オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

NDA(秘密保持契約)とは?関係する法律や主な契約条項

2021.12.21
オフィスのミカタ編集部

ビジネスシーンでは耳にする機会が多い「NDA(秘密保持契約)」。商談や取引を開始する場合、必ずNDAを締結しなければならないのか、どのような点に気をつけるべきなのかなどの疑問を持っている担当者もいるのではないだろうか。

本記事では、NDAの概要や目的、関連する法律、主な契約条項、締結する際の確認点について解説する。双方にとって適正かつ合理的なNDAを締結できるよう、役立ててほしい。

目次

●NDA(秘密保持契約)とは
●NDA(秘密保持契約)に関連する法律
●NDA(秘密保持契約)の主な契約条項
●NDA(秘密保持契約)を締結する際の確認点
●まとめ

NDA(秘密保持契約)とは

NDAとは、英語で「秘密保持契約」を意味する「Non-Disclosure Agreement」の頭文字をとった略語だ。商談や取引で秘密情報のやり取りが発生するかによって、締結の要否を判断する必要がある。まずは、NDAを締結する目的や締結のタイミングについて見ていこう。

NDA(秘密保持契約)を締結する目的
他社との取引が始まると、製品情報や顧客情報などのさまざまな企業秘密や個人情報のやり取りが発生するケースがある。NDAを締結する目的は、これらの重要な「営業秘密」について「多目的使用」「第三者への開示・漏えい」などを禁止することだ。締結の要否は企業の判断によるが、重要な営業秘密を契約相手に開示する必要がある場合や社員が取り扱う場合、開示される秘密情報について、双方にとって適正かつ合理的な管理を実現するためにNDAを締結するのが一般的だ。

NDA(秘密保持契約)を締結するメリット
NDAの締結により、情報を開示する側は次のようなメリットが得られる。

●相手が秘密を保持し、目的以外に情報を利用しないよう規律できる。
●相手が秘密保持の約束を破ったことで損害を被った場合、秘密保持契約の違反(債務不履行)を理由に損害賠償を請求できる。
●情報の流出・漏えいに関して、不正競争防止法にもとづく損害の推定規定・行為の差し止めを利用できる可能性が高くなる。

NDA(秘密保持契約)締結のタイミング
NDAを締結すべきタイミングは、「自社の秘密情報を開示する前」が基本とされる。商談中に秘密情報を提供し、NDAを締結するまでの期間にそれらが何らかの形で漏えいしてしまうケースも考えられるからだ。具体的な話が進んでいない状況ではNDAを持ち出しにくい面もあるが、リスクの回避・軽減のためには秘密情報のやり取りが発生する前に締結することが望ましい。

NDA(秘密保持契約)に関連する法律

法律上、NDAを締結する義務はないが、情報を開示する際には、秘密情報について定められている法律に注意しなければならない。ここでは、NDAに関連する法律を見ていこう。

不正競争防止法との関係
不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争の実現をめざし、不正な競争を防止するために設けられた法律のこと。同法で「不正競争行為」として取締りの対象となっている行為の一つに、「営業秘密の不正利用行為」がある。不正競争防止法2条1項6号の「営業秘密」に該当する要件は次の通りだ。

①秘密管理性:情報保有者の社内で秘密として管理されている情報であること
②有用性:製造技術上のノウハウ、顧客リスト、販売マニュアルなど技術上・営業上で有用な情報であること
③非公知性:公然と知られていない情報であること

なお、秘密保持契約では、不正競争防止法上の営業秘密より「秘密情報の範囲を広げることができる」とされている。

個人情報保護法との関係
個人情報保護法とは、主に個人情報を取り扱う民間事業者が遵守すべき義務などを定めた法律のこと。同法2条3項で定義された個人情報取扱事業者には、同法20条にて「その取り扱う個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講ずべき義務」、同法21、22条にて「従業者や委託先に対して必要かつ適切な監督をなすべき義務」が課されている。先述した「営業秘密」に個人情報が含まれている場合には、個人情報保護法を遵守するうえでもNDAを締結しておくとよいだろう。

NDA(秘密保持契約)の主な契約条項

NDAを作成・審査するうえで、特に確認が必要となる6つの条文について解説する。

秘密情報の定義・除外事由
「秘密情報の定義・除外事由」とは、開示者が開示する情報のうち、「どこまでの情報を秘密情報として取り扱わなければならないか」を明らかにするための条文だ。「秘密情報」に該当しない例外も定めるのが一般的とされる。「秘密情報」に該当するもの・該当しないものは次の通りだ。

【秘密情報に該当する例】
●開示者が開示する情報
●秘密保持契約の存在および内容、ならびに取引に関する協議・交渉の存在および内容

【秘密情報に該当しない例】
●開示を受けた時に公知だった情報
●開示を受けた時に受領側が保有していた情報
●開示を受けた後に、受領側の帰責性なく公知となった情報
●受領側が正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報 など

秘密保持義務
「秘密保持義務」とは、秘密保持契約の中核をなす規定だ。秘密情報について管理する義務とその方法を定めるとともに、「誰にまで開示してよいか」について当事者間の認識の違いを防ぐための条文が記される。秘密情報の受領者は、基本的に「第三者」へ秘密情報を開示できないが、関連会社や委託先、弁護士、アドバイザーなど、例外的に開示できる第三者について定めるのが一般的だ。

目的外使用の禁止
「目的外使用の禁止」とは、秘密情報について「どこまでの範囲で利用してよいか」について当事者間の認識の違いを防ぐための条文だ。先述した不正競争防止法に定める「営業秘密」に該当しない情報は、この「目的外使用の禁止」を定めない限り、受領者が受領した情報を使用することを妨げられない。これもNDAの中核となる条項といえる。

秘密情報の返還・破棄
「秘密情報の返還・破棄」とは、一定の事由が発生した場合において、受領側に対して秘密情報の返還義務や破棄義務を根拠づけるための条文だ。例として、契約の終了や情報の開示側からの要請があった場合などが挙げられる。

損害賠償・差止め
「損害賠償・差止め」とは、秘密保持契約の条項に違反した場合に、どのようなペナルティが発生するのかを根拠づけるための条文だ。損害賠償については、契約違反が発生してしまった場合の損害の回復を求めるという措置で、民法に規定がある。

一方、差止めについてはまだ発生していない損害を防ぐという事前の救済措置であり、民法の規定で請求できるかについて議論される。そのため、情報の開示者としては契約に明記して差止めが認められる可能性を高めておくことが望ましい。

有効期間・存続条項
「有効期間・存続条項」とは、「秘密保持契約上の義務をいつまで負担するのか」を明確にし、限定するための条文だ。双方が保持されるべき機密情報を開示する場合は、両当事者が秘密保持義務を負う双方向の契約になる。互いに認識の違いがあると、問題が発生した際に「言った」「言わない」でもめるリスクが考えられるため、互いに協議しながら契約内容をかためていくことが重要だ。

NDA(秘密保持契約)を締結する際の確認点

NDAには、契約当事者の双方が秘密保持義務を負う「双務契約」と、契約当事者の一方のみが秘密保持義務を負う「片務契約」がある。

情報の開示側は「できるだけ包括的に機密情報を守りたい」と考え、受領側は「できるだけ規制の範囲を狭くしたい」と考える。秘密保持契約書を作成する際は、情報を開示するのが片方の当事者なのか、双方の当事者なのかによって内容が異なるため、自社においては「開示者か受領者か」という視点を常に持ち、NDAの内容を確認したい。

【開示者の場合】
こちらから開示する秘密情報のほうが相手方から受け取る秘密情報よりも多い、または重要性が高い場合、秘密保持義務の内容は厳しくしておく。

【受領者の場合】
こちらが相手の秘密情報を受け取るだけで秘密情報を提供しない場合、実質的には秘密情報を受け取るこちら側だけが秘密保持義務を負うことになる。そのため、秘密保持義務の内容があまりに厳しい場合には、義務を軽くするよう修正を求めることも考える。

まとめ

企業の重要な経営秘密を守るために締結される「NDA(秘密保持契約)」。締結する目的を正しく理解したうえで、商談や取引で秘密情報を開示する前に結ぶことが重要だ。情報の開示者・受領者によって内容が異なることを念頭に置き、秘密保持義務の内容を確認しよう。本記事で紹介している主な契約条項や確認点などを参考に、双方にとって適切なNDA締結につなげてほしい。

<PR>