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中小企業の社会活動、研修機会の提供を行えていない企業が8割超に フォーバル GDXリサーチ研究所調査

2024.07.29

中小企業の変革を目指すフォーバル GDXリサーチ研究所(本社:東京都渋谷区、所長:平良学)は、中小企業のESG経営について調査をした研究レポートを発表した。ESGとはEnvironment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス=企業統治)の頭文字から作られた言葉であり、企業がESGに配慮した経営を行うのは社会に対する責任を果たすことだとされている。投資家や金融機関から注目されるだけでなく、市場からの企業評価も高まるとして期待される取り組みだ。今回同社は中小企業のESG経営について、特にSocial(社会)に注目し、実態を調査したという。ここではレポートの概要についてお伝えする。

調査概要

調査主体:株式会社フォーバル
調査期間:2024年4月1日~2024年5月31日
調査対象者:全国の中小企業経営者
調査方法:ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
有効回答数:990人
出典元:研究レポート 中小企業のESG経営:S(社会)(フォーバル GDXリサーチ研究所)

社会活動推進のための取り組み 8割超が研修機会提供せず

社会活動推進のための取り組み 8割超が研修機会提供せず

本レポートは、まず社内・従業員向けの取り組みについての調査結果を報告している。コンプライアンス・倫理に関して、従業員が正しい知識や認識を持つための研修機会について、80.8%が「提供していない」と回答しており、提供できている経営者は2割に満たない状況にあることが判明したという。

次に外部、商品・サービスや地域社会に向けた推進のための取り組みの調査結果では、「課題の把握と改善実施が運用化されている」「課題を把握しており、必要に応じて改善を実施している」を合わせた64.4%の中小企業が、日々商品・サービスの課題を把握し改善するサイクルを回していることが明らかになっている。一方で、地方創生・地域活性化に向けた支援の実施については703人が「実施していない」を選択。実施されているものとしては「人的支援(184人)」が「資金的支援(155人)」や「物的支援(114人)」よりもやや多い結果となったことが報告された。

同社はESGのS(社会)への対応について経営全体の中で検討されるべきだとして、経営の観点からの見直しと対応を推奨している。

取り組みを測る各指標について

取り組みを測る各指標について

次に同社は、取り組みを測る上で指標となる女性従業員比率や離職率などについて調査。女性従業員比率を問う設問では、50%を超えている企業が最も多く、30.8%となったことが報告された。

続いて、離職率についての調査では、離職率5%未満の企業が75%近くに上ることがわかっている。一方で10%以上の企業が14.5%、15%以上の企業が6.7%と、従業員の流動性が高い企業も一定数存在していることが判明した。

同社は厚生労働省による雇用動向調査から、直近15年間の平均離職率はおおむね15%前後で推移していることを引用し、本調査における中小企業の実態は低い水準にとどまっていることを指摘している。本レポートは平均を示した数値ではないことから単純な比較はできないとしながらも、中小企業では働く環境整備については推進されているとの推察を示した。

参考:雇用動向調査:結果の概要(厚生労働省)

また同社は、従業員が働きやすい環境づくりの事例として、健康診断実施率、年次有給休暇取得の徹底状況、育児休暇の取得状況に関する調査を実施。健康診断実施率については、100%に達している企業は71.3%にとどまったという。年次有給休暇取得の徹底状況についても、取得が徹底できている企業は77.7%となっている。

育児・介護休暇の取得に関しては「育休制度はあるが、男女ともに取得事例がない」が最も多く36.1%となったことが報告された。

まとめ

本レポートにおいて同社は「自社にとって何がSocial(社会)の視点から取り組むべきことなのかを常に意識し、改善し続ける姿勢が求められる」と提言している。

さらにフォーバル GDXリサーチ研究所所長の平良学氏は、事業者の義務にも関わらず実施率が100%となっていない項目があることを指摘。「経営者がESG経営のS(社会)における重要さを理解し、義務となっている項目の100%の実施、制度の活用促進について実践していただくことを期待します」とコメントした。

ESG経営は短期間で効果が出るものではなく、年単位で地道に取り組みを継続していく必要がある。費用対効果が低いと感じる時期もあり、中小企業における取り組みの実施や継続には課題も少なくないだろう。多岐にわたる社会への取り組みについては、同社がレポートで提言しているように、自社の経営観点からみて取り組むべきことが何なのか見定めていくことが重要となりそうだ。