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在宅勤務手当は必要?支給方法や手当の使い道を解説

2021.04.26

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、在宅勤務を導入する企業も増えている。在宅勤務を導入する場合、在宅勤務手当の必要性や支給方法などを知りたいという担当者もいるのではないだろうか。在宅勤務手当が課税対象となるのか気になることもあるかもしれない。

 今回は在宅勤務手当について、支給方法の違いによるメリット・デメリットや、主な費用項目の課税に関する注意点、他社事例等を紹介する。社内で在宅勤務手当を検討する際の参考にしてほしい。

目次

●在宅勤務手当とは
●在宅勤務手当の支給方法
●在宅勤務手当は課税対象となるのか?主な費用項目と注意すべき点
●在宅勤務手当の支給額平均
●まとめ

在宅勤務手当とは

 働き方改革の推進や今般の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、在宅勤務をはじめとしたテレワークが急速に普及している。それに伴い、在宅勤務手当を導入する企業も増えている。まずは、在宅勤務手当についてその概要や支給の目的を説明する。

在宅勤務手当の概要
 在宅勤務手当とは、在宅勤務を実施している従業員に対し、企業が支給する手当のことだ。自宅における業務環境の整備や維持を目的として支払う準備金で、在宅勤務における必要経費を、会社が負担する仕組みと言えるだろう。

企業が在宅勤務手当を支給する目的
 在宅勤務手当を支給する目的は、企業によってさまざまだ。中でも代表的な導入目的を3つ挙げる。まずは、「自宅の環境整備」を目的としたケースが考えられる。在宅勤務を行うには、自宅におけるネットワーク環境の整備が必要となるケースが多いだろう。通信環境やデバイスの整備を行う必要がある場合は、インフラ面での出費も想定しておくことが必要だ。同時に、在宅環境での継続した作業を見据え、パソコン用のデスクと椅子やモニターなどの購入を想定したケースもある。

 二つ目として、「生活費の負担軽減」を目的として在宅勤務手当を支給している企業も見受けられる。在宅時間が長くなることで、光熱費だけでなく、食費や日用品に対する支出の増加が見込まれるためだ。手当を支給することで、従業員の生活費に対する不安を払拭することも、企業全体のパフォーマンスを保持するために重要となるだろう。

 さらには、「従業員のモチベーション維持」を目的としたケースもある。在宅勤務が続くことで懸念されるのが従業員のモチベーション低下ではないだろうか。従業員の意欲低下は生産性の低下にも繋がると危惧されるため、在宅勤務手当を支給することで、業務に対する意識を高め、従業員のモチベーション向上を図る企業もあるようだ。

在宅勤務手当の支給方法

 在宅勤務手当の支給方法は、2つの方法が考えられる。一つ目は「現金支給」、もう一つは、従業員から在宅勤務に必要なものを調査し、現物として支給を行う「現物支給」である。それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか紹介する。

現金で支給する場合のメリット・デメリット
 現金を従業員に支給する「現金支給」のメリットは、従業員が現金を自由に使えることだ。在宅勤務手当は、用途制限を設けないことが一般的なため、従業員それぞれの生活環境に応じて、使い道を決められる。
 現金給付のデメリットとして、企業が意図した通りに在宅勤務手当が活用されないことが考えられる。在宅勤務手当の支給に当たっては、適切な使い方をしてもらえるよう、従業員に対しては手当の使い方に関する説明会等の実施も検討したい。

現物で支給する場合のメリット・デメリット
 在宅勤務手当の支給方法として、従業員に必要な道具や機材を現物で支給する「現物支給」という方法もある。必要なものを従業員にそのまま渡せるため、現金支給のように意図しない用途に使われることを防げるのがメリットだ。自宅でインターネット環境の整備が必要な場合でも、現物支給なら短時間でオフィスに近い環境を整えられるだろう。
 ただし、使い道を自由に選べないことが、従業員にとっては不満につながるケースがあることも理解しておきたい。

在宅勤務手当は課税対象となるのか?主な費用項目と注意すべき点

 2021年1月に国税庁が発表した資料によると、従業員に対して在宅勤務手当を支給する場合、その金額が課税対象になる場合とならない場合があるとのことだ。国税庁の資料をもとに、在宅勤務手当等の課税に対する考え方について、主な費用項目の事例を挙げながら注意すべき点をまとめた。

在宅勤務手当(金銭の支給)

 毎月一定額の金銭を支給する場合など、従業員に対して一律で在宅勤務手当を支給する場合は給与とみなされるため、課税対象となる。この場合の金銭とは、従業員が在宅勤務の必要経費として使わなかった場合でも、企業に返還しなくてよいものを指す。

 一方で、実費精算であれば、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については非課税となる。

事務用品等の支給

 企業が従業員に事務用品等を「支給」する場合(所有権を従業員へ移転する場合)は、従業員への現物給与となるため、課税対象となる。

 一方、企業が所有する事務用品等を従業員に「貸与」する場合は非課税だ。貸与の方法として、次のようなやり方も認められている。

●企業が従業員に対して、在宅勤務に通常必要な費用として金銭を仮払い後、従業員が業務に必要な事務用品等を購入し、その領収証等を企業に提出して費用を精算する場合

●従業員が事務用品等を立替払いで購入後、その購入に係る領収証等を企業に提出して費用を精算する場合

通信費
 通信費は、普段の生活の中で私用に利用した分と業務で利用した分を次の数式に当てはめて計算することが必要だ。通信料に関して、非課税となる部分は次の通り。

●業務目的の通話料
●電話料金の基本使用料やインターネット接続に関する通信料は、業務使用部分を合理的に計算した金額
(基本使用料や通信料など)×(1か月の在宅勤務日数)/(該当月の日数)×1/2

 通話料については、通話明細書等により業務のための通話に係る料金が確認できるため、その金額を企業から従業員に支給する場合は、非課税となる。ただし「基本使用料」や「インターネット接続に係る通信料」などについては、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要がある。上記の算式で算出した金額を従業員に支給する場合は、非課税だ。

 なお、企業と従業員の間における清算方法は、以下の2通りの方法がある。企業にとって利便性の高い方を選んでみてはどうだろうか。

●企業が従業員に対して、在宅勤務に通常必要な費用として金銭を仮払いする。その後、従業員が家事部分を含めて負担した通信費のうち、業務のために使用した部分を計算し、その金額を企業に報告して精算する

●従業員が家事部分を含めて負担した通信費や電気料金について、業務のために使用した部分を計算。その金額を企業に報告して精算する(業務のために使用した部分の金額をあとから受領する)

電気料金
 電気料金も通信費と同様、私用に利用した分と業務で利用した分を次の数式に当てはめて計算する。電気料金に関して、非課税となる部分は次の通り。

●業務のために使用した部分を合理的に計算した金額
(1か月の基本料金や電気料金など)×(業務に使用した部屋の床面積)/(自宅の床面積)×(1か月の在宅勤務日数)/(月の日数)×1/2

 電気料金は、在宅勤務した日数と業務のために使用した部分を、合理的に計算して算出した額が非課税となる。なお上記の算式を使わず、より精緻な方法で業務のために使用した費用を算出し、その金額を企業が従業員に支給する場合も、課税されない。

参考:国税庁『在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

在宅勤務手当の支給額

在宅勤務手当の支給額は、どの程度がよいのか悩む担当者もいるのではないだろうか。ここでは、在宅勤務手当の支給を行ういくつかの企業をあげて、手当の項目や支給額を紹介する。妥当な支給額は企業の状況によってさまざまだが、手当の支給額を検討する際の参考としてほしい。

株式会社SmartHR
 株式会社SmartHRでは、緊急事態宣言の期間に合わせ、通勤手当の代わりに「リモートワークお願い手当」として1万5千円/月を従業員に支給している。本来支給するはずだった通勤手当を原資とした手当で、一定金額の支給となるため課税対象となる。このほか、オフィス出勤をした場合は経費精算にするなど、従業員の動きに合わせた柔軟な措置を決めている。

参考:SmartHR「【強制リモートワーク期間中】通勤手当を「リモートワークお願い手当」に変更します

ヤフー株式会社
 ヤフー株式会社は「働く環境応援資金」として、従業員に5万円分のPayPayマネーライトを付与しているほか、2021年4月からは、毎月の通信費補助を3,000円から5,000円に増額するという。これは従業員へのアンケートをもとにした施策で、社員の心身の健康維持や自宅の労働環境整備を目的としている。2021年新卒社員を含む全社員約7,800名が対象だ。

参考:ヤフー株式会社「ヤフー、全社員を対象に、社員の心身の健康や自宅の労働環境整備として、 5万円分のPayPayマネーライトを付与

株式会社メルカリ
 メルカリグループにおいては、在宅勤務手当として6万円(半年分)の支給決定を2020年4月に発表した。これは、東京・大阪・福岡拠点における原則、在宅勤務移行等がきっかけで、手当は自宅の勤務環境構築や、チームビルディングを行うための準備金として位置づけられている。

参考:株式会社メルカリ「メルカリCEOから緊急事態宣言を受けてのメッセージ

まとめ

 在宅勤務時に「現金支給」または「現物支給」を行って従業員をサポートする在宅勤務手当。手当を支給することで、従業員の生活費増加に対する不安を払拭するほか、オフィス同様のパフォーマンスを期待できるなどのメリットがある。在宅勤務手当は、支給の仕方や清算方法により課税対象となる場合とならない場合がある。導入時には、支給額のほか、清算方法についても考えておくとよいだろう。自社の状況にあわせて、在宅勤務手当を検討してみてはいかがだろうか。

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