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「働き方改革・長時間労働の是正」のひずみが明らかに。長時間労働の是正、現場の悩みとは。

2019.05.28

 人事評価クラウドで中小企業の働き方改革を補助する株式会社あしたのチーム(本社:東京都中央区)は、中小企業の経営者と管理職を対象に、働き方改革と人事評価に関するインターネット調査を実施した。
 
 その結果、働き方改革関連法が施行された4月時点で、労働時間適正化がすすんでいない企業の割合は約7割であること、労働時間適正化を進める中、部下の仕事の引き取りなど管理職の負担が増えていることが明らかになった。

■残業の多い社員の月平均残業時間

■残業の多い社員の月平均残業時間

 2019年4月に施行された働き方改革関連法は時間外労働の上限を「月45時間かつ年360時間」と定めている。

 残業時間の多い社員の1か月の残業時間を聞いたところ、「月45時間かつ年360時間」の上限を超えるおそれのある企業は「月20時間以上~45時間未満」33.3%、「月45時間以上~80時間未満」21.8%、「月80時間以上」10.3%と、65.4%にのぼることがわかった。

■労働時間の適正化(長時間労働の是正)への取り組み実態

■労働時間の適正化(長時間労働の是正)への取り組み実態

 前問で残業の多い社員の残業時間を「月20時間以上~45時間未満」、「月45時間以上~80時間未満」、「月80時間以上」と回答した企業の経営者・管理職に対し、労働時間の適正化(長時間労働の是正)に向けた取り組みを実施しているか聞いたところ、「実施し、適正化がすすんでいる」30.3%、「実施しているが、適正化はすすんでいない」43.7%、「実施していない」26.1%となった。
 
 7割以上が労働時間の適正化(長時間労働の是正)の施策を実施しているが、「実施していない」も含め、労働時間適正化がすすんでいない企業も7割近くであることがわかった。

■労働時間の適正化(長労働時間の是正)を進めようとした結果起こったこと

■労働時間の適正化(長労働時間の是正)を進めようとした結果起こったこと

 労働時間の適正化(長時間労働の是正)のための施策を実施していると回答した方に対し、労働時間の適正化(長時間労働の是正)を進めようとする中で、会社で起こったことを聞いた。

 1位「管理職が部下の仕事を引き取ることが増えた」28.5%、2位「他の人に仕事を頼みづらくなった」28.0%となり、部下を早く帰らせるために管理職が部下の仕事を引き取るケースが増えているようだ。

 管理職で回答割合が最も多かったのは「他の人に仕事を頼みづらくなった」30.7%となった。全社に残業や長時間労働をしないようにと言っている手前、仕事を頼みづらいと感じているのだろうか。労働時間適正化を進める裏側で、管理職の抱える業務が増えていることが考えられる。

 経営者と管理職で回答割合に差があった項目を見ると、「打刻した後に業務をすることが発生した」は経営者で7.5%、管理職では19.0%となった。出退勤記録では残業や長時間労働をしていないように見えても、現場では打刻後に業務をする“隠れ残業”が発生している実態がうかがえる。

 また経営者の22.5%が「売上が減少した」と回答した。これまで長時間労働によって支えられてきた売上が下がっていると考えられる。これまでの仕事のやり方を見直し、工夫しなければ、労働時間の適正化が達成できても、会社全体の売上、業績は落ちると予想される。

■有休取得義務化で自社に起こり得ると考えられること

■有休取得義務化で自社に起こり得ると考えられること

 有給休暇の取得義務化後、経営者は自社では「きっちりと消化する」47.0%が最多となったが、管理職は「いままであった夏休みや年末年始休暇が有休にかわる」25.7%、「有休を申請しながらも出社しなければいけなくなる」22.7%の回答割合が経営者と比べて多くなった。

 管理職は制度だけ整えても実際には休めないと感じているのかもしれない。

■自社の労働生産性は高いと思うか

■自社の労働生産性は高いと思うか

 労働時間の適正化(長時間労働の是正)や有給休暇取得などの働き方改革を推進する中で焦点となる労働生産性について、自社の労働生産性は高いと思うか聞いたところ、「そう思う」の回答割合は経営者62.0%、管理職43.4%となった。
 
 経営者と管理職では自社の労働生産性についての認識に差があり、現場をマネジメントする管理職で労働生産性が高いと思う方は半数以下であることが明らかになった。

■労働生産性を高めるために重要だと思うこと

■労働生産性を高めるために重要だと思うこと

 労働生産性を今より高めるために重要だと思うことを聞いたところ、1位「人材育成(部下・管理職の育成)」58.3%、2位「社員のモチベーション・エンゲージメント(自発的な貢献意欲)の向上」47.0%、3位「労働生産性の高い人が評価される制度・仕組み」31.8%となった。

 経営者・管理職ともに既存社員の育成が労働生産性向上には不可欠と考え、社員に対しては自発的な貢献意欲の向上を求めていることが明らかとなった。また、生産性の高さが評価に連動する制度も必須と言えそうだ。

■社員のモチベ―ション・エンゲージメント向上のために必要だと思うこと

■社員のモチベ―ション・エンゲージメント向上のために必要だと思うこと

 社員のモチベーション・エンゲージメント向上に必要だと思うことを聞いた結果、1位は「評価と報酬(給与・賞与など)が連動した適正な人事評価制度」55.8%となった。2位「評価と関係のない給与の一律アップ」は32.0%と、給与に関する項目間で20ポイント以上の差があった。

 経営者・管理職ともに、評価と報酬の連動により社員のモチベーション・エンゲージメントを高めることができると考える方が多いことがわかった。

■まとめ

 労働時間の適正化が達成できても、仕事のやり方を見直すなど対策を取らなければ、会社全体の売上、業績は落ちると予想されているようだ。また、管理職は制度だけを整えても、実際には休むことが出来ない過酷な現状のようだ。

 実際に社員の声を聞くなど、数字だけではわからない部分に焦点をあて、自社にとって最適な働き方改革は何かを今一度考える必要があるだろう。