中途社員、定着率向上のカギは上司との関係性にあり。理想的なコミュニケーションの頻度とは?
昨今の求人意欲の高まりや働き方改革の機運の高まりを受け、企業の採用をはじめ、人事部の活動はますます重要になってきている。
そうした状況を受け、中途入社者が入社後に高い成果を出したり、⾧く働き続けたいと思うようになるにはどのような人事施策が有効なのか。株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区)は、従業員300名以上の企業に中途入社して5年未満の人を対象にアンケート調査を行った。
■上司との雑談で、「離職意向なし」が高く
上記のような図は「決定木」と呼ばれる分類手法。決定木は条件分岐によって分割して分類する手法となる。その際にグループがなるべく同じような属性で構成されるように分割。同じような属性とは、分割後のグループの不純度が一番小さくなるような基準を選んで分割することを指す。上記に出てきていない質問項目は、分類において不要、関係しない要素ということを示している。
離職意向(現在、今の会社を3か月以内に辞めたいと思っていますか。)について、回答が「全くそう思わない」または「どちらかといえばそう思わない」であれば「1」、「どちらかといえばそう思う」または「非常にそう思う」であれば「0」とした決定木。
▼分類に用いた質問項目は以下の通り
・Q14:上司との月あたり合計会話時間
・Q15:上司との会話内容別の月あたり会話時間
(Q15_1:業務報告・指示・進捗確認
Q15_2:会社や組織の方針の意義/自分の役割・目標の意義
Q15_3:自分の過去/現在/未来のキャリア/仕事に関する対話/フィードバック/アドバイス
Q15_4:人事考課・査定
Q15_5:雑談
Q15_6:上記以外の会話)
・Q16:上司との会話の頻度
・Q17:上司との会話手段別の月あたり会話時間
(Q17_1:対面
Q17_2:テレビ会議/Web会議
Q17_3:電話
Q17_4:チャット)
離職意向に最も影響ある要素は、短時間でも上司と雑談していることだということがわかる。
■「会社や組織の方針の意義/自分の役割・ 目標の意義」について話している人はよりパフォーマンスを発揮
パフォーマンス(現在、周りと比べて、高い評価を受けている方だと思いますか。)について、回答が「非常にそう思う」または「どちらかといえばそう思う」であれば「1」、「どちらかといえばそう思わない」または「全くそう思わない」であれば「0」とした決定木。
▼分類に用いた質問項目は以下の通り
・Q14:上司との月あたり合計会話時間
・Q15:上司との会話内容別の月あたり会話時間
(Q15_1:業務報告・指示・進捗確認
Q15_2:会社や組織の方針の意義/自分の役割・目標の意義
Q15_3:自分の過去/現在/未来のキャリア/仕事に関する対話/フィードバック/アドバイス
Q15_4:人事考課・査定
Q15_5:雑談
Q15_6:上記以外の会話)
・Q16:上司との会話の頻度
・Q17:上司との会話手段別の月あたり会話時間
(Q17_1:対面
Q17_2:テレビ会議/Web会議
Q17_3:電話
Q17_4:チャット)
パフォーマンスに最も影響ある要素は、短時間でも上司と「会社や組織の方針の意義/自分の役割・目標の意義」についての会話を行っていることとなった。
また、少なくとも1ヶ月に1回程度以上の頻度で上司と会話していること、1ヶ月あたり「61分以上」上司と会話していることが重要のようだ。
■パフォーマンス発揮者の方が会話の頻度が高い結果に
パフォーマンス(現在、周りと比べて、高い評価を受けている方だと思いますか。)について、回答が「非常にそう思う」 または「どちらかといえばそう思う」であれば「パフォーマンス発揮者」、「どちらかといえばそう思わない」または「全くそう思わない」であれば「パフォーマンス不十分者」に分類。
パフォーマンス発揮者の方が会話の頻度が高い結果となった。パフォーマンス発揮者の約2/3は1日に1回以上の頻度で会話を行っている。
■上司とのコミュニケーションの量・内容・頻度が重要
「上司とのコミュニケーション」について、その量・内容・頻度・手段について比較したところ、以下のようなコミュニケーションを行っている人の方が、離職意向が低い人が多く、かつパフォーマンスを発揮している人が多い傾向が見られた。
① 短時間でも、雑談と会社や組織の方針の意義/自分の役割・目標の意義に関する会話をしている
② 1日に1回以上会話している
③ 1ヶ月あたり61分以上会話している
*理想的なコミュニケーションとは前出の調査結果より、中途入社者と上司との間のコミュニケーションが以下のすべてを満たしていると定義
• 上司との「雑談時間」が1ヶ月あたり0分より多い
• 上司との「会社や組織の方針の意義/自分の役割・目標の意義に関する会話時間」が1ヶ月あたり0分より多い
• 上司との「会話の頻度」が1日に1回以上
• 上司との「会話時間」が1ヶ月あたり61分以上
**離職意向(現在、今の会社を3か月以内に辞めたいと思っていますか。)について、回答が「全くそう思わない」または「どちらかといえばそう思わない」であれば「離職意向なし」に分類
***パフォーマンス(現在、周りと比べて、高い評価を受けている方だと思いますか。)について、回答が「非常にそう思う」または「どちらかといえばそう思う」であれば「パフォーマンス発揮者」に分類
■コミュニケーションは「頻繁に」することが重要
株式会社リクルートキャリア事業開発室インキュベーション部リファラルグループマネジャーである髙森純氏は、
「多忙で中途入社者に声をかける暇もない上司と、そんな上司に話かけるのをためらう中途入社者。お互いもっと会話が必要だと分かっていてもなかなか時間をとれない現実が存在する。
今回の第3弾報告では、1日に1回は短時間でも雑談する、そして1ヶ月に1回はまとまった時間をとって仕事の意義を含めた対話を行うといった、シンプルだがパワフルな行動指針を導き出すことができた。
もちろんこのようにコミュニケーションをしていれば中途入社者の離職意向が必ず低減する、パフォーマンスが必ず向上するというものではないが、コミュニケーションに悩む中途入社者と上司にとっては一つの目安になるのではないか。」と分析している。
また、学習院大学経済学部経営学科教授副学⾧である守島教授は、
「上司からのコミュニケーションの量では、 『⾧く、頻繁に』が重要だということが明らかになった。働き方改革などの進展で、上司が部下と同じ場所で働く時間も少なくなる中で、上司は頑張ってでも、一定量のコミュニケーションを確保することは重要のようだ。
また、質の面では、担当している仕事の意義や会社の方針、目標の意味などについての会話が、仕事の進捗や成果の報告などより重要なことがわかった。
担当している仕事が会社全体の戦略や方向性とどう繋がっているのか。また、今後会社はどういう方向に進もうとしているのかなど、中途採用だからこそ、知りえない情報を提供するのが大切だ。適切なアドバイスやフィードバックも重要だろう。担当している仕事の意義などについて話し、適度なフィードバックやアドバイスを与える。こうした『まじめな雑談』が大切だ。」と考えているようだ。
■まとめ
中途入社者が入社後に高い成果を出したり、⾧く働き続けたいと思うようになるには、1日に1回は短時間でも雑談し、1ヶ月に1回はまとまった時間をとって対話を行うことが大切であるという調査結果となった。
短期的な成果や今期の目標達成状況への指示、進捗報告を求めるだけではなく、仕事の意義などについて会話をしていくことも重要のようだ。