1億総活躍社会の実現へ。企業のシニア雇用の現状と悩み
ディップ株式会社(本社:東京都港区)のディップ総合研究所は、「シニア雇用企業の人事」と「シニアとの就業経験のある従業員」それぞれに、シニアの就業で困る点を聞いた。また、「シニアと就業経験のない従業員」にシニアと就業したら困りそうなイメージがあることは何かを調査した。
■ 企業のシニア雇用の現状
シニアの雇用を進めている企業が、全体の約8割に上るものの、積極的な雇用ではないと回答した企業が半数以上を占めた。
■シニアの業務上、職場上における良い面(もしくは良いイメージ)
「経験やスキルを活かした多業務/専門業務への対応」「定着率がいい」といった項目では、「シニア雇用企業」が高く評価。
「シニアとの就業経験のある人」は、「何かあった時に頼りになる・安心感がある」が42.0%で高評価となった。
■シニアの業務上、職場上における困る面(もしくは困りそうなイメージ)
「健康状態・体力が不安」という回答が全体を通して1位となった。シニアを雇用するうえでは、健康状態や持病の把握、体力に合わせた仕事内容・勤務形態をシニアと相談するなどの配慮が必要かもしれない。
■先入観へのフォローが必要不可欠
「仕事の物覚え」「仕事を教える際に気を遣う」といった項目では、「人事」からの回答や「就業経験のある従業員」の回答と比べ、「シニアと就業経験のない従業員」の回答が10%以上大きくなり、シニアと就業したことのない人の方がシニアに対してマイナスなイメージを強く持っていることがわかる。
これから新たにシニアの雇用を進める企業は、こういった先入観へのフォローが必要のようだ。
■シニアが苦労していること
60歳以上のシニアへの調査では、新しい仕事を覚える際「覚えることが多すぎる」「仕事を教えてほしいときに聞ける人がいない」と感じて苦労しているシニアが一定数いることがわかる。
一度に教えすぎないようにする、質問がしやすい環境を作るため人材配置を工夫する、といった基本的なケアが重要そうだ。
「指導時に気を遣う」という点に関してシニアからは、「同僚や上司から必要以上に気を遣われる」という声が聞かれる。
シニアとの円滑なコミュニケーションのためには、シニアに敬意を払いながらも、必要以上の気を遣わず友好的に接することが大切かもしれない。
■シニア雇用企業の人事のポイント
「シニア雇用企業の人事」はシニアの持っているスキルを良い面として捉えている。また、「シニアとの就業経験がある従業員」はシニアの「頼りになる・安心感がある」という雰囲気をよい面として捉えているようだ。
シニア雇用を進めることで、業務効率の改善や従業員へ心理的に良い影響を与えられる点でメリットがありそうだ。
一方で、新しい業務やスキルなどの習得に困難を感じている企業が多く、シニア層を雇用するうえで注意すべきポイントも見えてきた。
■まとめ
少子高齢化社会による人口減少が、日本の企業の人手不足に深刻な影響を及ぼしている。
人手不足解消につなげるためにも、体力や健康状態、新しい仕事を覚えることが困難などの問題を解決する方法を模索しながら、高齢者雇用を推進していく必要がありそうだ。