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人事評価制度のあり方。人事考課との違いや業績向上のための人事評価の進め方をわかりやすく解説

2022.04.08
オフィスのミカタ編集部

会社の業績向上や社員のモチベーションの維持に密接に関わる人事評価は、常に公平かつ適正な運用が求められる難しい業務だ。今回は人事評価制度のあり方から、評価の進め方についてわかりやすく解説していく。

人事評価と人事考課の違い・目的

「人事評価」と「人事考課」。意味が混同されやすい2つだが、実は使用目的が異なる。それぞれの目的を詳しく見ていこう。

人事評価とは従業員の業務や業績について判断すること
人事評価とは、従業員の能力や業績、業務態度などを総合的に判断する制度。営業職などであれば目標達成度や成果など客観的なデータを用いるが、数値化しにくい職種に関しては上司や同僚、部下などからヒアリングして数値化することもある。

人事考課とは従業員の待遇を目的に能力などを査定すること
人事考課は、人事評価と同じように能力や業績、業務態度などの評価基準で査定し、その査定結果を賃金や昇進、異動配置などの人事に反映する制度だ。人事考課は査定に直接関連し、従業員のモチベーションに大きな影響を及ぼすため、適正な査定が求められる。

人事評価と人事考課を通じて給与や異動などの待遇を決める
総合的に従業員を判断する人事評価と、待遇を決めるために能力を査定する人事考課の両方を総合した評価によって、最終的に給与や異動配置などの待遇を決めていく。

人事評価はいつ・何回行うべき?

まずは参考までに国家公務員の人事を担う人事院の人事評価制度の頻度を見てみよう。

能力評価は、10月1日から翌年9月30日までの期間を評価期間として、職務遂行するに当たり発揮した能力を評価するものとして年1回行われます。

業績評価は、10月1日から翌年3月31日までの期間及び4月1日から9月30日までの期間を評価期間として、職務遂行するに当たり挙げた業績を評価するものとして年2回行われます。

特別評価は、条件付採用期間及び条件付昇任期間中の職員に対し、条件付採用期間及び条件付昇任期間を評価期間として、能力評価が行われます。
(参照:人事院「人事評価」)

以上のように、定期評価である能力・業績評価に関してはそれぞれ年1回・2回行われ、特別評価は特に回数が定められていない。

自社の状態や人事評価の目的によって、時期や回数はこだわらずに決めるのがよいだろう。

事評価の仕組みの種類

人事評価にはいくつかの方法がある。ここでは多くが採用している3つの仕組みについて紹介する。

業績から評価
個人やチーム単位で目標を設定し、それに対する達成度で評価するMBOなどを取り入れて評価する制度。営業職など成果が数値で現れる部署に導入しやすいといえる。

業務への熱意から評価
仕事に対する取り組み方や熱意で評価する制度。事務職など、数値で現れない業務をしている部署に適用しやすい。

能力そのものから評価
企画力や実行力など、能力そのものを評価する制度。個人のスキルにより達成した仕事の成果を評価するため、技術職に向いている。

どれか一つで評価をするのではなく、複数を組み合わせながら総合的に判断することで公正な評価につながる。

人事評価の制度の種類

人事評価を活用するための制度について、それぞれを詳しく解説する。

コンピテンシー評価
コンピテンシーとは、優秀な成果をあげる個人の能力や行動特性を指す。業績の良い人材の行動特性を分析後に言語化して「コンピテンシーモデル」を構築し、人事評価に活用しているのがコンピテンシー評価だ。

・重要事項の意思決定能力
・交渉能力
・ストレス管理
など、多角的な評価を行い、現在どういった能力が不足・充足しているのかを客観的に判断することができる。

MBO評価(業績目標評価)
業績に連動して評価するMBO評価は、成果が数字に現れる部署において有効な制度だ。個人目標に対する進捗や達成度を見るため、自主性が培われる利点もある。

360度評価
1人の従業員に対してさまざまな関係者が評価を行う360度評価。従来のような人事や上司からの評価のみでなく、同僚や部下からの評価も含まれるため、多面的なデータが得られることが特徴だ。部下からの評価も関係するため、働きやすい職場環境の構築にも役立つ。

人事評価を行う際の注意点

人事評価には、従業員のモチベーションが深く関わるため、公正かつ適正な判断が求められる。評価の際に気をつけたいポイントを紹介する。

評価基準が曖昧である場合
複合的に評価判断するのは当然だが、その基準に曖昧な部分があると、評価を下す人によって、評価内容に偏りが生じてしまう。ある程度の厳格な基準作りは欠かせない。定められた評価期間の仕事を評価する、勤務時間内の仕事を評価することを徹底し、「人」ではなく「仕事」を評価するという大前提を忘れないようにしてほしい。

評価基準の目標が現実的ではない場合
現実的ではない目標を基準としてしまうと、多くの人の評価が下がってしまうことになり、モチベーションの大幅な低下が懸念される。現実的に到達可能な目標の設定が必要だ。

評価基準の重み付けに偏りがある場合
業績に直接関係する業務の評価基準を高く、メイン業務をサポートする業務の評価基準を低くするようなことがあってはならない。すべての業務が会社の成長に欠かせないという意識で、評価基準に偏りが出ないようにし、すべての従業員がモチベーションを保てるような公平な基準づくりを心がけるようにしたい。

評価者により評価が変わる場合
どれだけ厳格に評価基準を作ったとしても、評価者によって評価が変わるようでは、評価制度の信頼が根本から揺らいでしまう。従業員の会社への信頼が急低下する要因になるため、評価者によって評価が変わることがないようにシステム作りをしてほしい。

人事評価の精度を高め効率的に行う方法

ここまでの内容で、人事評価制度にはさまざまな種類があり、多角的に行う必要があることがわかった。しかし、実際に精度を高めた人事評価を行うためには、従業員一人ひとりの業務内容や成果を把握する必要があり、かなりの労力を必要とする。効率的に制度の高い人事評価を行う方法を紹介していく。

人事評価システムを導入する
人事担当者の負担軽減と人事評価の精度向上の両立を目指して多くの企業が導入しているのが人事評価システムだ。各従業員のデータや目標、ワークフローがシステム内に蓄積されるため、素早いデータ分析と客観的な評価ができる。

人事評価システムは導入すべき? 人事評価システムで得られる効果とは


評価基準を定性・定量で明示する
評価基準を定性・定量で明示することで、人事担当者が機械的に判定することができる。ただ、定性・定量で測れない業務に関しては漏れてしまうので、フォローが必要となる。

評価をするための情報を集約する
評価フォーマットを事前に準備し、評価基準となる情報を集約してまとめる。どんな情報が必要か、というゴールが先にわかっているため、効率的に情報を集めることができる。

評価後に評価内容に基づいたフィードバックを行う
評価後には各従業員にフィードバックを行うようにしたい。今後の目標や来期の業務への取り組み方など、より評価を上げるためにできることや評価の低かったポイントの改善点をしっかりと伝えることで、納得して次に進むことができる。それにより、従業員の成長を促すことができ、さらに企業成長にもつながっていく。

まとめ

人事評価は従業員にとって、会社での頑張りを評価してもらう成績表。今後の成長の糧となり、モチベーションのアップにつながるような、適切な評価を行うことが求められる。客観的な評価やデータ収集の効率化を推進できるシステムを構築し、人事担当者の実務および心理的な負担を軽減しながら適正な人事評価が行えるようにしてほしい。