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グローバル転職実態調査2023、日本のリスキリングが遅れている実態が明らかに【リクルート・Indeed調査】

2024.06.18

株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村吉弘)はエコノミックリサーチ機関のIndeed Hiring Labと共同で、世界11カ国の転職者を対象とした「グローバル転職実態調査2023」を実施。報告書を発行した。ここでは調査結果の概要について紹介する。

調査概要

調査対象国 :アメリカ、イギリス、インド、オーストラリア、カナダ、韓国、スウェーデン、中国、ドイツ、日本、フランス(50 音順) 
調査対象:フルタイム勤務者で直近に転職を経験している者/週労働時間35 時間以上/これまでに勤めた企業数2社以上/現在の会社の勤務年数2年未満
調査期間:2023年10月10日〜11月9日(各国13日間〜15日間)
出典元:リクルート・Indeed「グローバル転職実態調査2023」報告書 リスキリング の再考(株式会社リクルート)

世界における「リスキリング」とは

本調査のきっかけは、世界的なブームとなっているように見えるリスキリングについて、各国での認識や性質の違いを明らかにすることが、各国における本質的なリスキリングを実現する一助になるのではないかと考えたことにあると、同社は説明する。

同社は本レポート内で、キャリアに対するスタンスや労働市場の構造が異なる各国において「リスキリング」という施策に注力する動きは共通していると述べている。例えばアメリカでは、大統領からの呼びかけを受け賛同した430以上の企業により、1600万人にリスキリング機会が提供されており、欧州では6億ユーロの予算を注ぐ「Digital Europe Programme」によって、2027年までに最新テクノロジー職に就ける人材を約26万人増やすことを目指しているという。日本においても岸田文雄首相は2022年臨時国会の所信表明演説で、個人のリスキリング支援に5年で1兆円の予算を投じることを表明しており「三位一体の労働市場改革の指針」の中で、リスキリングは国力を底上げするために極めて重要な施策だと捉えられている。

そこで本調査では調査対象者を「フルタイム勤務で直近に転職を経験している者」に限定。「リスキリング」の取り組みについて、キャリアの自律、労働市場の流動性の質という切り口から再考するための情報を整理した。

リスキリングに対する意識と実践

リスキリングに対する意識と実践

本調査では「リスキリングに対する意識」について質問した結果、リスキリングが「必要であると考えている」と回答した割合が高かったのは「中国」「インド」で、ともに9割弱であった。次いで「韓国」で約8割「日本」で約7割という結果となっている。一方「オーストラリア」「フランス」「イギリス」では「必要であると考えている」と回答している割合は6割弱「ドイツ」は5割を下回り「スウェーデン」は約2割にとどまった。

また、リスキリングに取り組んでいる時間を見ると、週に「3時間以上」の割合は「中国」では8割弱「インド」では6割強と、意識面と同様に1位が中国、2位がインドという結果となった。一方、下位の「日本」「フランス」「スウェーデン」において、週に「3時間以上」リスキリングに取り組んでいる割合は3割を下回っている。

意識面で上位にランクインした「韓国」「日本」においては、実際に取り組む時間としては各国と比較して短く、意識と実践の乖離が大きい実態が明らかになった。

キャリア自律に対する意識と実践

キャリア自律に対する意識と実践

次に本調査は「キャリア自律に対する意識」について調査しており「キャリア自律は重要なことだと思う」と回答した割合は「インド」が約9割で1位に。次いで2位の「中国」が8割強、3位の「アメリカ」が約8割、4位の「カナダ」が8割弱で続いている。以下、5位〜10位の国に大きな差はなく、いずれも6割以上が重要であるとの認識を持っていることがわかった。一方で、最下位となった「日本」はそこから大きく差が開いて、キャリア自律を重要なことだと思う割合が5割を下回った。

「キャリア自律の実践」については「キャリア自律ができていると思う割合」を分析。意識面と同様の国が上位となり、1位の「インド」では約9割、2位の「中国」が約8割、3位の「アメリカ」が8割弱という結果であった。以下、5位〜10位は段階的に割合が低下し、10位の「韓国」では5割を下回る。最下位の「日本」はそこから更に大きく差が開き、3割を下回るという結果になった。

リスキリングとキャリア自律の相関性

リスキリングとキャリア自律の相関性

続いて本調査は、リスキリングとキャリア自律に関する調査結果を比較。全体として、リスキリングの実践面とキャリア自律の実践面は概ね相関していることがわかった。リスキリングの意識面と実践面、キャリア自律の意識面と実践面の全てにおいて上位2カ国は「中国」と「インド」であり「アメリカ」と「カナダ」は、リスキリングの実践面、キャリア自律の意識面で「中国」と「インド」に次ぐ結果となっている。

一方、意識面はその限りではないとの結果が報告された。「韓国」と「日本」は、リスキリングの意識面は上位であるが、その実践面や、キャリア自律の意識面と実践面では下位に位置する。とりわけ日本は、リスキリングの意識面のみ4位で、それ以外では全て最下位であった。

キャリア自律と健全な雇用の流動

キャリア自律と健全な雇用の流動

本調査では転職時の賃金変動状況における「転職によって明確に(1割以上)賃金が増えた」と回答した割合をもとに「健全な雇用の流動」を確認。それに関する各国の順位とキャリア自律に対する意識面・実践面の各国の順位を比較分析している。

健全な雇用の流動の下位3カ国は、9位「フランス」10位「韓国」11位「日本」。この3カ国について、キャリア自律の意識面を見ると「フランス」は5位で「韓国」が7位。「日本」はここでも11位である。実践面については健全な雇用の流動と順位が一致し9位「フランス」10位「韓国」11位「日本」であった。キャリア自律の意識面と実践面、健全な雇用の流動の全てにおいて、日本は最下位であることがわかった。

各国におけるキャリアのための取り組み

各国におけるキャリアのための取り組み

本調査結果をみると、キャリアのための取り組みにおいて日本と各国で違いがあることがわかる。まず、将来のキャリアのために取り組んでいることとして「ネットワークを広げてつながりを築く」「キャリアプランの明確化と目標設定」について、日本以外の各国間の差は大きくないが、日本はいずれも約1割にとどまっている。その他の項目についても各国と比較すると日本は割合が低い傾向にあり「将来のキャリアに対して、実践していることはない」の割合は非常に高い。

また、将来のキャリアのために得られている情報でも違いがみられた。ここで明確な差がみられたのが「産業変化のトレンドや労働市場の変化に対する情報」「キャリアプランニングや目標設定の方法」である。日本以外の各国では大きな差がみられなかったが、日本はいずれも1割にとどまっている。さらに「転職やキャリアチェンジへのアドバイス」についても他国と比べ割合が低く、一方で「将来のキャリアに対して、得られていることはない」という項目の割合が非常に高いことがわかった。

キャリアデザイン教育の受講経験についても、各国と日本の違いが明確に現れた。「学生時代も社会人になってからも経験していない」という項目について「インド」「中国」では5%未満「アメリカ」では約1割にとどまる一方で「日本」では約4割と半数近くにのぼっている。その他の項目についても、各国と比較してほとんどの項目で日本が最も低い割合となった。

まとめ

本調査では日本におけるリスキリングは意識面だけが高く、実践に結びついていない実態が明らかとなった。また、本調査においてリスキリングとキャリア自律の実践面には相関性があることが示唆されている。キャリアのための取り組みについて各国と日本で大きな違いがみられ、日本のリスキリングの遅れはキャリアのための取り組みが不足していることに要因があると推察される。

本調査結果から考えると、リスキリングは自身のキャリア展望に向けた自発的な動機のもとでこそ実践に結びつき、効果が得られるものと言えそうだ。リスキリングを推進するにあたっては、従業員に対して「キャリア自律に向けて必要な情報」を得られるような支援に取り組み「自身のキャリアについて考える機会」を提供することが重要なのではないだろうか。

2024年3月、ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリー株式会社の新機能発表会にて、新機能に携わった株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆氏が「キャリア自律」と「働き方」のトレンドについて解説。オフィスのミカタでは、リスキリング を企業で推進する前に人事担当者が行うべきことについて話を伺っている。こちらも併せて参考にしていただきたい。

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