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多様な働き方における労働時間の定義と企業が守るべき36協定のポイント

2023.01.18
オフィスのミカタ編集部

リモートワークや時差出勤の導入など、働き方の多様化が進む中で、就業規則や勤怠管理体制の見直しに課題を感じている企業も多いだろう。この記事では、今だからこそ改めて押さえておきたい労務管理の基礎知識として、労働時間の定義や36協定のポイントについて解説していく。

多様な解釈がはびこる労働時間の定義

まずは、労働時間の定義について見ていこう。

使用者の命令指揮下にある状態の時間が労働時間の定義
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを言う。労働基準法32条では、休憩時間を除いて1週間につき40時間、1日8時間を超えてはならないと定められている。

勤務時間と労働時間の違いは休憩時間を含むかどうか
ここで、混同しがちな用語との違いを明らかにしておこう。勤務時間(就業時間)は、就業規則で定められた始業時間から終業時間までの時間を指し、休憩時間も含まれる。一方の労働時間は、勤務時間から休憩時間を除いた時間を言う。

所定労働時間と法定労働時間の違いは社則と法定の根拠がどちらか
労務の知識として、所定労働時間と法定労働時間の違いについても押さえておこう。

所定労働時間:就業規則や労働契約で定められた労働時間
法定労働時間:労働基準法で定められた1日8時間・週40時間までとする労働時間

多様化する勤務形態ごとの労働時間

働き方改革の影響などを受けて勤務形態の見直しを図る企業も多いだろう。ここでは、通常の固定時間制以外の勤務形態について紹介する。

週・月・年単位で柔軟に労働時間を調整する変形労働時間制
変形労働時間制とは、週・月・年単位といった一定期間の平均労働時間で法定労働時間の週40時間以内を守る勤務形態を指す。一定期間で労働時間を柔軟に調整できるため、繁閑差の大きい業態や24時間体制での稼働が求められる業態などで多く採用されている。変形労働時間制を導入する際は、所轄の労働基準監督署への届出が必要となる。

始業・終業時刻を労働者が決定できるフレックスタイム制
労働者個人の裁量を増やし、柔軟な働き方を可能にする勤務形態として導入する企業が増えているのがフレックスタイム制だ。始業時間や終業時間を労働者自身が決定できる点が特徴である。フレックスタイム制の導入には、就業規則の変更および届出と労使協定の締結が必要となる。

勤務形態が多様化しても守るべき法定労働時間は変わらない
上記のような勤務形態に変えることで労働時間の柔軟性は増すが、週40時間以内という基本ルールは変わらない点は押さえておこう。また、勤務形態の変更に伴って、就業規則の変更などの各種手続きが必要な点も忘れてはならない。

労働者に労働時間配分を任せる「みなし労働時間制」の使い分け

続いては、専門性の高い職種などで採用されている「みなし労働時間制」について紹介しよう。みなし労働時間制は、実働時間にかかわらず、所定労働時間を働いたとみなす勤務形態を言う。ここでは、みなし労働時間制に該当する3つの勤務形態について詳しく解説する。

専門職19業務における専門業務型裁量労働制
1つ目のパターンは、専門業務型裁量労働制だ。この勤務形態を採用できるのは対象19業務に限定されている。研究職や士業、制作関連職種など、いずれも専門性の高い業務であり、管理監督者が具体的な業務遂行手段や時間配分を指示できない業務であると言える。専門業務型裁量労働制を採用するには、労使協定を締結し労働基準監督署に書類を提出する必要がある。

事業運営の企画関連の業務における企画業務型裁量労働制
2つ目のパターンは、企画業務型裁量労働制だ。対象職種は事業の運営に関する企画、立案、調査及び分析に限定されており、導入においても厳格な条件が設けられている。労使委員会の設置し、労使委員会で8割以上の賛成を得ていること、その決議を労働基準監督署長に届け出ていることなどが必要だ。

事業場以外での労働の時間算定な困難な場合には事業場外みなし労働時間制
3つ目のパターンは、事業場外みなし労働時間制だ。営業職や旅行添乗員、在宅勤務など、1日の多くを事業所外で過ごしており、労働時間の把握が難しいことが導入の条件となる。たとえ事業場外で働いていても、管理者が同行していたり、随時指示を受けながら働いていたりする場合には対象とされないため、運用には注意が必要だ。

法定労働時間以上の労働には36(サブロク)協定が適用される

最後に、時間外労働に関する規定について紹介する。もし違反すると罰則も設けられているため、労務担当者はしっかり頭に入れておこう。

36協定とは労働基準法36条、時間外労働協定を指す言葉
36協定は、労働基準法36条で示されている「時間外・休日労働に関する協定」のことを言う。1日8時間・週40時間を超える時間外労働や休日出勤を命じる場合には労使協定を締結し、労働基準監督署長へ届け出ないといけないという規定である。

36協定の上限設定には書面での締結が必要
労使間で36協定を締結する場合には、書面で36協定書を作成し、別途協定届を提出する必要がある。その際、労働者側は
・労働者の過半数で組織される労働組合
・(上記に該当する労働組合がない場合)労働者の過半数の同意をもって選出された労働者の代表
のいずれかであることが条件となる。

36協定の上限を超えた場合、罰則対象のため注意が必要
2019年4月からは36協定で定める時間外労働に上限が設けられ、罰則規定も定められた。具体的には、時間外労働の上限は原則、月45時間・年360時間と設定されており、臨時に特別な事情があり労使の合意が取れている場合には月100時間未満、年間720時間まで残業が可能となっている。

以下の記事では36協定について企業が押さえるべきポイントを紹介している。ぜひ一読してほしい。
【要注意】36協定を知らないと危険?!企業が押さえたいポイントとは

まとめ

長時間労働やサービス残業といった労働時間に関する労使トラブルは、従業員全体のエンゲージメントを低下させるなど、会社に大きな影響を及ぼしかねない。ぜひこの記事を参考に、コンプライアンスを遵守した上で働きやすい環境を整えてほしい。