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買掛金管理とは?管理するメリットや方法を紹介

2021.11.25

 原材料や商品を掛取引で仕入れる際に発生する「買掛金の管理」。買掛金は、仕入れ債務に分類されるため、徹底した管理が必要だ。企業の経理担当者のなかには、買掛金の管理について詳しく知りたい方もいるだろう。

 今回は、買掛金の概要や買掛金管理において行う業務の他、管理の方法等について紹介する。

目次

●買掛金とは
●買掛金管理とは
●買掛金を管理するメリット
●買掛金管理の指標、「回転期間」と「回転率」とは
●買掛金の管理の方法
●まとめ

買掛金とは

 買掛金とは、商品や原料を仕入れた際に使われる勘定科目だ。代金のやり取りを後から行う「掛取引」の際に利用するもので、支払い義務のある「仕入債務」として扱われる。まずは基本知識として、買掛金が売掛金や未払金、未払費用とどのような違いがあるのか確認していこう。

売掛金との違い請求書を発行する目的
 買掛金とともに、掛取引を行ったときに発生する勘定科目として「売掛金」がある。 買掛金が商品の仕入れに伴い後から支払う「債務(義務)」であるのに対し、売掛金は商品の販売時に後から代金を受け取る「債権(権利)」だ。例えばA社がB社から掛取引で商品を購入した場合に、A社には将来支払う義務のある買掛金が発生し、B社には将来受け取ることのできる権利として、売掛金が発生する。

買掛金と未払金、未払費用の違い
 買掛金と同じように「まだ代金を支払っていない状態」を表す勘定科目に「未払金」と「未払費用」がある。

 買掛金と未払金・未払費用との違いは、「商品の仕入れに関連しているかどうか」だ。買掛金は仕入れに対して発生する負債科目であるのに対し、「未払金」は、仕入れに関連しない「固定資産(土地建物・機械設備・車両など)」「外注費」「消耗品」などの対価としての債務を意味する。また、「未払費用」は、給与や家賃、利息、保険料など、債務の金額が決まっていない費用を指す。

買掛金管理とは

 買掛金管理とは、請求書の内容を基に仕入の会計計上を行い、支払った買掛金について正しく会計処理を行うことだ。買掛金管理の内容や流れについて、詳しく見ていこう。

管理したい項目
 買掛金を管理する際は、「貸借対照表」を用いて仕訳をするとともに、「買掛金管理台帳」や「仕入先台帳」などと呼ばれる補助簿を使うのが一般的だ。買掛金管理台帳は、買掛金の管理が滞りなく行わているのかをチャックする会計帳簿だ。買掛金管理台帳には、以下の項目について忘れずに記入しよう。

・「日付」仕入が発生した日付を記載する
・「伝票番号」実際の納品書や請求書と照らし合わせる際に必要になる
・「仕入れ先や取引先」どこから仕入れたのか、先方の担当者なども記載する
・「勘定科目」科目を明確にしておくことで決算時に処理がしやすくなる
・「摘要」以前に納品された物の追加や欠品の補足など、取引のなかでの大切な事項を記載する
・「支払金額または仕入金額・残高」毎月のように継続している取引の場合、当月の仕入や支払いもあるため、すべてを記載し仕入先とのお金のやりとりを明確にする
・「税の区分」消費税の課税や非課税について区分を明記する
・「消費税」税区分で明記した分類に合わせて記載する

 正確な勘定科目がわからない場合には、上司や会計士に確認するとよいだろう。買掛金管理台帳は、一般的に毎月集計を行い四半期や年間でまとめる。また、管理台帳は仕入先ごとに作成し、月末にはそれぞれの残高の合計が買掛金残高と一致しているかを確かめる。金額に相違がある場合には、記入のミスが考えられるため、伝票と照らし合わせ、正しい内容に修正しておくことが大切だ。

請求書の内容を確認し、仕入れの処理を行う
 請求書の控えを基に、仕入の帳簿に記載し決算書に反映していく。同時に仕入先に支払う代金である「買掛金」を計上し、上記で作成した買掛金管理台帳を用いて、伝票番号や仕入先、仕入金額などを正確に記載しておく。

 買掛金の仕訳は、例えば、10,000円の商品を仕入れて代金を掛取引にした場合、買掛金という負債が発生したため貸方に記載する。仕入高は費用に区分されるため、借方に記載する。貸借対照表においては、買掛金は仕入を行った時点では代金が未支払いのため、負債となる。

 

請求書に基づき代金を支払う
 買掛金として処理を行った請求書に基づき、期日内に代金を支払う。代金の支払いを行った時点で、支払った金額分の買掛金を取り崩す会計処理を行う。また、取引先に支払った金額と相違がないか、仕訳に誤りがないかなどの確認を行い、正しく処理が行われていない場合には原因を追究して対応をしていく。

 買掛金を現金で支払った場合には、仕訳は以下のようになる。仕入れの際に発生した費用がなくなるため、借方に買掛金と記載し、現金を支払うことによって資産が減少するため、貸方に現金と記載する。

 

買掛金を管理するメリット

 買掛金は、仕入債務に分類されるため徹底した管理が大切だ。買掛金を管理することで、社内だけではなく取引先との関係性においてもメリットが得られると言える。どのようなメリットがあるのか解説していこう。

支払い忘れの防止
 1つ目のメリットとして、買掛金の支払い忘れの防止があげられる。掛取引で商品や原料を仕入れることは、会社にとって一時的に借金を抱えることを意味する。管理が不十分で返済が滞ったり、債務が溜まってしまったりすると、経営を圧迫させることにも通じる。買掛金を正しく管理し、期限までに適切に対応していくことが求められる。

企業からの信用度の向上
 2つ目のメリットは、取引先企業からの信頼度の向上だ。会社を経営していく上では、取引先からの信頼を得ることが重要となる。取引先ごとに、買掛金の金額や支払期日をしっかり管理することで、確実な支払いが可能となり、支払いを巡るトラブルを未然に防ぐことにつながる。取引先との信頼関係を構築し維持していくためにも、買掛金の管理を徹底していく重要性は高いと言える。

買掛金管理の指標、「回転期間」と「回転率」とは

 現金や預金の流れであるキャッシュフローの管理をする上で、必要不可欠となるのが、「買掛(仕入)債務回転期間・回転率」だ。

 「買掛(仕入)債務回転期間」は、仕入れから実際に支払いを行うまでどのくらいの期間を必要としたのか表すもので、事業の安定性や信用度を表す指標の1つとなる。買掛(仕入)債務回転期間は、次のような計算式で算出する。
買掛債務÷仕入高(売上原価)×365=買掛債務回転期間 (日)
買掛債務÷仕入高(売上原価)×12=買掛債務回転期間(月)

買掛金の回転期間が短いほど、支払いが滞ることなく、スムーズ行われていることを示す。

 一方の「買掛債務回転率」は、買掛金をどのくらい効率的に支払っているのかを判断する指標で、次の計算式で表す。

(仕入高(売上原価) ÷ 買掛(仕入)債務)×100=買掛債務回転率


買掛債務の支払い効率がよいと判断できるのは、回転率が低く仕入から決算までの期間が長い場合だ。

買掛金の管理の方法

買掛金の管理方法は、エクセルを活用して自社で買掛管理台帳を作成する方法が主流だが、昨今ではより効率的に買掛金の管理を行うために、会計ソフトを導入する企業も増えている。ここでは、2つの管理方法を紹介していく。

エクセルの活用
 エクセルを活用して買掛金管理を行う場合には、上記で紹介した「仕入れの日付」「伝票番号」「勘定科目」といった項目を使った買掛金管理表で行うのが一般的だろう。エクセルを使用したテンプレートをダウンロードして活用することも可能で、実情にあった項目を追加していくことで、より確実な管理が可能となる。テンプレートを活用する場合は、予め必要な項目を追加しておくと以後の会計事務作業の混乱が少なくなるだろう。


会計業務を支える会計システムの導入
 経理担当者にとって、日常的に行う会計業務は発生頻度も高く正確性を求められるため、より効率的かつスピーディーに管理を行いたい場合には、会計システムの導入も1つの方法だ。会計システムは買掛金の管理以外にも、領収書や請求書の作成と整理、在庫取引の管理など、経理業務全般における一括管理が可能となるため、経理初心者でも対応がしやすいと言える。導入する会計ソフトによっては、自動仕訳入力機能や、二重取込防止作業といった便利な機能が実装されているため、作業スピードの向上のみならず会計処理のミス防止も期待できる。

まとめ

 買掛金管理は、社内の会計処理を円滑に進めていく以外にも、取引先との信頼関係構築の上でも大事な業務と言える。複数ある会計業務のなかでも、管理の重要性が求められるため、ミスなく効率的に行うためには、会計ソフトを用いて自動化を検討するのも1つの方法だろう。紹介した買掛管理の内容を理解し、きちんと会計処理を行おう。

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