勤め先で「36協定」が締結されている割合は59%。日本労働組合総連合会「36協定」実態調査
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区)は、36協定の実態を把握するため、「36協定」に関する調査を2019年4月11日~4月15日の5日間でインターネットリサーチにより実施した。
■「36協定」とは?
36協定は、労働基準法第36条が根拠になっており、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」という。
労働基準法第36条には、「労働者は法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合には、あらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならない」と定められている。
会社が法定労働時間以上の残業や、法定休日出勤を従業員に課す場合、「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、「36協定届」を労働基準監督署に届け出ることになっている。
■労働環境の実態~労働組合はあるか?~
2019年4月より、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が順次施行されている。また、働き方改革の一環として、多くの事業所で長時間労働の是正が進められているが、労働環境の実態はどのようになっているのか。
正社員・正職員、契約・嘱託・派遣社員の人(658名)に、勤め先に労働組合があるか聞いたところ、「労働組合があり、加入している」(28.9%)、「労働組合があるが、加入していない」(6.4%)、「労働組合があるが、加入する権利がない」(5.2%)を合計した『労働組合がある(計)』は40.4%となった。
一方、「労働組合はないが、社員会のような従業員組織はある」(8.8%)、「労働組合も従業員組織もない」(32.5%)を合計した『労働組合はない(計)』は41.3%、「労働組合があるかどうかわからない」は18.2%となった。
■「36協定」の認知度は、労働組合がある人の方が高い!
会社が残業を命じるには、労働者の過半数を組織する労働組合(ない場合は、労働者の過半数を代表する者)との間で労使協定(いわゆる36協定)を結んでおくことが必要であることを知っているか聞いたところ、「知っている」は55.3%となった。
「知っている」の割合(認知率)を男女別にみると、男性は61.4%で、女性(46.2%)と比べて15.2ポイント高くなった。
また、労働組合の有無別にみると、勤め先に労働組合がある人では74.8%、ない人では50.7%、あるかどうかわからない人では22.5%となった。
勤め先に労働組合がある人の認知率が高い傾向がみられた。
■労働組合の有無によって、締結率に大きな差がある
自身の勤め先で36協定が締結されているか聞いたところ、「締結されている」が59.1%、「締結されていない」が10.8%となった。また、「締結されているかどうかわからない」(30.1%)が3割と、36協定の情報が共有されていないケースが少なくないようだ。
「締結されている」の割合(締結率)を労働組合の有無別にみると、勤め先に労働組合がある人では82.0%と8割を超えた。一方、ない人では48.9%、あるかどうかわからない人では31.7%となった。
労働組合の有無によって、締結率に大きな差があることが明らかになった。
■36協定の周知方法は「イントラネットで閲覧」が最多
勤め先が36協定を締結している人(389名)に、勤め先で36協定がどのような方法で周知されているか聞いたところ、「イントラネットで閲覧できるようになっている」(31.9%)が最多、次いで「社内に掲示されている」(29.0%)、「担当部署(総務課など)に行けば閲覧できる」(21.3%)となった。反面、「わからない」(18.5%)や「周知されていない」(16.2%)との回答もみられた。
36協定は労働者に周知しなければならないと定められているが、周知が十分に行われていないケースがあるようだ。
■36協定の内容が労働者に伝わっていない!?
勤め先が36協定を締結している人(389名)に、36協定で残業時間が1ヶ月あたり何時間とされているか聞いたところ、「45時間未満」(48.8%)が約半数となった。次いで「45~60時間未満」(18.5%)、「60~80時間未満」(8.0%)、「80~100時間未満」(2.8%)、「100時間以上」(1.3%)となっている。
時間外労働の上限は1ヶ月あたり45時間と定められている。また、2019年4月より、36協定で定める時間外労働時間に罰則付きの上限が設けられた。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合も、時間外労働の上限は複数月平均80時間以内、1ヶ月あたり100時間未満(休日労働を含む)とされている(月45時間を超えることができるのは年間6ヶ月まで)。
また、「36協定を締結しているが内容は知らない」(20.6%)が5人に1人の割合となった。
周知が不十分であるため、36協定の内容が労働者に伝わっていないケースが少なくないようだ。
■会社との間で36協定を締結した当事者 最多は「労働組合」
誰が36協定を使用者(会社)との間で締結したか聞いたところ、「(労働者の)過半数で組織されている労働組合」が37.5%、「労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)」が29.0%、「わからない」が33.4%となった。
■過半数代表者の選出方法 適切な方法である「挙手または投票」は28%
労働者側の協定締結当事者が過半数代表者であると回答した人(113名)に、勤め先で過半数代表者をどのように選出しているか聞いたところ、適切な選出方法である「挙手または投票により選出している」は28.3%となった。
一方、「会社からの指名により選出している」は28.3%、「一定の役職者が自動的に就任している」は17.7%、「社員会・親睦会などの代表が自動的に就任している」は9.7%となった。
過半数代表者は、管理監督者を除く労働者のなかから、投票や挙手などの方法によって民主的に選ぶ必要があり、不適切な方法による選出は法的に無効となる。過半数代表者の選出方法に問題がある事業所が多いようだ。
■まとめ
労使協定(いわゆる36協定)について「知っている」人は5割程度と、認知度が高いと言えないことがわかった。
社員自身が自分の労働環境について確認することはもちろん必要だ。その上で、企業側からも社員に対して、働く上で関係のある知識を周知していく機会を設ける必要があるといえる。働き方改革を推進していく上でも、企業と社員との認識の齟齬がないようにしていかなくてはいけないだろう。