用すると導入コストがかかる場合があることや、取引先が電子印鑑に対応していない場合は従来同様紙面でのやり取りが必要となることにも注意が必要だ。

まとめ

 同じニュアンスで使われることの多い「押印」と「捺印」は意味や効力に違いがあるため、それぞれの違いを理解した上で使い分けることが重要だ。近年は電子印鑑による承認の導入も進んでいるため、メリット・デメリットを把握した上でそれらのサービスを検討するとよいかもしれない。

<PR>