シニア雇用をしている企業が、実際に感じている5つのメリット
人財サービスのグローバルリーダーであるアデコグループの日本法人で、総合人事・人財サービスを展開するアデコ株式会社(本社:東京都千代田区)は、従業員50人以上の企業に勤務する人事担当者400人を対象に、シニアの雇用をテーマにしたアンケート調査を実施した。
シニアを雇用することで、企業にはどのようなメリットがあるのだろうか。声を紹介する。
■調査背景
政府は2020年の通常国会に、希望する高齢者が70歳まで働けるようにするための高年齢者雇用安定法改正案を提出することを目指している。このような動きがあるなか、現在のシニア雇用に関する実態を把握するため、今回調査を実施した。
調査は、シニアを雇用している企業と雇用していない企業の人事担当者それぞれ200人ずつの計400人を調査対象としている。
■シニアの雇用は契約社員・嘱託社員が中心
まず、シニアを雇用している企業の人事担当者200人に対し、「どのような雇用形態で雇用しているか」と質問したところ、「契約社員・嘱託社員」が69.5%ともっとも多く、次いで「正社員」(40.5%)となった。
■継続雇用制度によって雇用している企業が大半
また、「あなたの勤務先で雇用しているシニア人材は継続雇用制度(再雇用制度等)による雇用か。それとも外部からの採用による雇用か」と質問したところ、82.5%が「継続雇用制度(再雇用制度等)による雇用」と回答し、外部からの採用を実施しているのは17.5%だった。
■実施しているシニア向けの雇用安定措置
現在日本においては、企業は65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの継続雇用制度の導入」「65歳までの定年の引上げ」「定年の廃止」のいずれかの雇用安定措置を講じることが義務付けられている。シニアを雇用している企業に勤務する人事担当者に対し、「シニア人材の雇用安定に向けた措置のうち、どれを実施していますか」と質問したところ、「65歳までの継続雇用制度の導入」が80%ともっとも多い結果だった。
■シニアを雇用している企業は人手不足のなかでの即戦力
シニアを雇用している企業の人事担当者200人に対し、「あなたの勤務先でシニア人材を雇用している理由は何か」と質問したところ、もっとも多かったのは「人手が不足している」(64.5%)、次が「業務に関する豊富な知識や経験がある人材が必要」(58%)となっており、人手不足のなか、即戦力としてシニアを雇用していると推測できる。
■83.5%が、シニアを雇用することにメリットを感じている
次に、「シニア人材を雇用することにメリットを感じているか」と質問したところ、8割超となる83.5%が「感じている」と回答した。
■シニアを雇用して感じるメリット
メリットを感じていると回答した167人に対し、「どのようなメリットがあるか」と質問したところ、もっとも多く挙げられたのは「業務に関する豊富な知識や経験がある」(78.4%)、次いで「人手不足を解消できる」(76.6%)となった。
■今後もシニアの雇用を増やすが45%
さらに、「勤務先でのシニア人材の雇用に関する今後の予定」について質問すると、約半数となる45%が「雇用を増やす」と回答した。また、30.0%が「雇用する数は変わらない」と回答し、「雇用を増やす」と合わせると、75%が今後も継続的にシニアを雇用する姿勢でることが分かった。一方、「雇用を減らす」と回答したのは4.5%のみだった。
■シニアを雇用していない企業の人事担当者は、義務となっている雇用安定措置についての認知が低い傾向
シニアを雇用していない企業の人事担当者200人に対し、「高年齢者雇用安定法では、定年年齢を65歳未満に定めている事業主に対し、高年齢者(60歳以上)の65歳までの安定した雇用を確保するため、3つの措置のいずれかを実施することを義務付けている。この『3つの措置』とは何か、知っているか」と質問したところ、約7割となる68.0%が「知らない」と回答した。
シニアを雇用していない企業の人事担当者は、雇用安定措置についての認知自体が低いことがわかった。
■シニアを雇用していない理由は、「シニア向けの仕事がない」から
シニアを雇用していない企業の人事担当者200人に対し、「あなたの勤務先で現在シニア人材(60歳以上)を雇用していない理由は何か」と質問したところ、もっとも多く挙げられた理由は「シニア向けの仕事がない」(61.5%)だった。シニアを雇用している企業では即戦力として雇用し、そのメリットも感じているのに対して、シニアを雇用していない企業は「シニアにはシニアのための仕事を用意しないといけない」という先入観を持っていることが伺える。
■今後のシニアの雇用方針
シニアを雇用していない企業の人事担当者200人に対し、「あなたの勤務先では、今後シニア人材を雇用する計画や意向はあるか」と質問したところ、37.5%が「3年以内に雇用する計画や意向がある」もしくは「具体的な時期は未定だが、雇用する計画や意向はある」と回答する一方、40%(80人)が「雇用する計画や意向はない」と回答した。
■シニアを雇用するための人財に求める条件
この80人に対し、「どのような条件を満たせば雇用しようと思うか」と質問したところ、条件としてもっとも多く挙げられたのは「業務に関する豊富な知識や経験がある」(37.5%)、次に「生産性が高い」と「健康である」(どちらも31.3%)となった。
■調査概要
調査対象:日本全国の従業員50人以上の企業に勤務する人事担当者
サンプル: 400人(シニアを雇用している企業の人事担当者200人、シニアを雇用していない企業の人事担当者200人)
調査方法:インターネット調査
実施時期:2019年11月20日~21日
■まとめ
シニアを雇用している企業は、その多くが昨今の人手不足のなかでの「即戦力」として雇用しているようだ。シニアを雇用するメリットも、多く感じていることから、今後も雇用を継続する姿勢を見せている。 今後、さらに労働人口が減少することも考えられており、シニアは重要な戦力となる。
シニアに向けてスキルアップやトレーニングの機会を提供するとともに、シニアが即戦力として活躍できる人財であるとの認識を促すことが、シニアの雇用促進にもつながるのではないか。