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年末調整控除の種類・控除額の仕組みと年末調整電子化に対応する便利なサービスを紹介

2022.11.01
オフィスのミカタ編集部

バックオフィス業務において、年末の一大イベントと言える年末調整。年に一度の複雑な作業をミスなく効率的に乗り切ってもらうために、この記事では年末調整の基礎知識からおすすめの電子化サービスまでを網羅的に紹介する。

年末調整は何のために存在するのか

まずは、年末調整の基礎知識から押さえておこう。

所得税の過不足金額を調整する年末調整
年末調整は、従業員個人の所得税額を確定させ、源泉徴収額との過不足金額を調整する作業だ。個人が行う確定申告の代わりに、会社員の場合は給与を支払う企業側が税金を確定させる必要がある。

年末調整を行う中で過不足金額が出る理由
源泉徴収を行っているにもかかわらず年末調整を行わなければいけない理由は、毎月の源泉徴収額はあくまで概算であるためだ。1年の間に扶養家族が増えたり、各種保険料を増額したりといった従業員個人の各種控除の事情も加味した上で、年末調整では最終的に税額を決定しなければいけない。

給与所得者の控除は給与所得控除と所得控除の2つ
年末調整では課税所得を確定した上で、源泉徴収額との差額を調整する必要がある。
課税所得は、
給与収入 - 給与所得控除 = 給与所得
給与所得 - 所得控除 = 課税所得
の流れで算出される。
給与所得控除は、言わば「会社員としての必要経費」を年収から控除するための制度だ。自営業者などの事業所得者であれば収入を経費から差し引くことができるが、会社員の場合は仕事用のカバンや靴を購入しても経費で落ちるわけではない。こうした自己負担分を経費として一定額を控除するものだ。給与所得控除は会社員のような給与所得者のみが対象であり、その額は収入によって異なる。

年末調整時に適用される控除と控除額

次に年末調整で適用される所得控除の種類について見ていこう。概要は以下の通りだ。

基礎控除
基礎控除は、全ての納税者が受けられる控除だ。合計所得金額が2,400万円の場合は一律で48万円となっており、2,400万円を超える場合は所得金額に応じて減額される。

配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除と配偶者特別控除は配偶者がいる場合に適用される所得控除だ。配偶者の合計所得金額48万円(給与収入103万円)以下なら配偶者控除、配偶者の合計所得金額が48万円超〜133万円以下かつ納税者の合計所得金額が1,000万円以下の場合は配偶者特別控除が適用される。つまり、この2つが併用されることはない。

扶養控除
扶養控除は、合計所得金額48万円以下の扶養親族がいる場合に適用される。合計所得金額48万円(給与収入103万円)以下である16歳以上の扶養家族がいる場合には一人あたり38万円が控除される。また、特定扶養親族や老人扶養親族に該当する場合には増額される。

生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料控除と地震保険料控除は、納税者が加入している保険料に対して一部控除されるものだ。生命保険料控除は一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料が対象となる。3つそれぞれ最高額が決まっており、3つの合計で最大12万円まで控除される。地震保険料は最大5万円控除される。

社会保険料控除
健康保険料や介護保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料などが控除される。納税者だけでなく、扶養親族分も対象となる。

障害者控除
納税者または配偶者、扶養親族に障害がある場合に適用される。控除額は原則として27万円だが、特別障害の場合は40万円、特別障害者が同居している場合には75万円に増額される。

ひとり親控除・寡婦控除
ひとり親控除は、男女を問わず生計と共にする子どもがいる場合に適用される所得控除で、金額は35万円。一方の寡婦控除は女性のみを対象とし、扶養親族がいる場合に27万円が控除される。いずれも合計所得金額は500万円以下の場合に限られる。また、この2つを併用することはできない。

小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は小規模企業共済法で定められた掛金全額を控除するものだ。小規模企業共済のほか、企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)、心身障害者扶養共済制度が対象となる。

勤労学生控除
勤労学生控除は、納税者が勤労学生の場合に受けられる控除だ。合計所得金額75万円以下かつ給与所得以外の所得が10万円以下の場合に、一律で27万円の控除が受けられる。

年末調整後に確定申告をすることではじめて適用される主な控除

控除の中には、年末調整ではなく確定申告時に適用されるものがある。寄附金控除と医療費控除、雑損控除の3つだ。ここではそれぞれについて詳しく見ていこう。

ふるさと納税などの寄附金控除と年末調整後の申請方法
寄附金控除は、国や地方公共団体、認定NPO法人、政治団体などに寄付を行った場合に控除されるものだ。申告時には、寄付金受領証明書が必要になる。控除額の算出方法は、所得控除方式と税額控除方式の2種類があり、納税者が選択できる。

医療費控除と年末調整後の申請方法
医療費控除は、納税者と配偶者、生計を共にする親族の医療費を対象とし、医療費が10万円を超える場合または総所得金額の5%を超える場合に控除が受けられる。確定申告書と医療費控除の明細書を提出しよう。

雑損控除と年末調整後の申請方法
雑損控除は自然災害や火災、盗難などによる損失を受けた場合に受けられる控除だ。対象となるのは現金や家具、住宅など、「生活に通常必要とされる資産」に限られる。確定申告時には、損害の原因や損害が生じた年月日、損害を受けた資産、保険金などで補填される額といった情報が必要になる。

2020年にスタートした年末調整の電子化

2020年の10月からは年末調整の電子化がスタートした。電子化は企業側の作業を大幅に削減できるというメリットがある。従業員自身が電子申請によって控除額を入力するため、担当者による控除額計算が不要となり、確認作業の負担も軽減される。年末調整を効率化したい企業やヒューマンエラーを減らしたい企業はぜひ一度電子化の導入を検討してほしい。

住宅ローン控除の対応だけは申告タイミングに要注意

住宅ローン控除も所得控除の1つだが、初年度は確定申告が必要になり、2年度以降は年末調整で行えるため対応には注意が必要だ。また、2022年からは住宅ローン控除の内容が大きく改正されている。新築の場合の控除期間が10年から13年へと延長されているほか、控除額が0.7%へ引き下げられているため注意しよう。

以下の記事では実際に年末調整業務に携わる担当に聞いた負担感やオンライン化への希望を調査したアンケート結果を公表している。ぜひ現場の声として参考にしてほしい。
「年末調整に関する市場調査」8割が「オンラインで完結したら楽になる」と回答

年末調整電子化に対応するおすすめ従業員の年末調整・確定申告支援サービス

最後に、年末調整の電子化に対応するおすすめのサービスを3つ紹介しよう。

マネーフォワード クラウド年末調整
「マネーフォワード クラウド年末調整」は人気のクラウド会計システム「マネーフォワード」が提供する年末調整専用のサービスだ。対象者を自動で判別してくれるほか、必要な情報は本人が入力するため手間いらず。年末調整の自動計算ができ、法令改正時には自動でアップロードしてくれる。法人の場合、年額プランで月々2,980円から利用できる。
https://biz.moneyforward.com/tax-adjustment/

奉行Edge 年末調整申告書クラウド
「奉行Edge 年末調整申告書クラウド」は会計ソフトの老舗であるOBCが提供するサービスだ。年末調整業務の全てをデジタル化し、業務時間を8割削減できる点が大きなポイント。年間利用料は、従業員20名までの場合で8,000円となっている。7日間の無料お試しも可能だ。
https://www.obc.co.jp/bugyo-edge/adjustment

freee人事労務
「freee人事労務」は、入退社管理や労務管理、勤怠管理、給与計算、年末調整までカバーするサービス。年末調整でも自動計算される上、freeeの給与明細に自動で反映されるため、確認作業も大幅に短縮できるだろう。料金は、ベーシックプラン/年払いの場合で基本料金が月々3,980円、従業員1人あたり月500円となっている。無料お試しも可能だ。
https://www.freee.co.jp/hr/

まとめ

年末調整は控除される項目が多い上、法令改正も多く、アナログで対応するには担当者の負担は大きいだろう。ぜひこの記事を参考に、自社に合うシステムを見つけて電子化を進めよう。まずは無料お試しから始めてみてほしい。