オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

日本だけ「一人負け」はたらく意識に対する国際比較調査で浮き彫りになる世界との差

2019.08.29

 総合人材サービス、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームである株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区)は、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)14の国・地域における就業実態・成長意識についてインターネット調査を実施した。

 今回の調査から、国際比較により「日本の就業意識の特徴」が明らかとなった。

■ 管理職志向・出世意欲が低い日本

■ 管理職志向・出世意欲が低い日本

 現在、非管理職である人に聞いたところ、日本は管理職になりたい人の割合が21.4%で、14の国・地域で最も低かった。

 逆に言えば、日本では積極的な管理職志向がない人は78.6%にものぼる。日本は出世意欲も最も低い。

■自己研鑽しない日本

■自己研鑽しない日本

 勤務先以外での学習や自己啓発について、日本は「特に何も行っていない」が46.3%で、14の国・地域で最も高い。

 2位のオーストラリアと比べて24.8ポイントも差があり、断トツで自己研鑽していない。

 一方、東南アジア(シンガポール以外)やインド、中国では「何も行っていない」は1割未満で、自己研鑽に意欲的な様子がうかがえる。なお、「読書」や「研修・セミナー、勉強会等への参加」は、各国共通して実施率が高い傾向にある。

■起業・独立志向が低い日本

■起業・独立志向が低い日本

 日本の起業・独立志向は15.5%で最も低い。一方、東南アジア(シンガポール以外)、インド、中国では、起業・独立志向は4割を超えている。

■職場の人間関係・休みやすさ重視の日本

■職場の人間関係・休みやすさ重視の日本

   

 仕事選びで重要視する点について、日本は、1位=希望する年収が得られること、2位=職場の人間関係が良いこと、3位=休みやすいこと。

 「年収」は他国も1位ないし上位だが、「職場の人間関係」や「休みやすさ」は日本のみベスト3に入っており、独自の傾向が見られる。

■ダイバーシティ受容度が低い日本

■ダイバーシティ受容度が低い日本

 日本は「女性上司のもとで働くことに抵抗はない」で最下位、「外国人と一緒に働くことに抵抗はない」で最下位、「年下上司のもとで働くことに抵抗はない」でワースト2。

 一方、オセアニアや東南アジア、インドは全体的に「抵抗はない」割合が高い傾向が見られる。

■高齢でも働き続けたい日本

■高齢でも働き続けたい日本

 日本は働き続けたい年齢が63.2歳で最も高い。

 韓国と、オセアニアの2ヵ国も60歳以上で日本に続く。

 東南アジアは、東アジアやオセアニアに比べると働き続けたい年齢は低く50代前半の国も複数ある。なお、男女による差はほとんど見られない。

■勤務先の満足度が低い日本

■勤務先の満足度が低い日本

   

 「会社全体」「職場の人間関係」「直属上司」「仕事内容」「プライベート」の項目について満足度を尋ねたところ、14ヵ国平均では各項目とも70%以上で、「会社全体」は80.2%が満足している。

 この14ヵ国平均値と各国を比較したものが各レーダーチャートである。
 
 日本は勤務先に関する満足度が低い。「会社全体」に満足している人の割合は52.3%、「職場の人間関係」は55.7%、「直属の上司」は50.4%、「仕事内容」は58.2%であり、これらすべて最下位だった。

 東南アジア、インド、オセアニアは、14ヵ国平均を上回るか同程度の国が多く、中国以外の東アジアとシンガポールは全5項目が14ヵ国平均を下回る。    

■勤続意欲は低いが、転職意向も低い日本

■勤続意欲は低いが、転職意向も低い日本

  

 今の勤務先で働き続けたい人の割合について、日本は52.4%で最下位だった。一方で、日本の転職意向は25.1%でこちらも最下位。

 勤め続けたいとそれほど思っていないが、積極的な転職も考えていない。
 
 一方、中国、ベトナム、インドでは、勤続意向は8割以上と高いが、転職意向も4割以上であった。

■転職で年収が上がりにくい日本

■転職で年収が上がりにくい日本

 日本は転職後に年収が上がった人の割合が43.2%と最も低い。

 日本以外はいずれも6割以上が上がっている。

 日本は年収が下がった割合(40.4%)と変わらない割合(16.4%)の合計が5割を超えており、転職が収入増につながりにくい状況が浮かび上がった。

■調査結果からうかがえる日本型雇用の機能不全と国際競争力の低下

 日本だけ「一人負け」といってよい特異な数字が出た調査結果となった。その理由を説明するに当たり、日本型雇用が直面している「機能不全」と切り離すことは極めて難しい。

 男性中心で強い同調圧力、自社でしか通用しない業務プロセスの習得を通じた業務遂行能力の長期育成、年功的人材運用――これらが見られる組織において、先輩や上司は20~30代にとって魅力的なロールモデルとなりにくい。また、40代以降ではほぼ出世の勝負がついており、逆転人事は期待できない。

 こうした社会では、自ら学んで力を付けて自らの市場価値を上げ、時には転職をも手段としてキャリアを自ら形成していく意識や行動は現れにくい。

 今回の調査結果は、今後激しさを増すグローバルビジネスや、外国人を含む優秀な人材の獲得など「国際競争力の低下」という観点から極めて憂慮すべきものである。

 このままいけば日本の産業のさらなる地盤沈下は避けられず、改革を進めなければならない。と、パーソル総合研究所 取締役副社長兼シンクタンク本部長 櫻井功氏は見解を述べている。

■まとめ

 今回の調査では、日本で働く人の46.3%が社外で自己研鑽せず、また、女性上司や外国人と働く抵抗感が最も高く今後、国際競争力低下が懸念される。

 企業は、今後優秀なグローバル人材を育成する為にも、従業員に対して、社内外の講習会やセミナーなどへの参加をうながし、自己のキャリアアップにつながる事を推奨する必要がありそうだ。

<PR>