オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

今、話題の働き方「テレワーク」特集Vol.6 脱ハンコの実現へ ハンコ文化の課題とは?

2020.08.20

 雇用契約書や請求書など、あらゆる書面に押す「ハンコ」。押印は企業においても昔からの慣行として根付いているが、昨今のペーパーレス化、テレワークの浸透により「脱ハンコ」の動きが見られている。担当者の中には、さまざまな書類において脱ハンコ化を図りたいと考える人もいるかもしれない。

 今回の記事では、従来のハンコ文化の課題点や「脱ハンコ」への政府の動きについて解説する。また、脱ハンコを手助けするサービスの紹介も行う。時代の流れやサービスの概要を押さえ、適切に活用してほしい。

目次

●ハンコ文化の課題点
●脱ハンコに向けた政府の動き
●脱ハンコを手助けするサービス紹介
●まとめ

ハンコ文化の課題点

 ハンコ文化は企業においても受け継がれてきたが、現在、承認としてのハンコ文化にどのような課題が生じているのだろうか。ここでは書類への押印が重視されてきた理由やハンコを押すことの問題点、テレワークにおけるハンコ文化の課題点を解説する。

書類にハンコを押す目的
 書類に押印する目的は「書面の内容を認めたという証拠を残すため」であり、「ハンコの持ち主が自分の意思で押したものであると推定させるため」でもある。ハンコが実印であれば、印鑑証明書によって本人による押印であることを証明できるため、より強い証拠になるだろう。

 日本の法律では「定期借地契約」や「投資信託契約の約款」などの特別な定めがある場合を除き、契約内容を書面にする必要がなく、押印をする必要もない。例えば、従業員が入社する際に取り交わされる「雇用契約書」には交付義務がなく、雇用契約は企業と労働者双方の意思が確認できれば成立するとされている。

 しかしながら書面の交付や押印を省略するとトラブルにつながることも想定されるため、契約書の他、伝票や稟議書などの書類にはハンコを押すことで双方の同意を確認するのが一般的だ。

ハンコを利用することの問題点
 ハンコ文化では企業と従業員、自社とクライアントなど、書類の物理的な移動が伴う。また、書類の数が多ければ多いほど押印に時間がかかる。これらの理由から、「仕事の進みが遅くなる」「業務上の負担や心理的な負担を感じる」といった課題点が取り沙汰されるようになった。

 加えて、実印でもない限り「押されたハンコが本人所有のものである」「ハンコが本人が押したものである」という証明が難しく、ハンコの信頼性が徐々に薄れてきているという見方も出てきた。それでもハンコ文化がなくならなかったのは、形式的な部分が大きいと考えられている。

テレワークの弊害となるハンコ問題
 働き方改革や新型コロナウィルス感染症の拡大によってテレワークが浸透すると、ハンコ文化の問題点がこれまで以上に浮き彫りになった。在宅勤務がメインとなるテレワークでは書類のやり取りが難しいため、「クライアントとの契約締結に必要な捺印のためだけに出社する」「画像ファイルとして送られてきた書類をプリントアウトして捺印し、それを画像ファイルにして相手に返送する」など、非効率な作業が生まれるようになってしまった。データの授受は画像データの改ざんや情報漏洩の危険を伴うという新たな問題も発生した。

 これらの理由から物理的・心理的な負担を伴い生産性の低下が懸念されるハンコ文化を根本的に見直そうという動きが急速に強まり、「対面・紙・ハンコ」を廃止し、オンラインへの切り替えを行う企業が増えることとなった。

脱ハンコに向けた政府の動き

 ペーパーレスや脱ハンコに向けた動きが高まる中、政府はどのような対応をしているのだろうか。これまでの法律制定の流れや脱ハンコに向けた政府の動きについて解説する。

これまでの法律制定の流れ
 政府が2001年に制定した「電子署名法」では、「一定の要件を満たした電子署名に従来のハンコと同様の推定を持たせる」としている。また、一定の契約書や伝票類には法律上の保存義務があるが、これも1998年に施行された「電子帳簿保存法」、2005年に施行された「e-文書法」により、一定保存要件を満たせば電子媒体での保存が認められた。

 これらの法律の整備により、書類の電子データをやり取りし、電子署名を行うことで契約を締結する「電子契約」を行うこと、電子契約で取り交わした書類を電子データとして保存することが可能になった。

 当初「電子契約」には双方の環境整備やセキュリティの問題などが不安視されていた。しかし、それらに対応した電子契約サービスが増加したこと、政府が契約締結と書類管理の電子化を認めたことから、近年は契約締結の電子化が行いやすい環境が整ってきたと言えるだろう。

 なお、電子契約の仕組みやメリット、法律の詳細などについては以下の記事を参考にしてほしい。

参考:時代はデジタルへ!電子契約の仕組みからメリットまで徹底解説
参考:~アフターコロナの働き方~ 紙とハンコの文化からの脱出①
参考:~アフターコロナの働き方~紙とハンコの文化からの脱出②

政府が脱ハンコ宣言
 2020年6月19日、内閣府、法務省、経済産業省によって「押印についてのガイドライン(指針)」が発表された。Q&A方式で記されたこのガイドラインでは「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない」としている。押印を省略したり他の手段で代替したりすることが有意義とし、実質的に脱ハンコを促している。

 また、同年7月8日には、政府と経済4団体がハンコの押印を含む従来の慣習を一気に転換し、デジタル化を進めることを共同で宣言した。「新しい生活様式」においてテレワークを定着させ、生産性の向上と経済の活性化を図る狙いだ。この宣言では、各省庁に対し、書面や押印、対面を原則とした行政手続きやビジネスの慣習を見直し、法令や通達を改正することを求めている。取り組み状況については今年度末までに明らかにして実施を促すとのことだが、政府が主体となってデジタル化を促進することで、より脱ハンコ化が進むだろう。

参考:押印についてのQ&A

脱ハンコを手助けするサービス紹介

 企業における脱ハンコの実現には、契約書等の電子化システムの確立やセキュリティの強化、法律の遵守などが課題となる。ここでは、電子契約やクラウド上の情報管理など、脱ハンコを手助けするサービスを紹介する。

「Holmes」
 「Holmes」は、株式会社Holmesが提供する契約マネジメントシステムだ。契約書マネジメント機能では、契約書の作成、承認、締結、管理までを行うことができる。書面での締結に加えて電子締結が行えるため、場所を問わずに契約業務を完結することが可能だ。また、プロジェクトの関係者設定ができるので、権限を管理しつつ全体フローや進捗、詳細な履歴などを関係者間で共有でき、部署をまたいだ連絡や確認もスムーズに行える。

参考:契約マネジメントシステム「Holmes」

「paperlogic」
 「paperlogic」は、ペーパーロジック株式会社が行っているサービスで、法定保存文書を完全に電子化・ペーパーレス化するクラウドソリューションを提供している。PKI基盤を利用した電子証明書による電子署名とタイムスタンプを併用し、電子稟議、電子契約、電子保存を行うことができる。電子署名法や電子帳簿保存法、e-文書法の保存要件にも完全対応している。

参考:paperlogic電子契約

「WelcomeHR」
 「WelcomeHR」は、ワークスタイルテック株式会社が提供する入社手続きに特化したクラウド労務サービスだ。個人情報の収集と雇用契約をペーパーレス化し、クラウド上で管理したり既に利用しているシステムと繋げたりすることができる。2段階認証、IPアドレス制限、常時HTTPS化(SSL/TLS暗号化)によって情報セキュリティを強化している。

参考:入社手続きに特化した『個人情報収集』と『契約』を簡単に行うクラウド労務サービス「WelcomeHR」

「BtoBプラットフォーム 契約書」
 株式会社インフォマートが提供する「BtoBプラットフォーム 契約書」は、企業間で交わされる契約をWeb上で締結できるクラウドサービスだ。契約のやり取りや管理を電子データ化することにより、スムーズな契約締結とコスト削減を実現できる。ワークフローシステムにより、社内稟議の電子化を行うことも可能だ。過去に書面で締結した契約書をデータ化し、アップロード登録ができる自社保管機能も搭載している。

参考:BtoBプラットフォーム 契約書

「GMO電子印鑑Agree」
 「GMO電子印鑑Agree」は、GMOクラウド株式会社が提供する、法律準拠・弁護士監修の電子契約サービスだ。プランにより電子署名・電子サインの2つの署名タイプが使用可能で、社内外問わずさまざまな契約書類で印鑑の電子化が行える。管理機能も充実しており、キーワード検索だけでなく契約書名、締結日などの多彩な検索条件に対応している。

参考:GMO電子印鑑Agree

まとめ

 ハンコ文化は通常の業務やテレワークを行う上で弊害になることもあり、政府も書類への不要な押印の廃止を促している。今後もさまざまな場面でデジタル化が進むと予想されるため、企業においても電子契約サービスの利用など、時代に即した対応が必要になるのではないだろうか。
 ただし、さまざまな契約の場面では、相手が電子契約を拒否する場合や双方で同じサービスに加入しなければならない場合もある。書面とデジタルの長所を活かしながら効率的に使い分けていくことが重要だ。

<PR>