ワークフローの使い方一つでバックオフィスが主役に
これまでVol.1、Vol.2、Vol.3でワークフローについて基本知識や考え方をお伝えしてきました。しかし、実はワークフローの真価というのは、お伝えしただけに止まりません。そこで今回は、ワークフローの捉え方が変わる、変わっていくという話とともに、本質的な価値をお伝えしたいと思います。
「使い方」の工夫でより効果的に
ワークフローを整理することのメリットでよく言われているものが、生産性や業務効率の向上です。私自身、これまでもお伝えしてきました。場所や時間にとらわれない働き方はもちろん、相手の都合や状況に依存しないコミュニケーションを実現してくれます。しかしそれだけではありません。ワークフローは「使い方」を工夫することで、さらにパワフルなツールとなります。
なお、これからお伝えすることはワークフローが「システム化」されていることが前提となります。まだ紙やメールなどで運用をされている方は、「システム化」されたときの活用イメージを本稿を通じてお持ちになっていただければと思います。
ワークフローの本質は集合知
では、その「使い方」の工夫による効果とは何か。それはずばり、ワークフローがもつ「集合知」の活用です。ワークフローは、ある申請に対して承認が取られていくというプロセスを辿ります。ここでいう承認を取る人というのは、上司など自分より上位の人や、別部署の専門の人のことを指します。つまり、自分よりも知見を持っている人が必ず入り、申請・起案内容を確認するということです。
何が言いたいかというと、このプロセスにおいては「自分が持っていない知見」が、その申請に対して反映されうるということです。ワークフローのデジタル化により申請から承認を経ていく段階で、ノウハウやアイデアなどが集積し蓄積される。これがワークフローにおける「集合知」です。
紙をベースにしている場合、ハンコを押すか押さないかの2択になりがちです。それが、デジタルを活用すればコメント入力やURLリンク、添付ファイルなど、簡易に情報のアップデートが可能となり、申請時は情報や説得力が不足していた内容でも、承認の度に補足されることにより、最終的に多くのナレッジを加えた「集合知」へと進化させることができるのです。
情報やナレッジが溜まり「集合知」化することで、最終的により良い「意思決定」が可能になる。実はこれほどパワフルなものなのです。
現在テレワークが浸透していますが、テレワークにおけるコミュニケーションはWebミーティングのみではなく、文章=テキストでのコミュニケーションが重要です。いかにわかりやすくワークフローで伝えていくかが重要になるという意味合いにおいては、「会議で意見をまとめるように、稟議書で意見をまとめる」ことであり、集合知の考え方にも繋がります。つまり、「稟議書は会議のようなもの」なのです。
ナレッジの蓄積はもちろん、コミュニケーションのログを正確に残せて、さらにコミュニケーションの現在地を知ることができる点もワークフローの特徴です。一方でアナログの場合、プロセスの進捗が見えません。デジタルであれば何かの議論があった際にだれのところで止まっているかがわかり、次のアクションプランも見えてきます。その点では、ワークフローは多くのシステムの中でも、コミュニケーションや業務の現在地を示す唯一のものだといえるでしょう。
最小のインプットでアウトプットを最大化
一つの申請が、多くの「集合知」によってアップグレードされていく。繰り返しになりますが、これは企業にとってはより良い意思決定ができ、経営に力を与えるということです。冒頭で生産性向上や業務効率向上と述べましたが、生産性とはインプットとアウトプットの関係性で導き出されるものです。
重要なことは、いかに最小のインプットでアウトプットを最大化するか。この関係をワークフローに照らし合わせると、承認やコミュニケーションのスピードを上げて結果を出すことにより、アウトプットの質・量を向上。システム化することで重複するプロセスなどは削ぎ落とし、インプットは最小化。結果として生産性がアップします。また、集合知が溜まることで「価値」そのものの質や量が増え、さらにアウトプットが充実します。精度の高い意思決定を可能にし、成功確率が高い経営判断を実現するともいえるでしょう。
目指すべきは、アナログだったワークフローのデジタル化による時間革命。そのうえで「集合知」を活用して経営にイノベーションを起こし、未来へつなげていけるシステムがワークフローなのです。
コラボレーションでバックオフィスが主役に
ワークフローを通じてコラボレーションもできるでしょう。バックオフィスが申請した内容が役員等に届いた結果、何か新しいプロジェクトがスタートする、こういったケースはあるかと思います。申請者が明確であれば、決裁者は必ず目を通します。自分の提案や主張が明確に通るのです。
このように、与えられた役割やプロジェクト、得意不得意、個性などを駆使してつながり、今までになかった発想を生み出していくインタラクティブなコミュニケーション。これがコラボレーションを駆使した新しいビジネスであり、この働き方を実現するのもワークフローによる「集合知」なのです。
ワークフローシステムは、バックオフィスの方々の利用が多いと思います。まずは部署内でも、ぜひこの「集合知」の考え方で利用してみてください。私は、バックオフィスが使い方を全体に提案することで、経営に力が生まれる――そんな、バックオフィスが主役になる組織がどんどん増えていってほしいと思います。