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転職者の9割が「働きながら学ぶこと」を志向。社員の学び支援と中途採用状況調査

2019.06.24

 株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区)は、中途採用を実施する企業の人事担当者へ3月下旬にアンケート調査を行い、830人から回答を得た「社員の学び支援と中途採用状況」について結果をまとめ、公開した。

 3月末時点で中途内定者数が計画を下回る企業は4割にのぼることがわかり、人材獲得競争は厳しさを増しているようだ。転職先が確定した求職者の9割が「働きながら学ぶこと」を志向している現状に対し、企業が自社の社員の学びを支援することが、採用力の向上につながるかを考察した。

■本調査における「学ぶ対象」の定義

 人生100年時代においてリカレント教育(社会人の学び直し)が注目を集め、個人が学び続ける重要性が高まっている。

 こうした気運を背景に、学ぶ対象を「直近(6ヶ月程度)の職務上必要とされるものではない新たな知識・スキル」と定義したうえで、アンケートを行った。

■9割の企業が「社員個人の学びは自社にとってプラスだと考える」と回答

■9割の企業が「社員個人の学びは自社にとってプラスだと考える」と回答

 自社の社員が「直近(6ヶ月程度)の職務上必要とされるものではない新たな知識・スキル」を学ぶことに対して、企業はどのように考えているのだろうか。

 自社にとってプラスだと考える企業は93.3%であった。その理由を質問すると、最も多いのは「広い知見・視野を持つ社員の増加(75.7%)」で、次いで「新たな発想への期待(62.0%)」となり、自社の未来に向けた期待が多い結果となった。

 加えて、社員自らが学びたいものを学ぶことに対し「社員自身のモチベーション維持・向上(51.3%)」を期待する声も半数以上見られた。

■8割の企業が社員の「リカレント教育」に対して何かしらの支援を実施

■8割の企業が社員の「リカレント教育」に対して何かしらの支援を実施

 プラスに考える企業が多い中で、社員に対する支援の状況はどうなっているかを見てみた。すると、何かしらの支援を行っている企業は84.2%と、多くの企業が支援を行う一方、支援を行っていない企業も15.8%あった。 
 支援を行っている企業の実施内容は、「職場の理解促進(50.7%)」「学習費用の支援(46.3%)」が多く、学び支援を目的とした「副業の容認」は12.5%に留まる結果となった。

■支援実施状況で中途内定者の充足に差が

■支援実施状況で中途内定者の充足に差が

 企業が社員個人の学びに期待するのと同時に、転職先が確定した求職者の9割は、働きながら学ぶことを望んでいる。では、企業が社員の学びを支援する取組みは、企業の採用状況にプラスに働くのだろうか。

 2018年度下半期の中途内定者数の充足状況と、支援の実施状況の関係を見たところ、何かしら支援を行っている企業の内定者数が充足している割合は60.2%であるのに対し、行っていない企業の充足している割合は45.8%であった。支援の実施有無で14.4ポイントと大きな差が開く結果となった。

 求職者が転職先に魅力を感じる要素は多岐に渡るが、社員の学びを支援するという人事施策が、採用力向上にも繋がる可能性が見てとれた。

■求職者が望む支援と、企業の実施内容にかい離

■求職者が望む支援と、企業の実施内容にかい離

 どのような支援を実施、または、採用活動でアピールできるとよいかを探るべく、転職先が確定した求職者が就業先に望む支援と、企業の実施する支援内容を比較した。

 求職者が最も望む支援は「学習機会の提供(58.0%)」であったのに対し、企業で最も行われている支援は「職場の理解促進(50.7%)」となり、個人と企業でギャップが見られた。

 また、「学習機会の提供」は58.0%の求職者が望むのに対し、実施している企業は37.6%。その差は20.4ポイントと、大きなかい離があることが分かった。

■「学習機会の提供」を実施する企業は半数に満たない

■「学習機会の提供」を実施する企業は半数に満たない

 求職者が最も望む「学習機会の提供」の実施率を属性ごとに見ると、業界別では「金融・商社(49.4%)」が多く、従業員規模別では300人以上の企業が4割以上実施と、比較的高い傾向にあった。しかし、どの属性で見ても実施は半数に満たない状況であることも判明した。

 例えば、従業員規模が5000人以上の企業でも、実施率は43.8%。300~999人の企業の実施率(41.0%)とはわずか2.8ポイントの差。このことは、現時点では多くの企業にとって開発の余地がある領域であり、取組みの有無が今後の人材獲得競争における採用力の差となることが考えられる。

■株式会社リクルートキャリア HR統括編集長/藤井 薫(ふじい かおる)

<企業の採用力の源泉は、「終身雇用」から「終身成長」へ>

 「広い知見・視野、新たな発想、モチベーションの維持・向上」を期待し、社員の学びは自社にとってプラスと思う(9割)。調査結果からは社員の学びを積極支援する多くの企業の姿が見えてきました。

 注目すべきは、学習支援を行っている企業と行っていない企業では、採用状況に大きな差(14.4pt差)が見られたことです。これは、激化する人材獲得競争の中で、企業が何を訴求すべきかの大きなヒントになるのではないでしょうか?

 人が組織に惹きつけられる要因は4Pに大別されると言われます。1:Philosophy(目標の魅力:ビジョン・戦略)、2:Profession(活動の魅力:事業・仕事)、3:People(構成員の魅力 :風土・人間関係)、4:Privilege(待遇の魅力:待遇・環境)。

 今回の調査は、Privilege(待遇への魅力)の一つである「学習・成長機会の充実」が、採用活動上の大きなアピールポイントになることを証しています。

 人生100年時代で中長期のキャリアデザインが重視される時代。入社後活躍だけでなく、卒業後活躍まで見つめた学習機会を提供できるか?企業の採用力の源泉は「終身雇用」から「終身成長」へシフトしつつあります。

■調査概要

・実施期間|2019年3月19日(火)~2019年3月25日(月)

・調査対象|中途採用実施企業の人事担当者

・回答数 |830人

・調査方式|インターネット調査(調査協力:株式会社マクロミル)

■調査結果の注意点

 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の合計値が100%に一致しない場合がある。

 差分の算出には小数点第2位を四捨五入する以前の数値を用い、表示されている%で差分を算出した際と数値が一致しない場合がある。

■まとめ

 転職先が確定した求職者の9割が「働きながら学ぶこと」を望み、9割の企業が「社員のリカレント教育は、自社にとってプラス」だと考えていることがわかった。

 しかし、実際に「学習機会の提供」を実施している企業は半数にも満たないことが判明した。

 このかい離を埋めるために企業が具体的な対策を検討することが、「優秀な人材」の確保や社員のモチベーションの向上に繋がるのではないだろうか。

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