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企業内保育所の導入のメリットと設立する方法・設置基準をわかりやすく解説

2021.09.22

企業内保育園と呼ばれることもある「企業内保育所」。待機児童問題で職場復帰できないという社会問題を解消するために、官民あげて設置を進めている保育所だ。企業にとっては自社の優秀な社員が育児で退職することを防ぎ、これから入社を検討する人へのアピールにもなる。今回は企業内保育所の導入を検討する企業に向けて、設置の方法から信頼できる委託先まで紹介していく。

企業内保育所の種類

企業内保育所にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴がある。どういった形で企業内保育所の設置を進めていくのか初めに方向性を確認する必要があるため、しっかりと理解していきたい。

認可保育所
国が定めた基準を満たし、自治体に認可された保育所を認可保育所という。基準をクリアする以外にも、自治体によっては認可保育所の運営実績が必須となるなど高めのハードルが設定されている。ただ、認可を受けることで助成金が交付される上に、利用者の募集は自治体で行ってくれるというメリットがある。企業が設置する認可園(事業所内保育事業)の場合、従業員だけでなく地域住民の子どもにも施設を提供する必要がある。

認可外保育所
認可保育所のような厳しい基準がないため、比較的自由な保育環境を整えることができるが、助成金が出ないというデメリットがある。認可外でも自治体による運営基準があるため、しっかりと確認しなければならないので注意が必要だ。

企業主導型保育所
企業主導型保育所も認可外保育所なので、設立条件は比較的ゆるやか。しかし、内閣府主導で行われている事業なので、認可園と同じくらい助成されるのが特徴だ。企業の営業時間に合わせた保育時間を設定できるため、夜間や土日の開園や複数の企業での共同設置など運営自体も自由度が高い。

企業主導型保育所の保育料の相場

2019年10月より保育料の無償化が始まり、3歳クラス〜5歳クラスの保育の必要性がある全ての子どもおよび0歳〜2歳クラスの住民税非課税世帯がその対象と決定した。

企業主導型保育所も制度に適用され、上記該当者で利用者負担相当額(0歳37,100円、1〜2歳37,000円、3歳26,600円、4歳以上23,100円)を無償すると決定した
(参照: 内閣府子ども・子育て本部「企業主導型保育事業における幼児教育・保育の無償化について」)。無償化対象外の人の保育料は地域の認可保育園と同程度に設定されていることが多いが、自社従業員の場合は保育料割引サービスを取り入れるなど、優遇するケースもある。

企業内保育所の導入メリット

企業内保育所の導入メリット

企業内保育所を設置するためには多くのコストや事務手続きが必要だ。それでも導入する企業が年々増えているのには、それ相応のメリットがあるからだ。ここでは導入することでのメリットを紹介していく。

● 出産・育児による離職が減る
経験を積んだ人材は企業にとって大きな財産。自社で育ててきた優秀な社員が出産・育児によって離職することを減らせることがもっとも大きなメリットだ。

● 育児中の社員の戦力化も期待できる
育児中のスタッフが無事に子どもを保育所に入れることができても、就業時間と保育園の開園時間がずれてしまうケースもある。接客業など土日も勤務する職種や早朝・夜間・深夜の就業が必要な職種では、日曜日や夜間には開園しないことが多い認可園では対応しきれず社員の戦力は半減してしまう。しかし、自社の就業時間に則した開園時間の保育所を運営すれば、社員は安心して子どもを預けて働くことができる。

● 企業の社会的評価が高まる
企業内に保育所を設置することで、子育てを全面的にバックアップしている企業であることを社内外にアピールすることができ、社会的評価が高まる。それにより、より優秀な人材を集めることもできるようになるだろう。

企業主導型保育所の設立に必要な要件

企業主導型保育所を設立するためには必要な要件を満たす必要がある。項目ごとに詳しくみていこう。

<法定基準>
企業主導型保育所として助成を受けるには、各種法定基準を満たす必要がある。まず、子ども・子育て拠出金を負担し、滞納がないことが必須条件。自社がしっかりと納めているか確認しよう。他にも消防法や食品衛生法といった基本的な法定基準、設置場所の区域の確認も怠らないようにしたい。また地方自治体ごとに認可外保育施設の配置基準が違うので、設置予定場所の自治体が設定している基準を満たすことも必要だ。

<保育従事者の配置・資格>
保育所の運営には、子どもの数に応じて必要な保育士の人数が決まっている。年齢ごとに必要な保育者数をみていこう。

・0歳児 … おおむね3人につき1人
・満1~2歳児 … おおむね6人につき1人
・満3~4歳児 … おおむね20人につき1人
・満4歳以上児 … おおむね30人につき1人

上記の合計に1名以上加えた配置が必要で、子どもの人数に関わらず常時2人以上が配置されていることが必須。また、その半数以上は保育士資格が必要で、残りの人員についても子育て支援員研修等を受講している必要がある。

<企業内の設備>
基本的には認可の事業所内保育所と同じ設置基準としているが、難しい場合でも認可外保育施設の基準は遵守するようにしなければならない。また、定員20名を境に設備基準が変わるので、設置予定の保育所がどちらにあたるのかもしっかりと検討したい。

【定員20名以上】
・満2歳未満の入所がある場合…「乳児室」「ほふく室」「医務室」「調理室」「トイレ」
・満2歳以上の入所がある場合…「保育室または遊戯室」「屋外遊戯場」「調理室」「トイレ」

【定員20名未満】
・満2歳未満の入所がある場合…「乳児室またはほふく室」「調理設備」「トイレ」
・満2歳以上の入所がある場合…「保育室または遊戯室」「屋外遊戯場」「調理設備」「トイレ」

<設備面積>
設備面積も設備の設定と同じく、定員20名を境に変わる。

【定員20名以上】
・乳児室…1.65㎡ + ほふく室…3.3㎡/1人あたり
・保育室・遊戯室…1.98㎡/1人あたり
・屋外遊戯場…3.3㎡/1人あたり

【定員20名未満】
・乳児室・ほふく室…3.3㎡/1人あたり
・保育室・遊戯室…1.98㎡/1人あたり
・屋外遊戯場…3.3㎡/1人あたり

屋外遊戯場を施設内に設置できない場合、保育所付近にある公園や広場、寺社境内を代替とすることができる。ただし、その場合にも条件があるので保育所設置場所付近の地理にもしっかりと留意したい。
(参照: 全国企業主導型保育事業連合会「FAQ 助成申請、運営にあたっての留意事項 」)

企業主導型保育事業の助成金が存在

内閣府が児童育成協会に委託している企業主導型保育事業の助成金がある。この助成金は運営費(保育施設を新設、保育施設の定員増、地域住民の子供の受け入れ開始)もしくは整備費(施設の新設工事、定員増による増築費)の2つで申請できる。

申請に必要な提出書類に不備があると申請の受付が取り消されたり、助成決定が取り消されたりすることもがあるため、しっかりとした準備が必要だ。
(参照: 公益財団法人児童育成協会「令和3年度 企業主導型保育事業の新規募集について(ご案内)」)

児童育成協会が運営する企業主導型保育事業ポータルでは、企業主導型保育事業に関するセミナーや助成金申請の募集を行っている。一度チェックしておくとよいだろう。
https://www.kigyounaihoiku.jp/

企業主導型保育所を設置する流れ

企業主導型保育所を設置する流れ

企業主導型保育所の設置を検討する場合、無駄な動きをしないようにしっかりと設置までの流れをつかんでおきたいもの。ここでは設置までの流れを紹介していく。

1.自治体に相談する
「どういった保育所を作るのか」ということはとても大切だが、まず最初にすべきなのが自治体への相談だ。どういった要件があるのかを事前に確認しておくと、設置や運営に関して無駄な労力を使わずに最初から基準に則した内容で計画を立てることができる。

2.設置方法を検討する
設置方法は(1)自社従業員専用として自社だけで設置する「単独設置型」、(2)自社のみ、または他の企業と共同で設置して共同利用する「共同設置・利用型」、(3)保育事業者が設置した保育施設を単独または複数の企業で共同利用する「保育事業者設置型」の3つ。

(1)の単独設置型以外の場合は地域の人々も受け入れるのかどうかも含めて検討する必要がある。

3.運営方法を検討する
自社で運営するのか、保育事業者へ委託するのかを検討する。自社で運営するのは、相当のノウハウがないとかなり準備に時間を要する。多くの場合は保育事業者への委託が現実的となっている。

4.設置場所・設備を検討する
運営方法が決定したら、設置場所の候補を挙げていく段階。自社敷地内の設備を利用するのか、従業員にとって交通の便がよい場所にするのか等、選択肢は複数ある。設置場所について相談できるサービスがある保育事業者へ運営委託をした場合、豊富な運営経験から最適な場所を提案してくれる。

保育施設の運営に必須の設備はもちろんのこと、必要面積まで厳密に基準がある。基準をクリアできず行政指導を受ける企業主導型保育所が続出しているため、しっかりと確認しながら進めていく必要があるだろう。

5.採用計画を検討する
施設に関しての計画が完成したら、次は採用計画だ。どれだけ立派な施設を作っても保育士がいなければ運営はできない。現在、保育士不足が続いており、募集を出しても集まらないことも多い。保育士の待遇に関してもしっかりと保障することで、経験豊富な保育士を採用できるようにしてほしい。保育事業者の中には、採用まで任せることができる場合もあるので上手に利用したい。

行政指導を受けた企業主導型保育所が全国の7割にも及ぶ

2019年に行われた東京都内にある企業内保育所への立ち入り調査では、502施設中365施設、72.7%もの施設で指摘事項が発生している。
(参照: 児童育成協会「企業主導型保育事業における立入調査の状況について」
保育計画の不備や事故防止対策不足など、預ける保護者にとって不安を感じる内容も多く、そうなると保育所への信用度も一気に落ちてしまう。とはいえ、自社で運営する場合に抜けなく運営していくのはかなりの経験がないと難しい。経験豊かなプロに委託して任せるのも一つの手だ。

企業内保育所を委託運営する場合のおすすめ業者

メディフェア
保育所の運営委託はもちろんのこと、助成金の申請サポートも行っている「メディフェア」。運営開始後も営業担当者が定期的に訪問し、保育所の状況や利用者ニーズを汲み上げている。また、それらを事業主へ報告してくれので、安心して任せることができるだろう。
(詳しくはこちら)

キャリア・ン
保育サービス用品のレンタル・販売や保育士募集サイトも手がける「キャリア・ン」では、保育現場での経験豊かなスタッフが保育所の開設から運営までをフォローしている。開設準備だけ、運営だけ、他の保育事業者から切り替えて運営をするなど、さまざまな関わり方に対応してくれる。
(詳しくはこちら)

アートチャイルドケア
全国で多数の認可保育所はもちろんのこと発達支援教室や子育て支援センター等も手がけている「アートチャイルドケア」は、蓄積したノウハウを生かした企業内保育所の運営に定評がある。多くの母親が気を使っている「食育」と睡眠を通して成長を育む「眠育」に力を入れており、子どもにとって最適な環境を整えてくれる。
(詳しくはこちら)

まとめ

企業内保育所を導入することは若い社員の活躍を促し、優秀な人材の流出を防ぐために役立つことは間違いない。しかし、設立および運営には厚労省による厳格な要件や手続きが多いことが、企業内保育所の普及の足かせになっている。設立を検討しているが、立ち上げのハードルの高さに悩んでいる場合は委託という選択肢もおすすめしたい。まずは上記で紹介した業者に資料を請求してみてはいかがだろうか。

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