オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

育児期に離職した正社員女性の約6割が、実は出産後も働き続けたかった。離職とワークライフの関連性とは

2019.06.20

 総合人材サービス、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームである株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港)は、正社員のワーキングマザーが活躍できるよう企業が何をすべきか、データをもとに解決策を提示することを目的に、調査を実施した。

 今回の調査により、育児期に離職した多くの正社員女性が、出産後も働き続けたいと思っていたことが明らかとなった。

■出産後の就業継続の意向

■出産後の就業継続の意向

 出産前の思いを振り返ってもらうと、育児期に離職した正社員女性の約6割が、出産後も働き続けたいと思っていたことが明らかとなった。

 出産を機に辞めたいと思っていた専業主婦志向は2割のみという結果だ。

 こうした意向を踏まえると、企業の対応次第で女性の就業継続率をさらに高められると考えられる。

 ※出産前を振り返ってもらい、「できれば出産を機に退職し、その後は仕事を持ちたくなかった」かを尋ねたところ、①そう思う=6%、②ややそう思う=14%、③どちらともいえない=20.7%、④あまりそう思わない=29.3%、⑤そう思わない=30%だった。
 円グラフの「出産後も働き続けたかった」は④⑤の回答の合計。「辞めたかった(専業主婦志向)」は①②の合計。

■離職した後の就業状況

■離職した後の就業状況

 正社員を辞めた後の状況をみると、小学生以下の子どもを持つ人の47%がアルバイト・パートとして働いている。

 企業が柔軟な働き方を認めることで、辞めずに就業継続していた可能性がある。

■辞めたときの子どもの年齢に応じて離職した理由が変化

■辞めたときの子どもの年齢に応じて離職した理由が変化

 正社員を辞めた理由をみると、辞めたときの子どもの年齢に応じて特徴がみられる。

​​ ・子どもが3歳未満だったときの離職では、家族・親族の家事育児サポートが不十分とする割合が高い。3歳未満の子どもを持つ女性に対して夫の家事育児時間を聞くと、就業継続できている女性の場合で2時間10分、正社員を辞めてしまった女性の場合で1時間16分(離職時)と差が生じている。

 夫が家事育児に時間を割けるように、企業側は男女ともに一時的に年収を下げて負荷を減らしてもキャリアコースを歩むことができるなど、共働き夫婦が共同で家事育児を担うことを念頭においた選択肢を用意することが望ましい。

・子どもが3~6歳(未就学児)だったときの離職では、職場での居場所感のなさ(職場の理解不足や迷惑をかけているので肩身が狭いなど)を理由とする割合が高い。

 企業としては、仕事と家庭の両立に対する上司や同僚の理解を促進する必要がある。また、企業は不可欠な人材としての役割をワーキングマザーに与え、その働きぶりを評価することで、「自分は職場で役に立っている、居場所がある」と感じられるように心掛けるべきである。

 ​​・子どもが小学生だったときの離職では、子どもへのケア(精神的なケアや教育など)を理由とする割合が高い。

 企業としては、子どもがある程度成長してもケアのための時間がかかることを理解すべきである。そのうえで、ワーキングマザーそれぞれの事情に応じて対応することが望ましい(セーフティネットとして、小学生以上でも短時間勤務できる選択肢を用意するなど)。

■ワークライフバランスと離職の関係

■ワークライフバランスと離職の関係

 「子どもがいて正社員として働き続けている女性」で、ワークライフバランスがとれていると回答したのは49.7%。 

 一方、「子どもがいて正社員を辞めた女性」で、離職した職場でワークライフバランスがとれていたと回答したのは26.7%(図表4)。

 23.0ポイントの差があり、ワークライフバランスは就業継続に影響する(図表5)。

 ワークライフバランスには「仕事と家庭の両立に対する理解」「適切な仕事量」「裁量性」が影響(図表6)しており、企業はこれらに配慮すべきである。

■仕事量と離職

■仕事量と離職

 ワークライフバランスがとれていないワーキングマザーの約5割が、上司に仕事量を調整して欲しいとの希望を伝えていない(図表7)。

 仕事を抱え込み、相談せずに辞めてしまう可能性がある。上司が適切なコミュニケーションがとれるような関係性を築き、個々の状況にあわせて仕事量を調整していくことが望まれる。

■調査概要

■調査概要

・調査手法:調査モニターを対象としたインターネット定量調査

・調査期間:2019年1月9日-1月17日

・調査対象:
〇子あり・正社員女性
第1子が小学生以下である20 ~59歳正社員女性。第1子妊娠中に正社員であり産後に復帰した人。

〇子あり・正社員を辞めた女性
第1子が小学生以下である20 ~59歳の元正社員女性。第1子妊娠中に正社員であり産後復帰したが正社員を辞めた人。

〇子あり・正社員女性の配偶者(子あり・正社員男性)
第1子が小学生以下である20 ~59歳正社員男性。妻が第1子妊娠中に正社員であり産後復帰して現在も正社員である人。

〇子あり・正社員を辞めた女性の配偶者(子あり・正社員男性)
第1子が小学生以下である20 ~59歳正社員男性。妻が第1子妊娠中に正社員であり産後復帰したが正社員を辞めた人。

〇上司
係長・主任相当以上で、自分がマネジメントをしている正社員女性部下に小学生以下の子どもがいる20 ~59歳正社員。

〇同僚
所属している部署の小学生以下の子どもがいる正社員女性と業務上のかかわりがある20 ~59歳一般社員(正社員)。

・有効回収数:2100名

・実施主体:株式会社 パーソル総合研究所

■まとめ

 今回の調査により、育児期に離職した正社員女性の約6割が「出産後も働き続けたい」と思っていたものの、上司に仕事量の相談ができず辞めざるを得ない状況に陥っていたことが判明した。

 優秀な女性社員の離職を避けるためにも、女性が働き続けられる環境づくりや、福利厚生が整った職場環境を作っていく必要があるだろう。