オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

パラレルワーカーが考える「企業が知っておくべき 『複業』の概念」~ 今までの「副業」と「ビヨンド  副業」の違い ~

2021.02.03

 先の見えないコロナ禍で、新たな生活様式の普及が急激に進んだ2020年。もう2021年1月も終わりに差し掛かってきましたが、未だに元の生活に戻れる兆しは見えていません。
 そんな中、日経クロストレンドで発表された「2021年ヒット予測ランキング」の10位までのうち、半数以上はコロナ禍による何らかの影響がうかがえます。なかでも、3位に入った「ビヨンド副業」はこれからの時代にフィットする、さらに新しい「副業」の考え方です。
 今回はこの「ビヨンド副業」についてお話しするとともに、これから「働く」ということがどのように変わっていくかをお伝えします。

今までの副業とこれからの副業

今までの副業とこれからの副業

 「副業」をする、と聞くと、皆様はまず何を思い浮かべますか。収入の不足を補うため、つまり「お金を稼ぐため」という理由を真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。この、お金を稼ぐための仕事、つまりは自分がご飯を食べ、生活していくために働くことを「ライスワーク」と言います。以前は、自身がメインで働いている「本業」の収入不足を補う、もしくは不安定に備えるための、追加の「ライスワーク」として「副業」をすることが主流でした。また、「副業」を禁止している企業が大多数だったかと思います。
 しかし近年、徐々に「副業」を解禁する動きが出てきました。そしてただ単に、副業禁止をOKにした、という以上のことを始める企業も増えています。特に大きな話題として、2016年から株式会社タニタ、2021年1月から電通が、社員の一部に個人事業主となるよう薦め、業務委託として業務を発注する、という新しい形式を推進しています。また、2020年に、ヤフーが副業人材「ギグパートナー」を募集した際は大きな話題になりました。今後このような企業が増えていくにあたり、複数の企業で働くビジネスマン像もより頻繁に見かけるようになるのではないでしょうか。複数の仕事を同時進行で進め、どちらも「本業」と呼べる「複業」「パラレルワーク」という概念も一般的になりつつあります。
 この原因のひとつには、企業が大勢の人員を抱え、会社員は定年まで勤めあげる、という概念が薄れていることが挙げられます。さらに、企業自体の寿命が短くなってきていることもあるでしょう。

報酬だけではない働き方で得る「実績」「成果」

報酬だけではない働き方で得る「実績」「成果」

 また、単なる収入増のためではなく、スキルや実績を得るためにやりたいこと、つまり「ライフワーク」を副業にする人も増えてきました。そしてこれらは、必ずしも報酬がともなうとも限りません。例えば、自身が本業で培ったスキルを無償、つまりはボランティアで提供し、社会貢献活動をすることで報酬ではなく実績を創る「プロボノ」という概念も出てきています。この中には、副業が禁止されている業種、もしくは企業で著しく面倒な手続きがある等の理由でボランティアという形態をとっている人たちも含まれるでしょう。
 私の場合、株式会社ニットでテレワークの正社員としてコミュニティ運用を専門に働きながら、YADOKARIではチーフコミュニティビルダーとしてジョインしています。他にも個人でも仕事を受ける場合もありますし、必ずしも報酬を目的とせず、プロボノとしてプロジェクトに入ることも少なくありません。また、アドレスホッパーとして全国を転々としているため、行った先で予期していない仕事に巡り合うこともあります。
 このように、今後は自身のスキルでお金以外のもの、つまりは実績ややりがいを得る、という働き方も主流になってくるでしょう。

「ビヨンド副業」とは何か

「ビヨンド副業」とは何か

 このような時流の中で、2021年、つまりは今年「来る!」と言われているのが「ビヨンド副業」、副業を超える副業です。現在、「ビヨンド副業」の定義はまだ固まり切ってはおらず、場所の制約を超える、例えば本業は都会で働いているのに地方で副業をする、という意味合いが1つ。そして最初にお話しした旧来のライスワークとしての副業を超える副業、という両方の意味合いの2つがあると思っています。つまりは、「ビヨンド副業」は既に普及しつつある多様な働き方を新しく形容する言葉のひとつなのです。ワーケーションの聖地となりつつある、長野でのテレワークも、この中に含まれるのかもしれません。

「ビヨンド副業」が組織にもたらすメリットとは

「ビヨンド副業」が組織にもたらすメリットとは

 では、「ビヨンド副業」をはじめとした働き方のニューノーマルは、組織においてはどういうメリットをもたらすのでしょうか。
 例えば、私の場合だと、個人で活動しているイベントの内容や企画、運用方法を基に、本業である株式会社ニットでイベントを企画することがあります。前回の記事で触れた「コロナでも繋がりを!丸一日かけた<大型オンライン忘年会>」が良い例で、オンラインイベントでのファシリテーション技術や運営、集客等、今まで自身のキャリアで培ってきたエッセンスをふんだんに盛り込んでいます。
 また、企業としては「副業を認め、応援している会社」としてのブランディング効果も見込めます。個人の「やりたい」を応援し、柔軟な組織として認識されるようになるからです。そして、自社での業務を「副業」として働きたい、という人を認めることで今まで自社で教育してきた以外の視点を持つ人材を得ることができます。自社の正社員を採用するか外注するか、という二択以外に「副業の人と共創する」という選択肢が生まれるのです。
 現在の情勢の中で、自社だけで十分な報酬を支払う正社員を増やし続ける、ということは一定の困難を伴います。従業員に「副業」の選択肢を設けることで、収入面・スキル面の両面の補填に繋がり、また採用枠としても「副業人材」を作ることで、アプローチできる人材のパイを広げる事もでき、企業に新たな風を呼び込むことができるのではないでしょうか。

 次回からは、この「ビヨンド副業」「パラレルワーク」という働き方に対し、企業がどう関わっていくべきかについて、さらに具体的にお話しできればと思います。