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給与支払報告書とは?対象者や提出方法、手続きのポイントを解説

2021.12.16
オフィスのミカタ編集部

個人住民税の税額決定のために利用される「給与支払報告書」。従業員に給与の支払いを行っている事業主は、毎年1回の提出が義務付けられている。年末調整の事務作業の一連として捉えられるが、税務署へ提出する源泉徴収票とは役割が異なるため、混同しないよう注意が必要だ。また、納税にかかわる書類であるため、正確な記載・入念な確認作業が求められ、担当者にはプレッシャーのかかる仕事でもあるだろう。本記事では、年末調整を迎える総務・人事労務担当者に向け、「給与支払報告書」の役割や提出対象者、提出時期や方法などをわかりやすく解説する。 

目次

●給与支払報告書とは
●給与支払報告書の提出対象者
●提出の時期と方法
●給与支払報告書を提出しないとどうなる?
●まとめ

給与支払報告書とは

「給与支払報告書」とは、従業員に対して支払った前年中の給与を、従業員の住民票のある市区町村に報告するための書類のこと。給与支払報告書は、個人住民税額決定のために利用される。

住民税の「特別徴収」と「普通徴収」とは
住民税の納付方法は、「普通徴収」と「特別徴収」の2つに区分される。普通徴収とは、個人住民税を個人がそれぞれ納付する方法のこと。一方の特別徴収は、事業主が従業員の給与から税額を控除し、個人に代わって納付する方法のことを言う。給与支払報告書の提出対象となるのは、後者の特別徴収対象者についてだ。それぞれの対象者を簡単に把握しておこう。

【普通徴収対象者】
・給与所得者以外の個人事業主
・退職後、次の就職先が決まっていない人
・転職先は決まっているが、申請手続きが完了していない人
・特別徴収から普通徴収への切り替えが認められた人

上記に該当する人は、市区町村から送付された納付書で、指定の窓口で個人住民税を収める、普通徴収を行う。

【特別徴収対象者】
原則として、従業員が2名以上の事業所に雇用され給与の支払いを受ける従業員は、その雇用形態にかかわらず、特別徴収の対象者となる。総従業員が2名以下である場合、常時2名以下の家事使用人のみに給与を支払っている場合は、普通徴収に切り替えることが例外的に認められる場合もある。ただしこれは特殊なケースであるため、あくまで原則は、「従業員=特別徴収」と覚えておくとよい。

源泉徴収票との違い
給与支払報告書によく似た書類に、源泉徴収票がある。給与支払報告書と源泉徴収票の記載内容は同じだが、提出先と利用目的が異なる。「源泉徴収票」は、税務署へ対し、給与・退職手当・公的年金の支払いをする事業主などがその支払額及び、源泉徴収した所得税額を証明する書類のことである。一方、「給与支払報告書」は市区町村に提出し、翌年の住民税額の算出に利用される書類だ。

また源泉徴収票は、給与支払額により提出を必要としないケースがあるが、給与支払報告書は、パートやアルバイトも含め、給与の支払いがある者について、原則、全員分提出しなければならない(一部提出除外になる者もある)。提出漏れがあると従業員に影響が及んでしまうので、源泉徴収票と区別して作業を行いたい。

給与支払報告書を構成する書類
給与支払報告書は、以下の2種類の書類で構成される。

●個人別明細
●総括表

個人別明細は、給与支払いを受ける従業員個々の「給与支払額」「社会保険料」「源泉税額」「扶養人数」などの情報を記載する書類だ。一方、総括表は、提出する個人明細書を取りまとめた表のこと。年末調整を行う際に、手引き書と一緒に各市区町村から送付されることが多いが、初めて給与支払報告書を送付する市区町村がある場合には、事前に当該市町村から取り寄せて記入する他、自社で独自に作成した総括表を使用することも可能だ。また、税務署にも用意があることが多いので、いずれかの方法で対処するとよいだろう。

給与支払報告書の提出対象者

給与支払報告書の作成対象者は、原則として申告の年の1月1日時点で在籍している従業員で、前年1月1日~12月31日に給与を支払った全員だ。提出の対象外となる場合や、住民税の徴収方法が変わる場合などについても見ていこう。

提出が免除される従業員
「給与の支払い金額が30万円以下の退職者」は、給与支払報告書の提出の除外となる特例が認められる場合がある。ただし、一律に決まったものではなく市区町村の判断による措置のため、その都度対象となる市町村に確認を取り、慎重に作業を行うべきだろう。

住民税の「普通徴収」対象者がいる場合
年の途中で退職してしまった従業員は、住民税の特別徴収ができないため、普通徴収の対象となる。この場合も給与支払報告書の提出は必要だが、徴収方法が普通徴収に切り替わることがわかるように、記載が必要となる。個人明細書の取りまとめ表である「総括表」の中の、普通徴収の人数を記載する欄に、人数を記載して提出しよう。

提出の時期と方法

給与支払書提出の時期は、年末調整事務が終了してから、翌年1月31日までに各市区町村に送付しなければならない。ここでは提出手段・注意点などを見ていこう。

提出の時期と提出期限
給与支払報告書は、前年1月1日~12月31日までに支払った給与について、翌年1月31日までに提出しなければならない。従業員が住所を置くすべての市町村への送付が必要なため、遅滞なく提出できるよう、余裕を持ったスケジュールで作業を終えられるようにしたい。一部の市区町村では締め切りが異なる場合があるので、市区町村毎にしっかり確認を取ることが重要だ。

提出方法
給与支払報告書の提出には次の方法がある。

●窓口へ提出 
市区町村の窓口へ行き、税務関係を担当する部署へ書類一式を提出する方法だ。書類のまとめ方について指定がある場合があるため、手引などを使って事前に確認しておこう。

●郵送    
提出先の市区町村の担当部署宛てに郵送する方法もある。提出先が事業所の所在地から離れている場合などは、郵送が便利だ。個人情報が記載されているため、特定記録や簡易書留など追跡可能な方法で郵送し、万が一に備えることをおすすめする。

●光ディスク
光ディスク(CD、DVD)および磁気ディスク(MO、FD)での提出も可能だ。データを入れて、必要事項を記入したラベルを貼付後、市区町村の担当窓口へ持参、もしくは郵送で提出する。

●電子申告(eLTAX)
「eLTAX(エルタックス)」は、オンライン上で情報の入力と申請を行う、電子申告による提出方法だ。eLTAXを利用する場合は、事前に利用届け出を行う必要がある。また、基準年(前々年)に税務署へ提出した給与所得の源泉徴収票の枚数が100枚以上の給与支払者は、eLTAXまたは光ディスク等による給与支払報告書の提出が義務付けられている。

給与支払報告書を提出しないとどうなる?

給与支払報告書は、地方税法によって、提出が義務付けられている。提出を怠った場合には、事業主や事務担当者に1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることもある。提出を忘れ、住民税の賦課作業が行われる時期に間に合わない場合は、毎月従業員が収める税額にも影響が出てしまう。確認を怠らず、従業員全員分の給与支払報告書を、定められた期間内に提出できるよう、作業を行おう。

まとめ 

年に一度の事務作業である給与支払報告書の提出。提出先が膨大な数になることもあるので、担当者としては気の抜けない作業の1つと言えるだろう。対象者や提出スケジュールと期限などを踏まえ、遅滞や提出漏れなく提出できるよう、対応していこう。

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