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年末調整と確定申告の違いや納税に関する特例の知識と正しく遅滞なく納税を効率化するサービスを紹介

2022.11.03
オフィスのミカタ編集部

年末調整と確定申告は、どちらも所得税を計算し正しい納税額を確定させるための手続きだ。ただし、それぞれ手続きや対象者が異なるため、違いを押さえておくことが重要になる。この記事では年末調整と確定申告の違いから、申告手続きを効率化させるためのサービスについて紹介する。

年末調整とは従業員の納税を行う雇用主としての責任業務

年末調整とは、従業員の所得税額を計算し、源泉徴収額との過不足金額を確認して正しい所得税額を確定させる手続きのことである。会社員の場合は企業が代わりに納税する必要があるが、フリーランスや個人事業主は確定申告を行う必要があり、詳しくは後述する。

年末調整の方法と必要な書類
・扶養控除等(異動)申告書
対象者:給与所得者
対象者が扶養している親族などの情報を記入する書類。この書類によって扶養控除や障害者控除、寡婦控除などの控除が適用されるかどうかが確認できる。

・基礎控除申告書
対象者:合計所得金額が2,500万円以下の人
本人の収入金額及び所得金額を記載し、申告するための書類。16万円〜48万円の控除を受けることができる。

・配偶者控除等申告書
対象者:本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が133万円以下の人
配偶者の合計所得金額を記載して申告するための書類。対象者は1万円〜38万円の控除を受けることができる。

・所得金額調整控除申告書
対象者:合計所得金額が850万円以上で、下記3点のいずれかに該当する人
1:本人が特別障害者に該当する
2:23歳未満の扶養親族を有する
3:特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する

子供や特別障害者の扶養を行う経済的負担を軽減させるための控除で、具体的な控除額は次の式で計算される。「控除額=(給与等の収入額-850万円)×10%」

・保険料控除申告書
対象者:控除対象となる生命保険料や地震保険料を支払った人
控除対象となる生命保険料や地震保険料に支払った金額や会社名を記載する。また別途、控除証明書を添付する必要がある。

・住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)
対象者:住宅ローンを活用して住居の購入や改築をした人
「認定住宅の新築等から6か月以内に居住の用に供していること。」などのさまざまな条件を満たすことで、「住宅借⼊⾦等特別控除」もしくは「特定増改築等住宅借⼊⾦等特別控除」を受けることができる。1年目は確定申告で対応するが、2年目以降は年末調整で対応可能だ。

また、上記の他に年末調整に必要な情報を網羅した記事を以下に紹介する。参考にしてほしい。
年末調整に必要な書類一覧と電子化による効率的なファイリング方法、便利なサービスを紹介

年末調整の対象者と対象外となる条件分岐
基本的に年末調整は、企業に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員すべてが対象だ。社員だけでなくアルバイトやパートもこの書類を提出していれば対象となる。

年末調整の対象とならないケースには下記が挙げられる。
・その年の給与収入が2,000万円を超えている
・災害減免法で納税の猶予を受けている
・2カ所以上から給与を受け取っており、もう一方の勤務先に「扶養控除等(異動)申告書」を提出している
・年末調整までに「扶養控除等(異動)申告書」を提出していない

年度途中で年末調整の対象となる者への特別な対処

年末調整は一般的に12月末に行われるが、年度途中で年末調整の対象となるケースがある。

・死亡によって退職する場合
・海外に転勤したことにより非居住者となった人
・12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
・パートなどで働いている人が退職し、その年に受け取る給与が103万円以下の場合
・著しい心身の障害のために退職した人(再就職の見込みが無い場合)

個人事業主・フリーランスの納税額を確定させるための確定申告

確定申告とは、1年間の所得税を計算し税務署へ報告する手続きのことだ。年に1度行い、1月1日~12月31日の所得及び税額を計算し、翌年の2月16日~3月15日の間に納付する。

年間収入が20万円未満の場合は確定申告が不要
本業以外に副業を行っており、副業の年間収入が20万円未満の場合は確定申告が不要だ。ただし、事業をしている場合や医療控除を受ける場合は確定申告が必要になる。

個人事業主・フリーランスで確定申告の対象者になる条件
個人事業主・フリーランスの場合、1年間の合計所得が48万円以上となる際は確定申告の対象となる。ただし、個人事業主の場合は確定申告を行わないと年間収入を証明できないため、48万円未満でも行うと良いだろう。

確定申告を行った方が税法上節税につながるケース
確定申告が不要な場合でも所得税を余分に納めている可能性があるため、このようなケースでは確定申告を行った方が税法上節税につながるというメリットがある。

下記のいずれかに該当する場合、確定申告を行う。
・事業で赤字が出ている
・年末調整を受けず退職した
・医療費が10万円を超えている
・住宅ローンを組んだ

国税庁の「副業の税金」をめぐる法解釈の改正案による税額のゆくえ

2022年8月1日より、国税庁から「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」発表された。この改正案の重要なポイントは「副業が300万円以下の場合は雑所得とする。」という内容だ。今まで事業所得として申告していた副業収入を雑所得として申告する場合、さまざまな控除を受けられなくなり、結果として税負担が大きくなることが懸念されているため、知っておくと良いだろう。

年末調整と確定申告で活用可能な控除一覧

ここでは年末調整及び確定申告の際に活用できる控除について紹介する。

年末調整で受けられる控除
年末調整で受けられる控除は下記の11点だ。

・基礎控除
対象者:年間の合計所得金額が2,500万円以下の場合
合計所得金額に応じて基礎控除額は以下のように変動する。

2,400万円以下:48万円
2,400万円超2,450万円以下:32万円
2,450万円超2,500万円以下:16万円
2,500万円超:0円

・配偶者控除
対象者:納税者に年間48万円以下の所得金額の配偶者がいる場合
納税者は合計所得金額に応じて下記の控除を受けることができる。
900万円以下:38万円
900万円超950万円以下:26万円
950万円超1,000万円以下:13万円

・配偶者特別控除
対象者:合計所得金額が1,000万円以下の納税者に、年間48万円以上133万円以下の所得金額の配偶者がいる場合

納税者は1万円〜38万円の控除を受けることができる。ただし、この控除には満たすべき要件が複数あるため注意しよう。

・扶養控除
対象者:納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合
控除額は扶養親族の年齢や同居の有無によって変動し、次の通りである。

一般の控除対象扶養親族:38万円
特定扶養親族:63万円
老人扶養親族(同居老親等以外の者):48万円
老人扶養親族(同居老親等):58万円

・障害者控除
対象者:納税者、もしくは同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に該当する場合
障害者控除の対象となる人の範囲は全部で8つの要件があり、当てはまる要件によって控除される金額は異なる。
障害者 :27万円
特別障害者:40万円
同居特別障害者:75万円

・寡婦控除
対象者:納税者が寡婦であり、下記の条件を満たしている場合
1:夫と離婚・死別しており、その後再婚していない
2:扶養親族がいて、合計所得金額が500万円以下

寡婦控除では27万円の控除を受けることができる。

・ひとり親控除
対象者:その年の12月31日時点で結婚しておらず、下記3点の条件を満たしている場合
1:事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
2:生計を一にする子がいる
3:合計所得金額が500万円以下

ひとり親控除では35万円の控除を受けることができる。

・勤労学生控除
対象者:勤労学生が納税者かつ下記3点の条件を満たす場合
1:給与所得などの勤労による所得がある
2:合計所得金額が75万円以下で、かつ1の給与以外の所得が10万円以下
3:特定の学校の学生、生徒である

勤労学生控除では27万円の控除を受けることができる。

・生命保険料控除
対象者:生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合

控除金額は年間の支払保険料によって変動するため注意しよう。
20,000円以下:支払保険料等の全額
20,000円〜40,000円以下:支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円〜80,000円以下:支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円〜:一律40,000円

・地震保険料控除
対象者:地震保険料や損害保険契約等の保険料または掛金を支払った場合
年間の支払保険料の合計金額によって控除額は変動するが、最大5万円となっている。

・社会保険料控除
対象者:健康保険、国民年金、厚生年金保険などの社会保険料を支払った場合
納税者が生計を一にする配偶者や、その他の親族の負担すべき社会保険料を合算することも可能だ。

・小規模企業共済等掛金控除
対象者:小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合
小規模企業共済等掛金控除で控除できる掛金は下記の3種類だ。
1:小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
2:確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金
3:地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金

初年度は確定申告、2回目以降は年末調整となる住宅ローン控除
住宅ローン控除は初年度のみ確定申告で控除、2回目以降は年末調整で控除ができるので覚えておこう。

確定申告でのみ受けられる控除
年末調整では適用できず、確定申告でのみ受けられる控除は下記3点だ。

・医療費控除
対象者:その年の1月1日〜12月31日に支払った医療費が一定額を超える場合

納税者の妻や子供以外にも、別居していて仕送りをしている両親などの医療費も合算できることが特徴だ。

・寄附金控除
対象者:国や地方公共団体、公益社団(財団)法人などに一定額以上の寄付をした場合
対象の団体などに一定額以上を寄付した場合に受けられる控除で、控除額の計算は下記の通りである。

a.その年に支出した特定寄附金の額の合計額
b.その年の総所得金額等の40パーセント相当額

a. b. いずれかの低い金額-2000円=寄附金控除額

・雑損控除
対象者:災害・盗難もしくは横領によって、該当する資産に損害を受けた場合
地震や火災、害虫などの損害が原因の場合に適用される。

寄付金控除「ふるさと納税」には確定申告不要のワンストップ特例制度
ふるさと納税とは地方自治体への寄付金制度である。ふるさと納税にはワンストップ特例制度というものが設けられており、この制度を利用することでふるさと納税のためだけに確定申告を行わなくても寄附金控除を受けることが可能だ。ワンストップ特例制度を利用するには、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄付した自治体に送附するだけなので、条件に該当する場合は利用してみよう。

年末調整・確定申告手続きにも電子化の流れが到来

年末調整や確定申告の手続きに電子化の波が来ていることをご存知だろうか。ここでは電子化による具体的な業務の流れやメリットについて解説する。

電子化された年末調整・確定申告手続きの業務の流れ
年末調整の業務の流れは下記の通りだ。
1:納税者が控除証明書等を電子データで保存
2:納税者が「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」等を使用して、年末調整申告書の電子データを作成
3:納税者が作成したデータを勤務先に提出する
4:納税者の勤務先で使用している給与システムにデータをインポートして年税額を計算

ここでの確定申告の手続きについては、「e-Tax」を使用した場合の流れを紹介していく。
1:利用者識別番号を取得
2:電子証明書の取得
3:手続を行うソフト・コーナーを選ぶ
4:申告・申請データを作成・送信する
5:送信結果を確認する
参考:「e-Taxご利用の流れ」

電子化することによるメリットは申請の時短・データの保管・ミスの削減
電子化によるメリットとして、申請の時短・データの保管・ミスの削減の3点が挙げられる。手書き書類の手間が省きつつ、必要書類の一括取得、データの一元管理、記載ミスの削減など従業員、企業ともに電子化の恩恵を受けることができる。

従業員に周知すべき電子化に向けての事前準備
企業はスムーズに電子化へ移行するため、事前に従業員に対して下記の内容について周知しておくと良いだろう。
・従業員が使用するツールの手順
・マイナポータル連携による控除証明書等のデータの取得方法
・上記が行えない場合の対応方法

年末調整・確定申告にかかる会計作業が格段に効率化できるサービス

ここでは年末調整・確定申告に関する会計作業を効率化するためのサービスを3点紹介しよう。

マネーフォワード クラウド年末調整
「マネーフォワード クラウド年末調整」は、年末調整の書類配布から入力、回収、提出まで一貫してクラウド化できるサービス。書類作成はすべてウェブ上で完結できるため、回収までの手間を大幅に削減。その後の年税額の計算や行政機関への手続きも対応可能だ。

個人向け:年額プラン800円/月〜
法人向け(50名以下):年額プラン2,980円/月〜
法人向け(51名以上):要問い合わせ
https://biz.moneyforward.com/tax-adjustment/

SmartHR
「SmartHR」は、担当者も従業員も「わかりやすくて、使いやすい」UI・UX設計にこだわったサービスだ。従業員はPC・スマートフォンから最短3分で書類提出が可能、担当者はステータスや依頼状況を操作画面からひと目で分かるような工夫がされている。料金は要問い合わせ。初期導入費用もサポート費用も無料となっている。
https://smarthr.jp/

freee人事労務
「freee人事労務」は年末調整にかかる時間を、自動計算・クラウド管理・自動書類作成機能によって、大幅に削減できるサービス。従業員はステップに沿ってフォームに入力するだけで申請可能、担当者はウェブ上でステータスを一元管理できる。SlackやKING OF TIMEなど他社サービスとのデータ連携が可能なのもポイント。

ベーシック:3,980円 / 月
プロフェッショナル:8,080円 / 月
エンタープライズ:要問い合わせ
https://www.freee.co.jp/hr/

まとめ

年末調整と確定申告は正しい所得税を計算し、納税額を確定させる重要な手続きだ。年に一度必ず行う必要がある業務にもかかわらず、制度の改正などによって内容が複雑化してきているため、効率化のためにもサービスの導入を検討してみてほしい。