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評価の客観性が高まる360度評価とは。導入するまでのステップや効果的に行うためのポイントを紹介

2023.02.09
オフィスのミカタ編集部

人事評価に公平性を持たせることは非常に重要で、従業員が安心して働ける環境づくりの一助となる。本記事では、客観性を持った評価を可能にする360度評価について、導入方法や効果的な施策のポイントについて紹介していく。

公平性の担保によって納得感が得られる人事評価の360度評価

まずは360度評価の概要や導入が進んでいる背景について確認していこう。

360度評価の概要
上司から部下を評価する縦方向のみだった従来の評価方法を、上司、部下、同僚など多方面からの評価を取り入れることを360度評価という。

働き方の多様化が進むことで360度評価に注目が集まっている
上司からのみの一方的な評価による不公平感の是正という面もあるが、コロナ禍により多様な働き方が広がったことも注目される大きなきっかけとなっている。

テレワークなどの普及で、対面で仕事をする機会が減り、仕事の様子が見えない中での適切な評価は難しく、評価する側にとっては業務負担が重くなった。さらに評価される側にとっても評価基準がわかりにくいという面があった。360度評価によってさまざまな人が自分を見て評価しているという評価に対する信頼感を得られることから、導入する企業が増えている。

以下の記事では360度評価を含めた人事評価制度に関して網羅的に解説している。ぜひ参考にしてほしい。
人事評価制度のあり方。人事考課との違いや業績向上のための人事評価の進め方をわかりやすく解説

360度評価を導入するメリット

360度評価は多角的な評価をする目的以外にも活用されている。ここでは主な導入メリットについてみていこう。

複数の異なる立場の人から客観的な評価を行う
やはり、もっとも大きな効果といえるのは客観的な評価ができることだろう。部下一人ひとりを適正に評価するのは難しいため、360度評価によってさまざまな立場から見た従業員の業務姿勢などを客観的に評価するために活用される。

企業文化や価値観を浸透させる
評価者は自社の評価基準に則って評価をするため、期待される仕事への姿勢や業務遂行方法などは、どの方面からの評価でも基本的には一致することになる。それにより、期待される方法や発想の転換を被評価者に自然と促すことができ、自社の価値観や企業文化を浸透させることができる。

会社への帰属意識が高まる
多面的な評価をするためにはお互いを知る必要があるため、社内コミュニケーションが活発化する。それにより仲間意識・帰属意識が高まる。

評価対象者の成長を促す
異なる立場の人からの評価をフィードバックすることで、評価対象者は自身を客観的に見つめ直すことができる。強みや弱みを自覚し、更なる成長へと繋げるきっかけを作ることができる。

360度評価をこれから導入する場合のステップ

これから360度評価を導入しようという企業が、どのように導入まで進めていけばいいのかを紹介する。

360度評価を導入する目的や目標を具体化する
まずは同評価を導入する目的や導入による目標を具体化しよう。

もちろん目的や目標は1つでなくても問題ないが、ある程度方向性が定まっていないと、導入しただけで評価の効果が生かせない可能性がある。例えば、従業員全体のレベルアップなのか幹部候補の見極めなのかによっても制度設計が全く変わる。効果的に導入するための検討を進めてほしい。

評価を行うことを従業員に対して事前に周知する
上司による一方的な評価と違い、誰もが評価者となる360度評価。新しい評価方法となるため、従業員が不安に感じたり負担になったりしないよう事前に周知徹底する必要がある。具体的には、導入の目的や導入方法、導入による影響などを詳しく説明をしてほしい。

対象者(被評価者、評価者)決定する
360度調査は中間管理職に実施されることが多いが、役員に対して行われることもある。対象者の立場によって求められる役割や行動が異なるため、事前に絞り込んでおいてほしい。

導入目的や実施規模に応じた制度設計をする
最初に設定した目的や目標、対象者によって制度設計は変わる。目的という名のゴールに向かってどのように運営するのか、具体的な設問内容を取り入れながら設計してほしい。

フィードバックする方法や担当者を決定する
評価結果は人事部からフィードバックするのかコンサルティング会社などの外部組織に依頼するのか、事前に決めておきたい。対象者を中間管理職や役員とする場合、社内の人間からのフィードバックは難しいこともあるだろう。そういった場合に外部組織に委託するのも手だ。

360度評価を実施する際の注意点

360度評価を導入・実施する際にはどういった点に注意すればいいのか、下記で紹介する。

金銭的な評価に360度評価を反映させない
360度評価を給与や賞与などの金銭的な評価に反映させないことは非常に重要だ。金銭的な評価と直結してしまうと、評価対象者の生活を想像して評価が鈍ってしまう危険性がある。金銭評価には反映させないこと、また反映させない旨を周知するように心がけたい。

360度評価による評価内容はヒアリングによって補完する
360度評価は客観的な評価の方法ではあるが、評価対象者の意見も取り入れる必要がある。一方的な評価では、評価対象者にとっては今までの評価と大した違いがないと感じてしまう。評価対象者の意見も聞くことで評価を補完してほしい。

指揮命令系統に影響する可能性も踏まえて評価内容を検討する必要がある
360度評価が人気投票のようになってしまう事態は絶対に避けてほしい。部下からの評価を気にするあまり、指揮系統に影響が出てしまい、現場に混乱が生じる事態に陥る危険性がある。

部下から上司を評価する際の評価項目にはそういった人気投票のような結果を産まないような評価項目の設計を心がける必要がある。

360度評価を効果的に行うポイント

360度評価の注意点を踏まえながら、効果的に実施するためのポイントについてみていこう。

可能な限りすべての人を対象者として実施する
中間管理職を対象とすることが多いが、取締役などの役員も含めて可能な限り社内の人間全員を対象とするようにしたい。全員が評価対象者となることで、公平な評価を実施していると信頼度が増す。

フィードバックを適切に行う
評価内容は評価対象者にフィードバックするのが重要だ。評価をして終わりではなく、その評価を基にどう改善していけば成長につながるのかを考えてもらおう。評価内容や改善に向けたアドバイスなどを伝え、適切なフィードバックをしてほしい。

評価にバラツキが生じた場合、速やかに原因を特定する
評価内容にバラツキが生じた場合、その原因を探ることもおすすめする。評価のギャップには評価対象者の改善点や得手・不得手が隠れていることが多い。それらを見つけることで、今後の成長に生かしていく方向へと導いてほしい。

個人評価だけでなく組織課題も明らかにし、改善していく
個人評価だけでなく、部署ごとの組織評価などにも360度評価は活用できる。個人の問題だけでなく組織的な課題も明らかにし、業務改善を行うことでより風通しの良い組織へと成長できるだろう。

まとめ

360度評価は客観的な評価を得るために有効な手段だが、ただ行えばよいというものではない。制度設計や実施の周知、適切な運用、フィードバックがあって初めて効果を発揮する。自社の持つ課題解決や社内風土の改善に向けて、上手に活用してほしい。