ルーティン業務を効率化+共有化 できたゆとりで前に進む人事に
採用、産休・育休、労務管理・・・。人事の仕事は多岐にわたるため、業務が縦割りで担当者任せになりがちだ。ルーティン業務に時間を取られ、テレワークもなかなか進まない。「社員の成長やケアという人事本来の業務に時間をさけるように」と開発されたバックオフィス向けタスク管理ツール「Bizer team」(バイザーチーム)。
約100社のバックオフィス担当者の声を聞いて商品化したというBizer株式会社代表取締役の畠山友一氏と執行役員で「Bizer team」プロダクトマネージャーの田中秋生(あきは)氏に、人事が抱える課題とその解決を促すサービスの特長を伺った。
人事に多い業務の属人化 テレワークも進まず
ーーー新型コロナウイルスの感染拡大で企業のテレワークは進みましたが、人事などのバックオフィス部門にも広がっていますか。
畠山氏 社内の8~9割はテレワークになりましたが、残り1、2割のバックオフィスはテレワークを実施しづらいというお話をよく聞きます。契約書や請求書などの紙を扱うために、オフィスで顔を合わせて仕事をするのが常態化しています。
テレワークをやりたいという声はすごく聞きますが、実現できていない会社が多いです。私はテレワークが進まない理由のなかに、人事の仕事に顕著な「属人化」の問題もあると思っています。
ーーーどういうことですか。
畠山氏 人事業務は結構幅が広くて、新卒採用、中途採用、労務管理などと担当が分かれ、縦割りなんです。その社員しかやっていない業務がたくさんあります。
先日、お客様からこんなお話を聞きました。人事部門で強制的にテレワークを導入したら、採用担当者が何をやっているのかがわからない。
オフィスにいれば空気で感じ取っていた感覚もないから、本当に仕事をしているのかと疑い始めて関係が悪くなったと。お互いの仕事内容がわからないからです。
田中氏 「担当者がお休みなので明日お返事します」という対応もバックオフィスに多いですね。
専門性の高い個人を置いたほうが、短期的にみると仕事が早いのでそういう配置になりがちですが、属人化すると、担当者が業務を抱え込んで問題が顕在化しづらくなります。
ほかの人はわからないからと相談しなかったり、今の業務を改善したほうがいいのかどうかも、他と比較できないから判断がつかなかったり。
その人でなくてもやれることはあるはずなのに、自分にしかできないと思い込んでしまう担当者が多いように思います。
属人化で困る5つのこと
畠山氏 属人化するのは問題だよねとよく言いますが、どんな困ったことが起きるのか、お客様から伺ってきた様々な話をまとめてみたことがあります。
仕事が引き継げない。ほかの人が手伝えない。マネジメントが機能しない。業務効率化が進まない。そしてもう一つ。これは見落としがちですが、社員の成長機会が失われることです。
優秀な人材が属人化した仕事をすると、会社はその人を動かせなくなります。ずっと同じ仕事だと社員は成長できず、変化を外に求めて辞めてしまうかもしれない。それは会社にとってもリスクです。
ーーー仕事を個々人で抱え込まない環境を作ることが大事になりますね。
畠山氏 業務をチームで共有して可視化する仕組みが必要だと思います。チーム力を上げることです。人事などのバックオフィスの仕事は、抜けもれなく期日通りに進め、ミスも許されない。100点を取ることが最低点でもある。それを一人の責任でやるのはなかなか辛いことです。
人間なので忘れることも、急に休むこともある。それをチームで担保できれば精神的な負荷も働き方も変えることができます。
田中氏 チームの生産性を上げるために開発したタスク管理ツールの「Bizer team」を上手に活用されているお客様では、チームメンバーだった方が半年経つとリーダーになっていたり、個々の業務を見ていたリーダーが今は別の仕事をしていたりと、組織に変化が生まれています。
100社の声を聞いて バックオフィス向けに開発
ーーーそれはどういうことですか。
田中氏 業務の属人化が解消されたからではないでしょうか。
Bizer teamのタスク作成機能を使えば、誰がいつ、何の作業をしているかがチームみんなに共有されます。担当者が作業を終えたらチェックを入れるので進捗がリアルタイムでわかります。コメント機能を使って相談したり指導したりもできます。
バックオフィス向けに作ったので操作もシンプルにして、やるべきことを迷わず書き出せるように、タスクに紐づくやるべき業務を、チェックリストの形で分解していく形にしました。この機能は珍しいと思います。
ーーーなぜそういう機能を付けたのですか。
田中氏 開発する際に100社ほどバックオフィス担当者にヒアリングしましたが、バックオフィスは、ゴールに向けて積み上げていく仕事よりも、ブレイクダウンしていく仕事が多いと感じました。
決まったものを決まった期日までに終わらせ、かつ間違ってはいけない。例えば、育休の手続きで何か抜けてしまうと、社員に給付金が支払われないことになります。
また、対象者ごとに事情が違ったり、ちょっとした気遣いが必要だったりもします。人事業務の9割はルーティンであっても、個々に対応する残り1割が実はすごく大事で、神経を使う仕事だと思いました。なので、この社員にはこうしたケアが必要だと書き足したり、削除したりできる柔軟性のあるチェックリスト機能を重視しました。
一人の気遣いをチームが共有でき、後任にも引き継げると、どんどん対応が変わっていくと思います。
畠山氏 タスクはコピーやテンプレート化できるのも特長です。ある社員の入社対応のタスクをコピーすれば別の新入社員にも使えます。「退社手続き」「派遣スタッフ対応」など必要なテンプレートを選んで繰り返し使えるので作業効率がアップし、ミスも防げます。
バックオフィス業務の価値も「見える化」
田中氏 企業の人事へのヒアリングで、どういう業務が多くて大変ですかと尋ねたら、リマインド業務だという声が多く聞かれました。1週間後にこの社員に連絡するというのを頭の中で覚えていらっしゃるんです。Bizer teamに追記すれば、覚えておく必要もなくなります。
畠山氏 これは私の反省点でもあるのですが、前職で営業をしていたころは、どうしても部門内での仕事を優先してしまって、対応が遅れがちでした。
でもバックオフィス担当者は終えるまでやらなきゃいけないから、ずっとかかりきりになるわけです。このリマインド業務を頭の中から消せるだけでも負担軽減になると思います。
田中氏 Bizer teamで仕事が「見える化」したことで、こまめにテンプレートのチェックリストを見直すなどした社員の方が、業務改善で評価されたそうです。
決して目立つわけではないけれど、黙々と仕事に取り組まれている方が会社に評価されるきっかけになったのは、本当にうれしかったです。バックオフィス向けのサービスを作ろうと思ったのも、仕事内容を可視化することで業務の価値が見えてきて、チームや会社に変化が生まれればいいなと思ったのが出発点でした。
業務効率化で生まれた時間に やりたい仕事を
ーーーBizer teamを開発したBizer社が目指す、理想の人事とはどういうものですか。
畠山氏 会社をより良く変えていこうという文化をもったチームが理想だと思います。
Bizer team を使って、業務効率化で生み出された時間で、採用にもっと時間をかけたり、社員の成長や最近増えているメンタル面のケアに力を向けたり、本来人事がやるべきこと、やりたい仕事にリソースを使ってほしいという思いが私たちにはあります。
人事って、会社のカラーをすごく映し出す組織だと思うんです。そこに余裕が生まれれば、会社の雰囲気も明るく変わるように思います。