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組織開発と人材開発の違いと組織開発を進める具体的手法についてわかりやすく解説

2022.03.24
オフィスのミカタ編集部

組織開発とは、人的交流を促して組織を活性化し、パフォーマンスを向上させる取り組みのことをいう。組織開発の考え方は1950年代にアメリカで誕生し、欧米を中心に発展してきた。高度経済成長期には日本国内でも飲み会や運動会といった形で取り入れられていたが、景気低迷により企業の資金力が大幅に低下したことからしばらくは下火となっていた。
再び組織開発に力を入れる企業が増えている理由や組織開発のあり方について解説する。

企業競争に求められる組織開発の在り方

近年、組織開発は企業間競争で勝ち抜くために必要な取り組みとして知られるようなったが、過去の取り組みをそのまま行っているようでは、効果は得られない。今求められる組織開発にあり方について見ていこう。

組織開発の目的は組織の継続的成長
組織開発の目標は組織のパフォーマンスを高めていくこと。企業が継続的に成長するためには、組織開発は一度取り組んだら終わり、ではなく、継続して取り組めるような仕組みづくりが必要だ。

人材開発と異なり関係性・プロセスにアプローチを行う
組織開発と混同されやすい言葉に人材開発があるが、アプローチするポイントが違う。人材開発とは、「人」そのものが対象となり、個々の能力や知識の習得を手助けする。それに対して組織開発とは「人と人を繋ぐ関係」から「部署間の関係」まで、グループ単位での関係性の構築にアプローチする取り組みだ。

以下の記事では、人材開発について詳しく解説しているため、人材開発の取り組みについてはこちらを参考にしてほしい。
人材開発と人材育成の違いと企業に求められる人材開発のあり方についてわかりやすく解説

企業を取り巻く経営環境の変化から組織自体の変化が求められている
一度低迷していた組織開発が再度盛り上がりを見せているのには、経営環境や働き方の変化が関係している。終身雇用や年功序列といった制度の崩壊、働き方改革によって多様な働き方が広まったことで、社員が一致団結するといった意識が低下し、離職率の高さにも繋がっている。こういった課題に取り組むために組織開発が有効であると、再注目されている。

組織開発の実践の基本的手順

実際に組織開発に取り組むための基本的な手順について解説する。

組織開発の目的を明確に定める
まずはゴールを明確にしておきたい。「チーム内で新しい企画を立ち上げる」「他部署との連携を強化して業務のスピード化を図る」など、具体的であればあるほど、メンバー間で意識を共有しやすいだろう。

組織の現状を定性・定量の両側面から正しく認識をする
具体的な施策を考える前に、現状とゴールのギャップを正確に把握することも重要だ。定性・定量の両側面から客観的に組織の現状を認識しておきたい。

組織開発の目的への達成プロセスを構築・設計する
目的達成のためのプロセスを構築・設計する。その際、トップダウンで行うよりもメンバー全体で計画することで、当事者意識を持つことができるだろう。

達成プロセスにおける課題のボトルネックを特定する
目的達成のためのボトルネックとなっている部分を特定することも忘れてはいけない。達成プロセス全体が完遂しない限り目的達成は困難だからだ。単にプロセスを組むだけでなく、ボトルネックとなっている課題にどうアプローチするのか、その改善をどう評価していくのかを設計しておこう。

試験的に施策を執り行う
まずは試験的に達成プロセスの施策を実行してみよう。施作効果の有無が分かるため、問題点を修正することができる。

効果検証を行い達成に向けたプロセスの調整・改善を行う
施策を執り行ったことによる効果・検証を行い、達成プロセスを調整、改善し成功率を高めていきたい。

成功事例を全社に展開していく
効果検証までの一連の取り組みを蓄積し、その知見を成功事例として社内全体に展開していく。それにより組織開発が広がり、更なる組織開発のノウハウを積み重ねることができ、継続的な組織開発の流れを整えることができるだろう。

認知バイアスのない事実をもとにした現状の把握が組織開発のカギ

組織開発の成功には、正しい現状把握が重要な鍵を握る。主観をもとにした現状把握では認知バイアス(認知の歪み)によって正しい理解は難しいものである。例えば、自分に都合の良い情報ばかりを集めて判断をし、「まだ大丈夫。正常の範囲内だ」と思い込もうとするといったことが起こってしまうのだ。そのため、対象メンバー内のさまざまな立場の人にインタビューや調査を行うなど、客観的なデータ集めは欠かせないだろう。多角的な視点から問題を捉え、その解決に必要なものをデータに即して提起していきたい。

組織開発を手助けするフレームワーク

効率的かつ効果的に業務を推進するためには、フレームワークを活用することも一つの手。ここでは、特に組織開発に役立つフレームワークを紹介する。

As isでTo Beミッション・ビジョンを明確にする
「As is(現状)」を認識しながら「To Be(理想の姿)」のゴールを明確にすることは、どのようなプロジェクトでも欠かせない基本的なフレームワークといえるだろう。

ミッション・ビジョン・バリューでコアコンピタンスを明確にする
ミッション・ビジョン・バリューとは企業理念を構成する3要素を組み合わせたもので、
ミッション:目的
ビジョン:ミッションを実現した後の目指す形
バリュー:価値
と定義されている。メンバー間でビジョンを共有しながらミッションを果たすためには、バリューが明確であることが欠かせない。どれが欠けても組織開発の達成が難しいことから、メンバー間で浸透させておきたい。

7Sにてビジョンに至る経営指針の策定のための分析を行う
7Sとは、マッキンゼーのコンサルタントが考案した組織改革で意識したい7つの要素を表したものだ。組織の構造(ハード)に関するものとして、「戦略(Strategy)」「組織(Structure)」「システム(System)」、人(ソフト)に関するものとして「共通の価値観(Shared value)」「社風(Style)」「人材(Staff)」「スキル(Skill)」となっている。

これらを網羅的に発展させることで、組織開発は成功となる。現在問題となっているのがどの部分なのか、どの部分のつながりが希薄なのか、視覚的に課題発見が可能だ。

タックマンモデルで組織のステージを把握する
心理学者のタックマンが提唱したタックマンモデルは、組織作りの過程を「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」「散会期」の5つのステージ分けて表したもの。現在、組織がどの段階にあるのか客観的に判定でき、次の成長にはどういったアクションが必要か見通すことができる。

OKRで組織と経営目標の一貫性を保ち現場に浸透させる
「Objectives and Key Results:OKR(目標と主な結果)」は、目標とその達成度を測ることで、目的までの距離感や進捗速度を組織全体で共有できる。目標や課題が明確になるため、組織全体で意識に一貫性を保つことができる。

組織開発のために組織を広く深く知る具体的手法

組織を広く深く知ることは組織開発の成功に欠かせない。具体的な方法について紹介する。

フューチャーサーチ
フューチャーサーチとは、話し合いに関係する人々全員が計画や施策の決定に参画するアプローチの一つ。参加者の構成に特徴があり、経営・管理者や従業員はもちろんのこと、契約社員やアルバイト、顧客といった利害が一致しない人々も集め、多様な意見を取り込めるようにする。
トップダウン式に比べて意思決定までのスピードは落ちるが、多角的な組織開発を進めることができ、結果的には企業成長への近道となるだろう。

ワールドカフェ
会議室の重苦しい雰囲気の中で多様な意見は生まれにくい。そんな状況を打破するために生まれたのがワールドカフェだ。カフェで寛いでいるときのようなリラックスした雰囲気で行うワールドカフェは、参加者を少人数で分け、テーブルごとに対話する。時間で区切り、タイムアップ後はテーブルメンバーを入れ替えて対話を繰り返していく。それにより、多様な意見を聞くことができ、少数派の意見も取り入れることができる。

アプリシエイティブ・インクワイアリー
アプリシエイティブ・インクワイアリーとは、自社の強みやよい部分を発見し、活用しながら目標を達成するアプローチを指す。強みを発見し、強みを生かした計画を設計、実行していくサイクルを繰り返し、目的を達成していくことを目指したい。

まとめ

企業の成長のためには、人材開発とともに組織開発が欠かせない。世界中で活用されている手法を取り入れながら、自社の強みを生かして誰もが主体的に取り組める組織づくりを継続して行ってほしい。