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消費増税による業務への影響とは?

2019.10.04

 ついに、10月1日より消費税が10%となりました。

 今回の運賃改定ではほぼすべての鉄道・バス会社は、10月1日より新運賃となりました。
 ちなみに2014年4月の消費税8%導入時は、運賃改定のシステム更新が間に合わず、数か月遅れて新料金への変更を行った鉄道・バス会社がありました。

 通勤定期代の支給に関していえば、社員のほぼ全員の通勤費は運賃改定に伴って、見直しが必要となります。
 通勤経路はそれぞれ異なっていますので個別に通勤費の妥当性のチェックを行わなければならず、通勤費担当者には膨大が工数がかかります。

 前回の消費増税を例に取ると、通勤費担当の業務問題として以下のようなことが発生した企業がありました。

 前回の増税時、1,000名規模の企業で通勤経路のチェックに330時間以上かかったケースがあります。一人当たりのチェックに20~30分はかかっていたことになります。

 従業員から通勤定期代変更申請をさせたのですが、その後のチェックが煩雑でした。
①新旧定期代を比較し同一経路かどうかを確認
②新定期代を乗換探索ソフトやインターネットで検索
③申請された経路が異なっていたり、駅名やバス停名が変更になり検索できない場合などは、再度本人に確認または鉄道・バス会社に直接確認
④Excel等でチェックリスト作成し、確認結果を転記
⑤社会保険計算のための月割額の算出
⑥給与システムの登録変更
⑦申請をしない社員へのリマインド

 短期間に従業員からの定期代変更申請が殺到することは予測できたため、人員を増やすなどの対応を行っていました。それでも残業しなければ業務をこなすのは困難なケースが多かったようです。

 通常では、通勤費申請の集中といっても、新入社員の入社、定期異動などで一部の従業員が対象となる程度でした。
 しかし消費増税に伴う公共交通機関の運賃改定では、ほぼ全従業員が対象となりました。

 長時間に渡るチェック作業のため計算ミスも多発しました。計算ミス防止のための再計算による確認作業を行うことにより、工数が増加するケースもありました。

 インターネットでの経路探索は、無償で手軽に利用できることもありますが、増税時期はサービス利用者の集中による混雑でサーバーからの応答が遅延して、思うように検索ができないケースもあったようです。交通機関によっては定期代の改定運賃の反映が遅くなり、公表が間に合わないといったところもあったようです。
 通勤費担当者は、直接問合せを行うために作業に想定以上の時間が掛かってしまうことがありました。

 消費増税による運賃改定の通勤定期代変更申請を従業員に任せている企業では、なかなか変更届を提出しない従業員も多く、何度も提出するように呼びかける手間が発生。円滑な精算業務の妨げになってしまったケースがありました。

 今回2019年10月の消費増税に伴う運賃改定への対応では、9月30日までに定期券を購入させることを前提に、通勤定期代を旧料金で支給する企業が多かったようです。そうすることで増税分のコストの節約につながりました。
 ただし、3ヶ月定期や6ヶ月定期を支給している場合、3か月後または6か月後からの定期代は新料金となります。また、10月1日以降の入社、転居、異動の場合には当然新料金の適用となります。

 消費増税による通勤定期代の増加は2%程度ですが、2019年10月以降3ヶ月間は、社員1人1人の給与支給額が社会保険の月額変更(随時改定)に該当するかどうか確認する必要があります。そのためには、通勤定期代の月割額を算出する必要もあります。

 通勤定期代は「固定的賃金」に該当し社会保険計算対象になります。月額変更は3ヶ月間の「標準報酬」が2等級以上の変動する場合となりますので、通勤定期代のみでは対象になることはほぼありません。残業が多いなどで給与が増加する要因がある場合、通勤定期代の増加+残業代の増加で2等級以上UPという可能性があり注意が必要です。

 例えば10月〜12月分の給与が通勤定期代と残業の増加により標準報酬が2等級以上変動していた場合、1月から社会保険計算対象の標準報酬月額が変更になり、2月の給与から社会保険料の控除が増加することになります。
 急に控除額が増えた、と慌てないように該当する従業員には説明が必要となるでしょう。

まとめ

 消費税が増税され公共交通機関は運賃改定となりましたが、通勤定期代の支給額変更はこれからという企業はまだ多いかもしれません。
 通勤定期代の支給に関し、給与計算システムには通勤交通費のチェックや運賃改定対応という機能は備わっていません。
 ほぼ全従業員が変更となるの通勤定期代ですが、通勤経路や金額のチェックなど確認にあたる事務担当者にはかなり大きな負担がかかります。
 人員を増やすことで、ある程度は負担の軽減が可能ですが、より業務の効率化を図るには、通勤費管理システムの導入がおすすめです。
 通勤費管理をシステム化することにより、通勤定期代の確認業務のための残業を減らし人件費の大幅なコスト削減を図るとともに、通勤定期代の適正化により、通勤費の増税分を上回るコスト削減を図ることも可能となるでしょう。