「年収の壁」対策の具体的な内容「知っている」わずか9.5%の一方で34.6%が「利用したい」と回答
弥生株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:前山貴弘)は、同社ユーザーの中小企業経営者・労務担当者1217名を対象に「『年収の壁』についての意識調査」を実施した。ここでは調査結果の概要をお伝えする。
「年収の壁」とその対策について
税金や社会保険料がかかり始める年収の金額を指す「年収の壁」。これを超えると手取り収入が減るため、パートタイムで働く人の多くが労働時間を調整していると言われ、その影響による人手不足は大きな懸念となっている。
そこで厚生労働省は、106万円の壁、130万円の壁に対応するために2023年10月に「年収の壁・支援強化パッケージ」を新設。
106万円の壁への対応としては、「キャリアアップ助成金のコース」を新設し、「社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外」を適用。
130万円の壁への対応としては、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」を適用できる。
また、配偶者手当への対応として、「企業の配偶者手当の見直し促進」もする。
本調査はこうした制度に関する認知度や、利用意向等について調査したものだ。
「年収の壁」対策については高い認知度の一方で内容の理解は進まず
本調査で明らかになったのは、「年収の壁・支援強化パッケージ」について、87.7%の回答者が認知していること。ただし、この施策の具体的な内容を知っている人は9.5%に留まり、認知しているものの内容を理解していない人も31.4%に上っている。
また「年収の壁」対策について認知している人のうち、実際に利用している、また申請手続き中という回答者は15.1%だった。利用していない人の利用意向に関しては、34.6%が利用したいと考えており、31.7%は利用しないと回答、33.7%は未定という結果が出ている。
利用したいと考える理由としては「人材確保につながるから」「従業員のモチベーションが高まるから」などが挙がっており、中小企業が人材面で課題を抱えていることが分かる。一方で利用しない・未定の理由としては「申請手続きが煩雑/面倒」「制度が理解できていない」といったものが挙がった。
調査概要
調査期間:2024年3月5日~11日
調査対象:弥生にユーザー登録している中小企業※の経営者・労務担当者1217名
調査方法:インターネットによるアンケート調査
出典元:弥生、中小企業の経営者・労務担当者向けに「年収の壁」に関する調査を実施(弥生株式会社)
※調査対象の従業員数内訳
~9名:417
10~19名:236
20~49名:302
50~99名:147
100名~:115
まとめ
本調査結果をみると、対策の活用については意見が分かれており、手続きの煩雑さや制度への理解不足を理由に「利用しない」とする人が「利用したい」と回答した人とほとんど変わらない割合であった。施策の具体的な内容を知っている人や理解できている人も少ない現状があり、まずは対策の具体的な周知が必要なようだ。労務担当者は改めて制度内容について把握するとともに、従業員へどのように広めるかを検討してみてはいかがだろうか。
参考:年収の壁・支援強化パッケージ