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コロナ禍におけるメンタルヘルス問題 「なぜ心が蝕まれるのか」その原因と対処法

2021.02.28
オフィスのミカタ編集部【PR】

新しい生活様式や働き方も定着しつつあり、リモートワークはもはや当たり前の光景になっている。ニューノーマルへの適応が迫られる中、従業員が抱えるストレスはどれほどのものなのか。ストレス対策やエンゲージメント維持の観点からは、どのような対策が有効なのか。メンタルヘルス対策支援で国内トップシェアを誇る株式会社アドバンテッジリスクマネジメント(以下、同社) で中堅中小企業の支援に特化した専門組織、ミドルマーケット開発部 部長 菊田卓氏に話を伺った。

コロナ禍のメンタルヘルス その傾向と対策

 同社では、メンタルヘルス不調の未然予防・ケアや、メンタルタフネス度・エンゲージメント向上施策による生産性の向上に取り組んできた。企業のメンタルヘルス対策支援で国内トップシェアを誇る。

 278万人の導入実績(20 20年3月末時点)を持ち、メンタルヘルス対策分野を牽引する同社は、ニューノーマル時代における従業員のメンタルをどのように見ているのか。

ストレスに押しつぶされる人 ストレスから解放される人

 同社が調査した約10万人を対象とするストレスチェックの統計がある。令和2年の5月から6月にかけて行われたものだ。

 それによれば、高ストレス者の割合は前年比で0・9倍に減少していた。意外なことに、むしろ新型コロナウイルス感染症の流行以前よりも、メンタル状態は改善傾向にあったのだという。

 「リモートワークが普及した企業様の特徴から推測すると、無駄な会議や通勤のストレスが軽減され、不生産性が解消したことが影響したと考えられます」(菊田氏)

 一方で、如実に悪い結果が現れた世代があった。25歳以下の若手世代である。高ストレス者の割合は前年比で1・3倍に急増していて、「リモートワークの急拡大をはじめとした環境変化に対し、若手世代にメンタル不調者が増加した」と菊田氏は言う。

 データが取られたのは、第一回目の緊急事態宣言が解除されて新規感染者数も少し落ち着いていた頃だった。

 ところがご存じの通り、その後、感染者数は著しく増加している。令和3年を迎えてもなお、先行きが不透明な状態が続く。

 「コロナ禍の長期化を受け、最初は若手世代に課題が見受けられましたが、世代に関係なく『コロナ疲れ』のような状態が出てきています」と菊田氏。

「なぜ、この会社で 働いているのか?」

 前述の通り、コロナ禍で大きな影響を受けているのが若者世代だ。なぜ特に若者が早い段階から不調に見舞われているのか。菊田氏は以下のように分析する。

 「高ストレスを抱える25歳以下世代の結果をさらに分析すると、三つの要因が関係していることが明確です。

 一つ目はキャリアへの不安。本来は、先輩や上司との直接的なコミュニケーションを取りながらキャリア形成の指導を受けるタイミングです。リモートワークの割合が高まることで意図的にそうした時間をつくっていかないと、若手のキャリアへの不安が募っていきます。

 二つ目としては、役割や責任の理解が追い付いていないことが挙げられます。リモートワークに伴ってある程度の自律が求められている中で、『自分は何をすべきか』十分に把握・理解できないケースが考えられます。三つ目は同僚のサポート減少です。これは若者世代に限定した問題ではありませんが、やはりメンタル面には大きなマイナス要素でしょう」

 その中でも一つ目のキャリアの問題は特に深刻だと菊田氏は捉える。「出社する機会が限られ、会社に属している実感も意義も感じづらくなっています。『なぜ、この会社で働いているのか』という疑問が容易に発生します」

 新入社員がメンタルヘルス不調、または会社へのエンゲージメント・帰属意識が不足することによって、休職や退職につながる。これは、採用・育成にコストを投資する企業にとっては大きな痛手だ。

 「特に従業員数が多くない中堅・中小企業においては、従業員が一人辞めるインパクトは非常に大きい。経営的な観点からも、早急に対策を打つ必要があるといえます。弊社でも若手向けにさまざまな打ち手をご提案する機会が増えています」(菊田氏)

 

物事を前向きに捉え 行動することで 状況変化に適応する

 若手以外の世代でも共通したメンタルヘルス不調に関する傾向もあった。そちらについても詳しく考察する必要がある。

 同社が、とあるIT企業の従業員約600名を対象に行ったストレスチェックで興味深い傾向が見られた。生産性が低下した人・ストレスが増加した人は共に「メンタルタフネス度」が低かったのだ。

 メンタルタフネスとは、同社によれば「外部から受けた刺激を適切に受け止め、対処のための行動を工夫し、ストレスを良い方向に進む原動力に変える力」である。実際の調査においては、物事を前向きに捉えられるかどうかが重視されている。

 つまり、物事を前向きに捉え行動できるかどうかが、コロナ禍での変化に適応する鍵の一つであることがうかがえる。ストレスをため込まず、かつ従来の生産性を維持、さらに向上するためには、前向き思考が有利であるといえよう。

 「実際に、仕事に必要なスキルが変わりつつあります。例えば従来は顔を合わせて合意形成をしていたところ、オンラインでは今まで以上に段取りする力やファシリテーション力が求められています」(菊田氏)

 ポイントは、コロナ禍によって発生したこれらの変化が、当然にメンタルを蝕むわけではないことだ。そうではなく、変局に際して後ろ向きな思考のまま行動することが、メンタル不調を来す要因といえるだろう。それを先程の調査結果から読み取ることができる。同社はこうした思考の癖を改善することができるカウンセリングを企業に提供している。

生産性の観点にも着目した メンタルヘルス対策

 労働安全衛生法改正により、2015年から50人以上の事業場はストレスチェックが義務化されている。対象となる企業においては、従業員のメンタルに従来以上の注意が払われていることだろう。

 とはいえ、そうしたチェックが本当の意味で従業員のメンタル問題の改善につながっているかは疑問だ。菊田氏は「ストレスチェックの結果を経営層にまできちんと上げ、対策の方針まで検討する企業は非常に限定的。逆に改善につながっている企業は、経営層とともに経営課題とストレスチェックの結果を突き合わせ、改善すべきテーマがどこにあるか議論をしている。議論しにくいテーマでもあるので弊社が客観的な立場として報告会をしながら、トップ、役員層へ意見を投げかけるなどディスカッションをご一緒するケースが増えています」と話す。特にコロナ禍の影響も甚大であるところ、職場環境の改善にまで結び付けることが急務だ。

 そこで同社では、ストレスチェックの内容や報告の仕方に工夫を施している。一般的にストレスチェックで把握する範囲にとどまらず、生産性につながるエンゲージメントやメンタルタフネス度、組織の崩壊にもつながりかねないハラスメントリスクなどを「見える化」する。同時に、同業他社との比較も行い、生産性向上の観点も含めて重層的な理解を可能にしていると菊田氏は話した。

 先の見えないコロナ禍において、メンタルヘルス不調を訴える社員は少なくない。そうしたメンタルヘルス不調は本人にとって多大な負担であるのみならず、企業にとっては生産性や業績の観点からも注意が必要である。
コロナ禍といった大きな環境変化が起きている難局においては「企業のトップに組織の現状を正確に理解してもらい、対策を検討する場に巻き込むことが大事です」と菊田氏は考える。

 

認知の偏りを自覚して 前向きな思考と行動を 増やしていく

 ここまで、コロナ禍特有のメンタル問題を考察し、その対策の重要性を議論してきた。

 それでは具体的には、どのようにすればストレス軽減や生産性の向上を実現できるのか。同社の取り組みを参照しながら、本人の問題と社内環境の二軸から具体的に見ていこう。

 菊田氏は、「物事の捉え方は訓練によって変えられる」と話す。そして、変えるための第一歩は自分自身の物事の捉え方の癖を「見える化」することだとしている。

 「例えば上司に怒られたとき、期待されているとポジティブに捉えられる人もいるのに、失望されたとマイナスに捉えて鬱々としてしまう人もいますよね。そうした場合、上司は本当に失望しているのか、なぜそう判断できるのかを深掘りして、事実と認識を分離していく。認知の偏りを自覚していただくことが出発点です」

 その上で次はマイナス方向の偏りがあることに気付き、それを意識的に修正し、新たな行動へとつなげていく。「実際の事実と自分が陥りやすい、考える癖を繰り返し整理します。一度や二度ではなく繰り返し行うことで、認知の偏りを理解し、それに気付き、今までとは異なる認知をつくり出すことで、行動の変容へとつなげていきます。それによって状況の解消を目指す手法です。弊社のカウンセリングでは一般的な傾聴マインドをベースに、課題解決につながることを重視した認知行動療法を用いたカウンセリングを行っており、従業員の悩みの認知と事実を先ほどのような手法で整理し、アプローチしていくことが可能です」(菊田氏)

 捉え方の偏りは誰にでもあり、それ自体は責められることではない。だがマイナス方向の偏りがメンタルヘルスを悪化させる要因なのだとしたら、それを変容させることに挑戦してみるのが良いだろう。まずは、自分の認知にどのような偏りがあるのか。カウンセリングを通じて理解することが有効だ。

部下が前向きに働くために いまこそ求められる「上司力」

 メンタルヘルス問題の難しいところは、自分自身のメンタルを整えるだけでは不十分だという点にある。

 その人にとっての外部環境に対しても施策を打たなければならない。そしてその問題を引き起こす外部環境とは、多くの場合人間関係にある。

 特に若手をはじめとした社会人にとって、「最も考えるべきなのは上司との関係性でしょう」と菊田氏は話す。「会社がいろいろ頑張っても、外部環境は変えられません。しかし会社として社員のメンタルヘルスを考えるにあたって、その人の上司の行動や関係性を変えることはできます」

 ところで、一般に上司と部下の関係でメンタルヘルスが話題になるとき、ハラスメントをはじめとしたネガティブな話題が上がりがちだ。だからといって、上司は部下の害にならなければそれで良いのかというと、そんなはずはないだろう。上司たるもの、部下のメンタルを悪化させないことはもちろん、ポジティブな影響を与えられなければならない。菊田氏にはそれを実感した出来事があった。

 「今だからお話しできるお恥ずかしい話なのですが、実は以前、私が責任者を務めていた部署のストレスチェックの結果で、上司のハラスメントに課題ありという結果が出たことがありました。

 暴言や暴力はもちろんやったことはありません。ただこの結果を踏まえ、当時の上長と意見交換したところ、褒めることが少ないと指摘されました。

 確かにその通りで、部下のメンタルに向き合い、やる気を引き出せていなかったことは非常に反省しました。それからは褒めることを習慣化して、ストレスチェックの結果が改善し、部下からの相談が増えるようになりました」

 同社では主に管理職を対象として、同社独自のストレスチェックの結果の読み方の理解と、職場に戻って取り組む改善アクションプランを作成する研修がある。その研修を実施した企業とそうでない企業では、高ストレス者割合に違いがあるという。

 また、メンタルヘルス不調者の発生を防止し、人を巻き込むためのEQ能力を向上する研修を行っている。そこでは部下の感情にアンテナを立てる重要性を強調している。

 「研修では部下の感情ときちんと向き合うことが生産性につながると理解することからスタートします。その上で、自分の感情にひも付く行動の癖を理解し、それを基に、自身の行動改善計画を作ります。研修後、計画に基づき実践を3カ月続けていただきます。その後、自分の変化をアセスメントする非常に大変なプログラムです。『忙しいのに面倒くさい』と感じる人も多くいらっしゃるでしょうが、続けていると部下から相談されやすくなるなど、変化が徐々に分かるようになりますよ。その結果、仕事が回りやすくなります」(菊田氏)

 同社のプログラム内容を聞くと、決して楽なコースではない。それでもチャレンジする企業が多いのは、メンタル問題を放置する危険性に気付き始めているからだろう。

コロナ禍でも従業員が 前向き思考で働くために

 「今こそ、従業員の心の健康と生産性の影響に着目する良い機会です。まず正確に『個人と組織の見える化』を行うことが第一歩。そして、経営課題とストレスチェックの結果に共通する課題への対策の実施、そして効果検証。繰り返しになりますが、従業員の心の健康による生産性向上のPDCAサイクルを回し始めるこれ以上ないタイミング」と菊田氏。今こそ各社とも、メンタルヘルス対策に取り組むべきタイミングではないだろうか。

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