jinjer、第二創業期に向けた経営戦略を発表 データの一元化とAI活用で人材の可能性を最大限に引き出す
HRテックを展開するjinjer株式会社(以下、jinjer)は、2025年9月10日、都内で記者向け事業戦略発表会を開催し、新経営体制および今後の事業戦略を発表した。jinjerは2025年5月に新たな経営陣が就任し、「第二創業期」と位置づけるフェーズに突入している。今回の発表では、人的資本経営の重要性が高まる社会的背景を踏まえ、jinjerが目指すHRテックの進化像と、AIを活用した人事業務の未来像が示された。
社会背景がHRテック市場を後押し
登壇した冨永健CEOは、まずHRテック(人事労務関連の業務をAI等の最新技術で効率化するツールの総称)市場をとりまく環境について語った。
HRテック市場の規模は1800億円にのぼり、年間30%程度のスピードで成長している。他の市場にはなかなか見られないスピードで成長している大きな理由として、冨永氏は労働人口の減少や価値観の多様化といった社会的変化を指摘した。
「少ない人数で多くの仕事をしなければならない中で、生産性が重要視されています。また価値観が多様化し、モチベーションが違う角度にある従業員を一つの方向にとりまとめる力、エンゲージメントの向上が急務になってきています」と冨永氏。企業が人的資本を戦略的に活用するためには、正確な人事データの蓄積と活用が不可欠だと強調した。
これらの課題を解決しようと動いている会社はたくさん見受けられる。しかし課題解決のためにさまざまなツールを導入した結果、勤怠・給与・評価・採用などの情報をそれぞれのツールでバラバラに管理するという事態になり、せっかくのデータを最大限に生かすことができていない。
jinjerが提供するクラウド型人事労務システム「ジンジャー」は、勤怠・人事労務・給与・評価・サーベイなどの情報を一元管理できる点が特徴。これにより、従業員の状態を俯瞰的に把握でき、業務効率化だけでなく、意思決定の質の向上にも寄与するという。
人事関連のデータを掛け合わせることで、例えば処遇が見合っていない人材を割り出せたり、高給でも残業が多くストレスがかかっている人材を見つけられたりする。迅速にケアできれば、離職リスクを下げられる。
冨永氏は「人事データが統合されているからこそ、見えてくる世界がある。全体像をつかむことで従業員の可能性を開花させていくことが可能になります」と語った。
jinjerの成長戦略
次に冨永氏は、今後の成長戦略について発表。統合型⼈事システムとしてのNo.1を⽬指すための主な施策として、UI/UXの再設計やAIの活用を通じた「プロダクト強化」、パートナーへの注力やユーザーコミュニティの発足で営業を強化する「エコシステム構築」、カスタマーサクセスや開発体制を強化する「組織体制の強化」の3つを掲げた。
また、AI実装で重視することとして、正確な元データの反映や多様な形式のデータを処理するマルチボーダル対応、いつでも現在の状況を確認できるリアルタイム性を挙げた。これらにより、「AI-Ready」な人事データベースであることを目指す。
こうしたAIの活用により、入社手続きの自動化や人員配置の最適化、従業員の傾向分析などが高精度化・スピード化するという。
ミッションに込めた思い──「人事を、もっと人間らしく。」
最後に冨永氏は、2025年に新しく策定したjinjerの企業ミッションを提示。目指したい未来として「『ひと』の可能性の全てが見える世界へ」、存在意義として「人事の『これからの当たり前』をつくり、お客様と共に進化する」を紹介した。
これらのミッション、ビジョンは、500人の従業員の中から有志が集まり、数チームを作成したうえでたくさんの議論を経て完成したものとのこと。冨永氏は、「従業員の想いが詰まっているといっても過言ではなく、かなり大切にしています」と語った。
「ミッションにある『これからの当たり前』は、統合された一つのデータを活用し、AIが人間では見つけられないような組織の微妙な変化を検知してアドバイスしてくれる世界。もちろんそれだけではありませんが、そんな我々の決意がここに込められています」
「『これからの当たり前』をつくる」というミッションは、テクノロジーの進化を最大限に生かし、人材の可能性も最大限に引き出す未来を宣言するもの。第二創業期を迎えた同社の挑戦は、HR領域に新たなスタンダードをもたらす一歩となりそうだ。









